障害あっても・・・ 農業が自立応援

シイタケの収穫をする従業員(栃木県那須塩原市で)

 農産物の生産現場に障害のある人たちを働き手として受け入れ、自立を支援する農福連携が広がりを見せている。農業分野の人手不足が課題となる中で、JAが農家と働き手を結ぶ事業を始めるケースも出るなど、障害者の活躍の場をJAがつくる事例も増えている。
 

シイタケで通年就労 栃木県那須塩原市の事業所


 那須塩原市の「ファーマニーテトテ」は、2013年から障害のある従業員を中心にシイタケ栽培に取り組む。JAなすのへの出荷に加え、消費者との交流を大切にしたいとの思いから病院・役所などへの出張販売や直売所、飲食店、イベント出店に力を入れる。通年栽培するシイタケは、肉厚で食べ応えがあると好評だ。

 「引きこもりになりがちな障害のある人たちに毎日通う居場所を提供し、農作業を通して人を育てたい」と社長の野澤謙一さん(49)は話す。

 同事業所は那須塩原市と大田原市を拠点とする株式会社テトテが運営。障害者が雇用契約を結び、働きながら技能を身に付ける「就労継続支援A型事業所」として20~60代の男女28人が通っている。就業日はシフト制で週5日4、5時間の勤務が基本だ。また、雇用契約をせず、通所して働いた分の労賃を受け取る「就労継続支援B型事業所」も運営。週2日程度から少しずつ始められる。

 5棟のハウスで菌床2万5000個のシイタケとキクラゲを生産し、加工まで行う。菌床シイタケは天候に左右されにくく、一年中栽培でき、刃物や薬剤を使わないため安心して栽培できる。加工まで行い作業分野の幅を広げ、一人一人の適性に合わせた仕事をつくり出している。

 作業場の壁や台には、シイタケの規格が一目で分かるような写真やシートなどが貼られている。また、収穫適期を逃さないよう、シイタケのサイズを測る直径5センチの金属の輪を用意。シイタケのかさに当てて収穫の目安にする。

 副社長で統括施設長の大高久尚さん(35)は「同じ時間に通勤し、日に日に成長するシイタケを見ることで生活のリズムが整う。家族以外の人とコミュニケーションを取る中で、気配りができる人に成長している」と手応えを感じている。

 野澤社長は「安定して生産できるようになってきたので、次の段階として商品の社会的価値を認めてもらえるような販売方法を模索したい」と話す。
 

観光農園、JAが仲立ち


 農福連携の動きが広がっている。埼玉県鴻巣市の障害者福祉サービス事業所「夢工房翔裕園」が16年に立ち上げた観光福祉農園・元気ファームでは、B型就労を利用する障害者36人が、年間を通じてイチゴやブルーベリーの栽培を行う。16年に約2000人だった観光客が、翌17年には4000人以上に増えた。

 同事業所の百合川祐司施設長は「今後は法人化し、障害者の雇用を増やす」と意気込む。

 長野県JA松本ハイランドは、18年度から農家と働き手をマッチングさせる事業に取り組む。JA徳島市も今月、福祉サービス事業所と連携し、ホウレンソウの出荷調製作業に障害者の雇用を始めている。

 昨年は、全国の事例を情報交換するネットワーク「全国農福連携推進協議会」が発足。農水省は、農山漁村振興交付金の中で農福連携を推進する支援策を増やした。農家での障害者用トイレ、更衣室の設置の助成などを行っている。
 

農家への周知必要


 ■JA共済総研の濱田健司主任研究員の話 菌床シイタケなど周年出荷品目の生産の場では、障害者が年間安定した収入を得られる。農業生産に乗り出す社会福祉法人は確実に増えているが、生産の現場では、まだ農福連携を知らない農家も多い。生産現場での周知をしていくことが課題だ。

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