熊本県で11月、トマトなどナス科の植物の害虫「トマトキバガ」が国内で初めて確認された。海外では「トマトのエボラ出血熱」とも呼ばれるほどの甚大な被害をもたらし、世界的に警戒される害虫だ。国内でのまん延を防ぐには、発生兆候を見逃さず、早期の発見と防除が求められる。
「トマトキバガ」は南米原産だが、少なくとも80カ国で確認されている。2006年にスペインに侵入後、欧州やアフリカ、東南アジア、台湾や中国などにも急拡大した。繁殖能力が高く、幼虫が果実に潜り込んで食害。果実表面に数ミリの穴が開き、食害部分は腐敗するため品質が大きく低下する。
海外報道によると、ケニアでは18年、1シーズンのトマトの被害量が11万4000トン、被害額は5900万3000ドル(約64億円)に上った。ナイジェリアでは16年に非常事態宣言を発令。農家は「トマトのエボラ」と呼んだという。
熊本県への侵入経路は、現時点では不明だ。農研機構植物防疫研究部門は、①強い気流に乗って発生地域から飛来②植物や資材に付着して持ち込まれた──可能性を挙げている。農水省によると、現在も確認した圃場(ほじょう)周辺の発生状況の調査を続けている。
特徴つかんで
被害やまん延の防止には、同害虫や被害の特徴をつかみ、早期に発見することが重要となる。成虫は体長5~7ミリになり、灰褐色の羽で細かい斑点がある。触覚が黒斑状なのも特徴。間違えやすいナス科の害虫にジャガイモガがいる。こちらは羽に筋状の褐色斑が目立つ。
一方、幼虫は淡いピンク色で頭部付近が帯状に黒い。最終的に体長8ミリほどになる。発育下限温度は8度で、卵やさなぎ、成虫で越冬するとの報告もある。葉の内部も食害するため、葉の表皮が残って白~褐色になるのも特徴だ。
発生を確認した場合は、都道府県の病害虫防除所などに連絡し、害虫を特定。捕殺する。現時点で登録農薬はないが、植物防疫法に基づいて都道府県が使用可能とした農薬は散布できる。被害株や被害果は、圃場内から取り除き、土中に深く埋めるか、ビニール袋などで密閉して虫を死滅させた上で処分する。海外では、化学農薬や天敵生物のタバコカスミカメなどによる防除の例がある。
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