貴い命だから 余すところなく 脂も毛もイノシシ活用

たてがみでお守りを考案した竹尾さん(愛知県豊田市で)

日本猪祭りで紹介される保湿オイル「ぼたん油」(岐阜県郡上市で)

 捕獲したイノシシの、食べるだけではない利用が広がっている。縁起物とされるたてがみのお守りや、脂肪を使った保湿クリームを作り化粧品原料としての供給も目指す。厄介者のイノシシが宝に変わる?(吉本理子)
 

縁起良しお守り 愛知の竹尾博史さん


 愛知県豊田市の竹尾博史さん(59)は、たてがみを使ったお守り「しし神守り」を考案した。毛先が枝分かれして広がっていることから、一部地域では昔から末広がりで縁起が良いとされている。亥(い)年の2019年を前に、他団体と商品化、販売する計画だ。

 竹尾さんは三州しし森社中の代表として、解体加工処理施設で出る鹿の角やイノシシの牙、毛皮で雑貨やアクセサリーを制作、販売している。商品開発を進める中、県外の複数地域でイノシシの毛は縁起が良いとの言い伝えがあると知り、お守りを考案した。

 毛先の広がりが見えるよう和紙に載せ、ラミネート加工。財布などに入れやすいようにした。密教では亥年生まれの「守り本尊」が阿弥陀如来とされることから、該当する梵字(ぼんじ)のスタンプも押した。

 御利益の説明カードも添付。毛が末広がりであることに加え、切れにくく丈夫で「金や縁が切れない」とされ、多産で子宝祈願になるとされることなどをまとめた。

 商品を改良し、今年中の発売を目指す。「この商品で、鳥獣害について考えるきっかけをつくりたい。神社や寺など、多くの人が集まる場所での販売が目標」と意気込む。
 

しっとり保湿に 佐賀の化粧品会社


 馬油など動物性油脂を原料に化粧品を製造、販売する忠兼総本社(佐賀市)は、国産イノシシ脂100%の保湿オイル「ぼたん油」を発売した。県内でイノシシ被害が多いことを知り、「捕獲された個体を有効利用できないか」と考え開発した。

 原料は、食用にならず廃棄されることの多い内臓脂肪が中心。買い取り価格は部位にもよるが、内臓脂肪は1キロ100円程度だ。肉に血が回り食用に向かない個体でも、脂肪分は利用できる。

 同社による成分分析では、イノシシの脂身は馬など他の動物に比べ脂肪酸が人間に近い組成であることが判明。人の肌に浸透しやすく高い保湿効果が見込まれるという。

 「ぼたん油」は70ミリリットルの瓶入り。売れ行きは好調だが、課題は仕入れという。認知度が低く原料を供給する猟師が少ないため、全国の狩猟関係者に供給を募っている。百田忠兼社長は「費用を払って廃棄していたものに価格が付く。猟師の新たな収益源として定着するとうれしい」と話す。

 イノシシ油を化粧品原料として供給するには、成分を表示するための国際名称「INCI名」の登録が必要。同社は今年、INCI名を管轄する米国化粧品工業会に申請した。年内に登録される見込みで、国内だけでなく海外にも国産品として売り込みをかける計画だ。

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