林業従事5万人割る 人材獲得競争が激化 15年
2018年03月20日

森林の伐採や苗木の植樹などの整備を担う「林業従事者」の減少が加速している。林野庁が公表した2015年時点の従事者数は4万5440人で、前回調査(10年)より11%も減少。初めて5万人を割り込んだ。高齢化に加え、他産業との人材獲得競争が激しくなっていることも影響したとみられる。
政府は、意欲のある担い手に森林を集約する新たな森林管理制度を19年度から始める方針。林業従事者が減る中、同制度をてこに、必要な森林整備を行う体制を整えたい考えだ。
同庁は、総務省が5年ごとに実施する国勢調査を基に、林業従事者数をまとめており、今回は15年時点の結果を公表した。
林業従事者は、国産材の価格の低迷による収益性の低下などで、1980年の14万6321人から減少の一途をたどってきた。前回(10年)は5万1200人で、05年比の減少率は2%。新規就業者の育成を支援する「緑の雇用事業」の効果もあって、減少幅も小さくなっていたが、15年は4万5440人と大きく減少した。
原因の一つが、林業従事者の高齢化だ。年代別に見ると、65歳以上の従事者が占める割合(高齢化率)は10年から4ポイント増の25%、35歳未満の割合(若年者率)は同1ポイント減の17%となった。
働き手が不足し、他業種との人材獲得競争が激しくなっていることも背景にあるとみられる。農業の有効求人倍率は、全産業平均を上回って推移している。
政府は25年までに国産材の供給量を4000万立方メートルに増やす目標を掲げる。これに伴い、同庁は、目標の達成に5万3000人程度の林業従事者が必要と試算しているが、15年は大きく下回っている。
政府は、意欲のある担い手に森林を集約する新たな森林管理制度を19年度から始める方針。林業従事者が減る中、同制度をてこに、必要な森林整備を行う体制を整えたい考えだ。
同庁は、総務省が5年ごとに実施する国勢調査を基に、林業従事者数をまとめており、今回は15年時点の結果を公表した。
林業従事者は、国産材の価格の低迷による収益性の低下などで、1980年の14万6321人から減少の一途をたどってきた。前回(10年)は5万1200人で、05年比の減少率は2%。新規就業者の育成を支援する「緑の雇用事業」の効果もあって、減少幅も小さくなっていたが、15年は4万5440人と大きく減少した。
原因の一つが、林業従事者の高齢化だ。年代別に見ると、65歳以上の従事者が占める割合(高齢化率)は10年から4ポイント増の25%、35歳未満の割合(若年者率)は同1ポイント減の17%となった。
働き手が不足し、他業種との人材獲得競争が激しくなっていることも背景にあるとみられる。農業の有効求人倍率は、全産業平均を上回って推移している。
政府は25年までに国産材の供給量を4000万立方メートルに増やす目標を掲げる。これに伴い、同庁は、目標の達成に5万3000人程度の林業従事者が必要と試算しているが、15年は大きく下回っている。
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農業リスク 訪問点検 診断システム本格始動 共済連 対策提案 全国展開へ
JA共済連は2018年度、災害時や加工食品の異物混入による損害賠償発生など、農家のリスクを点検し、対策を提案する「農業リスク診断活動」の全国展開を目指す。タブレット端末でリスクを診断できるシステムを4月から本格始動。JA職員が農家を訪問し、やりとりを通じてリスクを明らかにし、共済から営農指導まで幅広い範囲での対策を提案する。
2018年04月24日

[未来人材] 38歳、水稲+スイカ「やっぱり地元が好き」 新潟県南魚沼市 駒形宏伸さん DJで頂点 次は米
新潟県南魚沼市で水稲とスイカを栽培する駒形宏伸さん(38)は、農業後継者とディスクジョッキー(DJ)の二つの顔を持つ。DJの技を競い合い、世界一になったほどの腕前だ。現在は農業に軸足を置き、農閑期に地元のイベントなどでプレーを楽しんでいる。
場を盛り上げたり、多くの人が喜んでいる姿を見たりするのが好きだという駒形さん。「DJ CO‐MA」として、コンテストで世界一を獲得するなど、2000年代後半に国内外の大会で活躍した。夏は魚沼で農業をやり、冬場は東京に出てDJとして活躍する道を探ったこともある。
「当時は明らかに仕事に身が入っていなかった」と駒形さんは振り返る。出場する大会が農繁期と重なることが多かったためだ。「音楽も農業も奥が深く、どちらも中途半端になるという思いが心をよぎった。葛藤したが、大好きな地元で過ごしたいと思った」と自らを見つめ直した。
すると、農業とDJは手を掛けた分だけ良くなるところが似ていると気付いた。DJの大会では、10~15分のプレーのために1年かけて準備をしていた。スイカも、葉かきや防除、実を付ける場所の選び方など手を掛けるほど品質が高くなりおいしくなると分かった。今年は、若手農家で話題の発光ダイオード(LED)を使ったスイカ接ぎ木苗での育苗にも挑戦する。
腕試しとして昨年、全国規模の米食味コンテストに初めて出場したが、惨敗。「今後は新しい技術を積極的に取り込み、上位を目指していきたい」と意欲を示す。目指すは上位入賞だ。「賞を取れば、地域が盛り上がるでしょ」と笑顔を見せた。(妻木千尋)
2018年04月21日
日米新協議 「FTAではない」 議論内容は今後調整 農相
斎藤健農相は20日の閣議後会見で、日米首脳会談で合意した両国間の貿易に関する新たな協議について「FTA(自由貿易協定)と位置付けられるものではなく、その予備協議でもない」と述べ、米国が求める2国間の貿易協定締結につながるものではないとの考えを示した。一方、新たな協議でどのような議論をするかは「これから米側と調整することになる」としており、今後の展開は予断を許さない状況となっている。
2018年04月21日

トマト 2農場がGAP認証 全農みやぎ事務局 全国連支援の第1号
JA全農みやぎは20日、宮城県内の2農場がグローバルGAPをトマトで取得したと発表した。JA全中、JA全農、JA共済連、農林中央金庫の4者で取り組む「JAグループGAP第三者認証取得支援事業」を活用した農業生産工程管理(GAP)認証取得の第1号。全農みやぎが事務局を務め、団体認証として取得した。労働環境や経営などの改善につなげ、国内外への販路確保を後押しする。
取得した農場は、松島町のサンフレッシュ松島とマキシマファーム、山元町のやまもとファームみらい野の3法人2農場。申請面積は合計で2・66ヘクタール。
JAを超えて複数の大規模法人が参加したことから、全農みやぎが団体事務局を担当。今後も県内大規模法人の参加を呼び掛ける予定。
サンフレッシュ松島とマキシマファームの代表・内海正孝さん(61)は「農家が単独で挑戦するのは難しい。全農の支援により、専門家の指導などを受けられ、認証を取得できてうれしい」、やまもとファームみらい野の代表・島田孝雄さん(63)は「今後も全農と協力し、他の露地野菜でも認証を取得したい」と述べた。
全農みやぎの高橋正運営委員会会長は「輸出にもつながる第一歩。宮城の農作物の安全や安心をさらに高め、国内外にPRしよう」と強調した。
JAグループGAP第三者認証取得支援事業は、2017年度からスタート。GAP支援チームが産地に出向き、団体認証取得を支援する。
2018年04月21日

[行事] 端午の節句 子の成長、無事願う… 中国の厄払い由来 笹巻きに思い込めて 特別な「祝い巻き」
5月5日は「端午の節句」です。厄をはらい、子の成長や家族の無事を願う思いは同じでも、地域によって祝い方が異なります。行事食・ちまきの作り方を紹介します。
中国の厄払い由来
「端午の節句」は平安時代から行われてきた朝廷儀式の一つで、中国の厄払いの行事に由来します。香りが強く葉先が鋭いショウブで邪気を払ったことから、鎌倉時代には「勝負」と掛けて武運などを祈るようになりました。
東京家政学院大学の江原絢子名誉教授によると、古くからある行事食は、ちまきです。中国の三国時代の文献に「5月5日の前日に、もち米をマコモの葉で包んであくで煮たちまきを食べる」といった内容が紹介されています。日本の平安時代の書物にも同様の記述があり、神へ供えた後に振る舞ったと考えられます。
日本ではマコモではなく、チガヤやササを使いました。ちまきを「笹(ささ)巻き」と呼ぶ地域もあります。江原教授は「地域によって、呼び名や作り方、形が違う。気候や利用しやすい植物などに合わせて変化した」と説明します。
かしわ餅は江戸時代以降、武家を中心に広まりました。カシワの葉は新しい芽が出るまで古い葉が落ちないことから、縁起が良いとされました。西日本ではサルトリイバラ、長野県や岐阜県ではホオの葉を使う地域があります。
北海道や青森県は、「べこもち」が「端午の節句」の祝い餅として親しまれています。江原教授は「行事食には、その土地ならではの特徴が色濃く残っている」と強調します。
笹巻きに思い込めて
山形県酒田市の農家・熊谷あさ子さん(80)は、「端午の節句」には笹巻きを必ず作ります。「ササの巻き方や煮方が家によって違う」と説明します。
熊谷さんが教える巻き方は「三角巻き」ですが、げんこつの形をした「こぶし巻き」や、円すい形の「タケノコ巻き」などもあります。
熊谷さんは「嫁ぐ前から親しんできた味がいい」と、あくを使わずに作ります。中身の餅が白く、米の粒が残っているのが特徴です。
特別な「祝い巻き」
初節句など特別なときは「祝い巻き」を作ります。ササを30、40枚重ねて、30センチほどの高さのタケノコのような形に仕上げます。「タケノコのようにすくすく育ってほしいと願って作る」と熊谷さん。
各家庭で伝承してきた笹巻きですが、最近は作る人が減っています。熊谷さんは「教えないと作れる人がいなくなってしまう」と、学校などで教えています。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください
https://www.youtube.com/watch?v=NC3bO9F-fh0
2018年04月26日
農政の新着記事

全国一律 見直し提言 飼料米“誘導”を問題視 転作助成で財政審
財務省の審議会が25日、米政策の見直しで提言をまとめた。飼料用米に対して国が全国一律に措置する助成金について、飼料用米による転作を過度に誘導していると課題を提起。野菜や麦など需要がある作物の増産が各産地で進むよう、飼料用米を含む転作作物の助成単価について、都道府県が決められる仕組みを検討するよう求めた。
2018年04月26日
異業種間で労力融通 繁忙期に相互支援 北海道・留萌モデル地区
経済産業省北海道経済産業局と北海道は、労働力不足に対応するため、農林水産や食品加工、建設などの異業種間で労働力をマッチングし合う仕組み作りに乗り出す。各業種の繁忙期や閑散期などを“見える化”し、兼業や副業、派遣など多様な勤務形態で支援し合う。モデル地区を留萌地方で立ち上げる方針で、地元JAなど各業界団体などが同市で24日、初会合を開いた。2019年度に運用を始める計画だ。
道内の労働力確保が大きな課題となっているため、同局では、異業種の支援に着目。モデル地区では、留萌地方8市町村の他、管内のJA南るもいやJA苫前町、JAオロロン、JAてしお、漁協、森林組合、商工会議所、建設協会などが「留萌管内働き手対策検討会」を設立し推進する。
具体的には、工事の受注が少ない時期に建設業者の社員が農作業を手伝ったり、農家が農閑期に海産物の箱詰め作業を担ったりする環境をつくる。今年度は、参加団体の協力を得て、各業種の繁忙期や閑散期などを調査し、マッチングする方法や賃金、副業や兼業を進めるための課題などを洗い出す。地元企業の経営者らの理解を得るためのセミナーも開く予定だ。来年度以降、兼業などで生じる労務上の課題について社会保険労務士らが経営者らに助言する機会も設ける。
会合では、参加団体が各業界の人手不足の状況を報告。改善に向けて協力を確認した。北海道経済産業局は「個人のキャリアアップではなく、地域の担い手を確保するという観点で兼業などの働き方改革を進めたい」(地域経済部)としている。
2018年04月25日
新たな日米協議 閣僚会合、6月以降 「FTA念頭にない」 TPP担当相
茂木敏充TPP担当相は24日の閣議後会見で、日米の新たな貿易協議について、閣僚級の初会合は6月以降になるとの見通しを示した。新協議で米国側は日米自由貿易協定(FTA)も念頭に、2国間協議で農産物の市場開放を求めてくる可能性がある。茂木担当相は「2国間のFTAは念頭に置いていない」と述べ、FTAに意欲的な発言が相次ぐ米国側をけん制した。
新協議は、日米首脳会談で合意。茂木氏と米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が担当する。茂木氏は、閣僚級の初会合について「6月中旬以降になるだろうと(米国側に)話をしている」と明かした。その理由について「わが国の国会の日程であるとか日米双方で準備を行う必要がある」と述べた。
政府関係者によると、森友・加計学園の問題などで混乱が続く中、今国会会期中での開催は難しい。今国会で環太平洋連携協定(TPP)の国内手続きを完了させた後で新協議に臨み、米国に復帰を改めて呼び掛けたい思惑もある。米国側も北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で、まだ新協議に臨む余裕はないとみられている。
11月に中間選挙を控える米国では、日本に大幅な市場開放を求める強硬論が強まる可能性が高く、既に日米FTAに意欲を示す発言も目立ち始めている。茂木担当相は新貿易協議について「日米FTA交渉と位置付けられるものではなく、予備協議でもない」と指摘。TPP復帰を訴えていく考えを重ねて強調した。
2018年04月25日
「TPP超え認めぬ」 日米新協議で自民 党の了解必ず 対策本部
自民党は24日、TPP・日EU等経済協定対策本部の会合を開き、日米首脳会談の結果について議論した。首脳会談では、貿易と投資に関する新たな協議の枠組みを設けることで合意したが今後の協議に向けて、合意済みの環太平洋連携協定(TPP)を超える農産物の市場開放は認められないとの方針を確認した。
首脳会談では、新たな協議は茂木敏充TPP担当相とライトハイザー米通商代表の間で行うことで一致。日本は引き続き米国のTPP復帰を促す方針だが米国側は2国間協定にこだわり、今後の行方が注目されている。
これに関し、同本部長を務める森山裕・党国会対策委員長は「国内の農家や水産業者などに迷惑をかけることのない形で成就できるように頑張っていかなければならない」と強調。今後の日米協議に向けて「党との連携は非常に大事だ。いい情報、厳しい情報、しっかり入れて政府、与党が一体的に対応できるようお願いしたい」と述べ、党の了解なしに安易な譲歩に踏み切ることがないよう政府に念押しした。
会合は、自民党国会議員有志による議員連盟「TPP交渉における国益を守り抜く会」と合同で開いた。新たな協議では今後、米側が自由貿易協定(FTA)交渉を求めてくる恐れがある。
同会の江藤拓会長は「決してFTAやそれに準じるものの地ならしのために、ましてやTPPの枠組みを超える合意を形成するために新たな協議の場を設けたわけではないとはっきり確認したい」と、政府の対応方針をただした。
首脳会談に同席した茂木氏は、新たな協議は「日米FTA交渉と位置付けられるものでもないし、その予備協議でもない」と強調。「特に農産品に関しては、TPPで合意したものが最大限であると(米国側に)明確に伝えた」と語った。
市場開放圧力に懸念 公明
公明党は24日、TPP等総合対策本部(総合本部長=石田祝稔政調会長)と内閣部会、外交部会の合同会議を開き、米国との新たな貿易協議について議論した。牛肉、豚肉の市場開放に向けて米国が圧力を強めてくる可能性があるとして、TPP以上の譲歩をしないよう、政府に強く求めた。
TPP11や日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が発効した場合、特に牛肉や豚肉で、米国が対日関税で不利になることを指摘する意見が挙がった。
同本部の稲津久本部長は「米国はこのまま黙っていない」と、新協議で新たな市場開放を強く求めてくることへの懸念を示した。こうした要求を受け入れないよう、TPPへの復帰を粘り強く、徹底して訴えるよう政府に求めた。
2018年04月25日

[特区 外国人就労] 期待と不安と 費用負担は? 日本語は?
農業分野への外国人労働者の受け入れで国家戦略特区に指定されている愛知県、京都府、新潟市は今週から順次、「適正受入管理協議会」を設立し、外国人の受け入れ準備に本腰を入れる。農業の労働力不足は深刻で現場からの期待は高まるが、「本当に外国人が来てくれるのか」「派遣業者にどこまで費用を払うのか」など、課題を指摘する声が上がっている。(猪塚麻紀子、尾原浩子)
求人の幅 広がる 新潟市の野菜苗法人
新潟市で野菜苗を生産する鈴木農園。同園で作業するベトナムの技能実習生、ダオティー・クィーン・アイーンさん(26)は「仕事は楽しいし、みんな優しいけれど、(特区で可能となっても)再来日して農業したいと思わない。帰ったら家族と暮らすの」と将来を語る。同社で実習を始め、1年半。3年で母国に帰るつもりだ。日常レベルの日本語は話せるが、漢字は読めない。指導を受け、漢字のラベルを商品に挿す作業を進める。
同園は関連会社の「エンカレッジファーミング」と合わせ、2007年からこれまで40人の実習生を受け入れてきた。今後は特区での受け入れを目指す。鈴木孝常務は「日本人は、求人しても高齢者しか集まらない。特区なら働き手が確保できる」と期待する。
特区に関心はあっても、金銭的負担が課題となる。特区では、日本人と同等以上の報酬が要件となっているが、鈴木常務は「個人差はあるものの技術や会話のレベルを踏まえると、技能実習を経た人でも農作業の工程管理を任せるまでは難しい。日本人のパートの賃金と比べて飛び抜けて高い人件費は支払えない」とみる。
同園では現状でも、残業代を除き、技能実習生に1人年間200万円は要する。管理費や住宅維持費なども必要で、日本人パートの労働賃金より高くなる計算だ。さらに、現場では技能実習生と特区で働く外国人が混在することになり、労働体系の整備も必要となる。
同市は協議会を設立した後、派遣元となる特定機関募集に取りかかる。市によると、現状で雇用に関心を示す農業法人は2社。同市ニューフードバレー特区課は「どれだけ外国人が来てくれるか見えない。掘り起こせば農家のニーズはある」とみるが、JAや農家は静観している状況だ。
市内農地の過半の面積を管内とするJA越後中央は「稲作中心の地で、特区に期待する農家は(鈴木農園以外に)聞いたことがない。特区に反論はないが、地域密着のJAとしてまずは地元雇用を大切にしたい」(営農部)と話すにとどまる。
配慮忘れず制度活用 愛知京都
26日に全国に先駆けて協議会を立ち上げる愛知県は、稲作地帯とは事情が異なる。施設園芸が盛んな上、自動車などの工業地帯を抱え農業の人手不足が深刻。技能実習生の受け入れ実績がある東三河地域などから、特区への期待は大きい。
派遣元となる特定機関について、既に民間事業者から問い合わせが多く、県は「技能実習生の監理団体などで、新たに派遣事業の許可を得て特定機関への参入を検討するところもある」(農林政策課)と明かす。JA愛知中央会は「農家からは外国人受け入れに期待がある。制度を生かす方策を考えていきたい。JAグループ愛知として労働力確保の手法の一つとして検討していきたい」と話す。
3市府県ともに共通して認識するのは、働く環境整備への配慮だ。京都府は「外国人労働者に来てよかったと言われる制度にしていくことが重要だ」(農政課)と説明。JA京都中央会は「農業の現場での労働力不足は深刻。組合員の期待に応えられるよう、JAグループ京都としてしっかりと対応していきたい」と強調する。
2018年04月24日
畜産クラウド構築 牛の情報一括提供 乳量や疾病履歴ネット上で集約 農水省 20年まで
農水省は2020年までに、畜産農家がスマートフォン(スマホ)などで牛の飼養管理に関する情報を把握できるシステムを立ち上げる。畜産関係の各組織が個別に保有している乳量や疾病の履歴などの情報をインターネット上で集約し、牛の固体識別番号を基にその牛に関する情報を一括して入手できるようにする。「情報を基に牛の特徴を把握し、経験や勘に頼る飼養管理からの脱却を図る」(同省)狙いだ。
構築するのは「全国版畜産クラウド」というシステム。農家がスマホなどでインターネットに接続すれば、どこからでも情報を引き出せる仕組みにする。
例えば、現状で牛の乳量や乳成分に関する情報は、家畜改良事業団が牛群検定を行い把握しており、各農家は検定結果を書類で受け取るなどしている。一方、農家が導入した牛の疾病や治療の履歴を知りたい場合、その牛の治療を担当していた獣医が所属する農業共済団体に問い合わせるといった、個別の対応が必要になる。
こうした情報収集の手間を省くため、各組織の持つ情報をインターネット上で集積する。人工授精の回数や給与された飼料、市場での牛の取引価格などの情報も収集する。
牛は生産履歴を把握する国のトレーサビリティ制度に基づいて、一頭一頭に固体識別番号が割り振られている。飼養している牛の同番号を基に、その牛に関する一連の情報を引き出せるようにする。
情報を基に農家が各牛の特徴を把握し、乳量を効果的に伸ばすための飼養管理や、人工授精や出荷するタイミングの判断などに生かしてもらう。将来的には、畜産農家向けの経営分析ソフトを開発する民間企業も情報を共有できる仕組みにし、こうした企業の商品開発も後押しする。
同省は全国版畜産クラウドの構築に向け、18年度予算で2400万円を計上し、システム整備費などに助成している。19年度以降も継続的に予算を措置したい考えだ。
2018年04月23日
外国人農地取得2件 法律違反確認されず 農水省が初の調査
外資や外国人による農地取得が、2017年は2件で7・2ヘクタールに上ったことが、農水省の初調査で分かった。外資が出資した農地所有適格法人(農業生産法人)が7・1ヘクタールを、外国人個人が相続に伴い10アールを取得した。農地法の規定に違反して、農地が取得された例は確認されなかった。
同省は、外資による森林買収の拡大を受け、森林では毎年、外資の取得面積を調べてきたが、「農地の外資買収も進みかねない」との懸念の声を受けて調査に乗り出した。
具体的には①外国に本店がある法人(外資)②居住地が海外の外国人③農地が所有できる農地所有適格法人のうち、外資や外国人が議決権を持つなどした法人──を対象に、17年の1年間の農地の取得状況を調べた。
外資を含め、一般企業による農地取得は農地法上、認められていない。調査では、農地法に基づく許可書などを基に取得状況を調べたが、外資による農地の違法取得はなかった。
一方、北海道函館市では、フランスに本店があるワイナリーが49%を出資した農地所有適格法人が7・1ヘクタールを取得。醸造用ブドウの栽培に向け、地元農家と法人を立ち上げ、農地を取得した。農地所有適格法人は、農業者の出資割合が過半などを要件に、農地取得が認められている。
愛知県稲沢市では、中国人が10アールを取得。もともと日本人だったが中国人との結婚を機に中国籍にし、その後、親からの相続が発生し所有権が渡った。農地法では個人で農地を取得する場合、原則で年間150日以上農作業に従事するなどの要件がある。海外に住む外国人がこうした要件を満たすのは難しく、事実上、取得できない。一方、相続で所有権が渡った場合は、農地法の要件は対象外となる。
同省は18年以降も同様の調査を続ける方針だ。
2018年04月23日
TPP 見えぬ国会論戦 疑惑続出、野党欠席 米復帰へ急ぐ政府 「衆院優越」自然承認も
米国を除く11カ国による環太平洋連携協定の新協定(TPP11)の承認案の国会審議の行方が、見通せない状態になっている。承認案は17日に審議入りしたが、国会では財務事務次官のセクハラ疑惑など政府の不祥事を受けて主要野党が審議を欠席し、不正常な状態になっているためだ。政府、与党は27日に衆院外務委員会で承認案採決を目指すが、野党の欠席が続けば、審議が深まらないまま衆院を通過する恐れもある。
先の日米首脳会談では、新たな貿易協議の枠組みを設けることで合意。2国間交渉を求める米国に対し、日本はあくまで米国にTPP復帰を促す方針。日本政府は、米国復帰の呼び水にするため、TPP11の今国会での承認にこだわる。
しかし、今後の日米協議で米国から自由貿易協定(FTA)を求められた場合、農業の追加開放を余儀なくされるなど裏目に出る危険がある。そのため国会審議ではTPP11の内容の是非だけでなく、米国との新たな貿易協議に向けた政府の対応も大きな焦点となる。
ただ、国会正常化の見通しは立たない。野党は、麻生太郎副総理兼財務相の辞任や加計学園問題を巡る柳瀬唯夫元首相秘書官の証人喚問を要求しており、長期の欠席も辞さない構えだ。
条約は、憲法の衆院優越規定で、参院が議決しない場合でも、参院送付から30日で自然承認となる。大型連休前に参院に送付すると、連休中の1週間が使えず、参院での実質的な審議日程の確保が難しくなる。
政府、与党は今国会での承認を確実にするため5月の大型連休明け早々にも衆院本会議で採決し、参院に送付する方針。大型連休前の27日には、外務委員会の審議を終えたい考え。野党欠席のまま審議、採決に踏み切る可能性もある。
一方、TPP11の発効に向けた国内手続きを完了するには、協定の承認とともに関連法案の成立が不可欠だが、関連法案は審議入りしていない。27日の本会議で審議入りする方向だったが、流動的だ。
2018年04月22日

輸出1兆円に迫る 17年最高更新 政府支援、日米向け増 韓国の農林水産物
韓国の農林水産物などの輸出額が1兆円規模に迫っている。「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配置問題で関係が悪化した中国向けが減少したものの、主力の日本や東南アジア、米国向けなどが大きく増えているためだ。政府は今年、東南アジアなど五つの国・地域を戦略輸出先として指定し、支援策を一層強化する方針だ。
韓国農水産食品流通公社によると、2017年の農林水産物などの輸出額は、前年比6・5%増の92億ドル(約9840億円)で過去最高となった。うち農林畜産物は5・6%増の68億ドル(7276億円)で、輸出総額の75%を占め、08年から7ポイント増えた。
18年1~3月の輸出額も、前年比4%増の22億ドル(2354億円)。
品目別に見ると、生鮮農産物のイチゴは、香港や東南アジアのシンガポール、タイ、ベトナムなど需要が増え、前年比29%増の4400万ドル(47億円)と過去最高を更新した。薬用ニンジンは、中国産の在庫不足で、米国在住の中国系住民向けが増えた。日本向けはトマトが増えた。
半面、鳥インフルエンザの影響で家禽(かきん)類の輸出は減った。THAAD問題で中国向けのゆず茶なども落ち込んだ。パプリカは、国内生産量の増加で、日本向けの輸出量は増えたが、輸出額は減った。
政府は、この実績を踏まえ、18年には五つの最優先輸出戦略地域に絞り、支援策を強化する。東南アジア(台湾、マレーシア)、中南米(ブラジル)、ヨーロッパ(ポーランド)、中東・中央アジア(カザフスタン)、アフリカ(南アフリカ共和国)となる。
五つの地域に対し、現地商談会の開催や農食品青年海外開拓団の派遣を強化する。同開拓団は、昨年の60人から100人に増やし、現地での農産物、食品紹介や輸出企業とのマッチングなど市場開拓に注力する。
2018年04月22日
日米新協議 「FTAではない」 議論内容は今後調整 農相
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2018年04月21日