岡山県真庭市中和地区 経済循環高め人口増 地域資源で雇用創出

地元のまきを燃料にした温泉施設のボイラー(岡山県真庭市の中和地区で)

 岡山県真庭市の中和地区は、若者を中心に地域内の経済循環を高め、人口の社会増を実現した。ボイラー燃料に地元のまきを使用したり、小規模農家の野菜を道の駅に出荷する仕組みを整備したりと、経済を地域で回す。この実践の積み重ねに共感する若者が集まった。大量消費、大量生産でなく、少量でも地域内で生産し、地域内で購入する。この二つを着実に進めることで、過疎地でも新たな所得や雇用を生み出した。

 県境に位置し、610人が暮らす同地区。人口減少が特に厳しい中山間地域だ。20年前に比べて住民は2割減った。
 

まき燃料化 組合を結成


 そんな地域で経済の循環が動きだしたのは2015年。赤字経営が続いていた温泉施設のボイラーの燃料を灯油からまきに代える仕組みを若者主導でつくり出した。大型バイオマスの先進地として全国区で有名な真庭市だが、同地区はその恩恵が乏しい。このため大規模な設備投資を要するバイオマス発電ではなく、放置されていた里山の森林資源を熱利用に生かすことを考えた。

 大阪市から移住した赤木直人さん(38)が、妻の古里である同地区に地域資源を生かす事業を手掛ける一般社団法人アシタカを設立。里山の再生につなげようと住民に声を掛けた。その結果、農家14戸が山から木を伐採する「薪(まき)生産組合」を結成。アシタカは、同組合から1立方メートル6000円で丸太を買い取り、まきに加工し、温泉施設に1立方メートル当たり1万500円で販売する。現在、年間220立方メートルを販売し、温泉施設の灯油使用量は45%の削減につながった。同市のバイオマス発電に比べると数字は小さいが、赤木さんは「地域内で利益を分かち合う。地域密着の持続的な取り組みで、最近やっと軌道に乗ってきた」と笑顔だ。
 

野菜集出荷 仕組み整備


 まきの燃料化を皮切りに、地域内では、少しずつ「回る経済」の実践が活発になってきた。繁茂する竹を活用した竹筒燃料棒の普及や、高齢農家がニンジン一本でも出荷できる道の駅への集荷体制の構築、宿やカフェで食材に地元産を使用するといった工夫が広がる。

 こうした積み重ねが都会の若者の心をつかむ。野生鳥獣の肉(ジビエ)や陶芸、農業など多様ななりわいを組み合わせて生計を立てる若い移住者が増加。同市によると毎年のように若者が移住し、現在、転入者が転出者を上回る人口の社会増を達成。近く、さらに6人が移住する予定だ。

 地元産大豆を活用した豆腐店を起業する松井美樹さん(32)は昨年、東京都から移住した。松井さんは「まきを使い火をおこしてここにしかない最高の水で豆腐を作る。地域の経済循環の一部になれたらうれしい」と明るい。

 同市では中山間地域の他自治体と連携しながら、液肥や堆肥の活用、地産地消の学校給食、地元での精米などを物流も含めた循環の仕組みを進めていく計画だ。

 農村の人口動態を分析する持続可能な地域社会総合研究所の調査によると、消費、流通、生産で地域内循環を高めることで、地元に所得を取り戻すことができる。例えば人口4000人の中山間地域で、食料品の域内購入率、生産率を70%に高めると地元に4億円の所得が増え、134世帯の新たな雇用が生まれる。同研究所の藤山浩所長は「小さな地域内や食料品だけでは限界があるため、地方都市圏としての自給強化や交通や物流の効率化、エネルギーの自給が鍵になる。若者が新しい地域循環システムの主役だ」と指摘する。

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