[特区 外国人就労] 期待と不安と 費用負担は? 日本語は?

ベトナムから来た技能実習生に、野菜苗にラベルを挿す作業を指導する鈴木常務(左)(新潟市で)

 農業分野への外国人労働者の受け入れで国家戦略特区に指定されている愛知県、京都府、新潟市は今週から順次、「適正受入管理協議会」を設立し、外国人の受け入れ準備に本腰を入れる。農業の労働力不足は深刻で現場からの期待は高まるが、「本当に外国人が来てくれるのか」「派遣業者にどこまで費用を払うのか」など、課題を指摘する声が上がっている。(猪塚麻紀子、尾原浩子)
 

求人の幅 広がる 新潟市の野菜苗法人


 新潟市で野菜苗を生産する鈴木農園。同園で作業するベトナムの技能実習生、ダオティー・クィーン・アイーンさん(26)は「仕事は楽しいし、みんな優しいけれど、(特区で可能となっても)再来日して農業したいと思わない。帰ったら家族と暮らすの」と将来を語る。同社で実習を始め、1年半。3年で母国に帰るつもりだ。日常レベルの日本語は話せるが、漢字は読めない。指導を受け、漢字のラベルを商品に挿す作業を進める。

 同園は関連会社の「エンカレッジファーミング」と合わせ、2007年からこれまで40人の実習生を受け入れてきた。今後は特区での受け入れを目指す。鈴木孝常務は「日本人は、求人しても高齢者しか集まらない。特区なら働き手が確保できる」と期待する。

 特区に関心はあっても、金銭的負担が課題となる。特区では、日本人と同等以上の報酬が要件となっているが、鈴木常務は「個人差はあるものの技術や会話のレベルを踏まえると、技能実習を経た人でも農作業の工程管理を任せるまでは難しい。日本人のパートの賃金と比べて飛び抜けて高い人件費は支払えない」とみる。

 同園では現状でも、残業代を除き、技能実習生に1人年間200万円は要する。管理費や住宅維持費なども必要で、日本人パートの労働賃金より高くなる計算だ。さらに、現場では技能実習生と特区で働く外国人が混在することになり、労働体系の整備も必要となる。

 同市は協議会を設立した後、派遣元となる特定機関募集に取りかかる。市によると、現状で雇用に関心を示す農業法人は2社。同市ニューフードバレー特区課は「どれだけ外国人が来てくれるか見えない。掘り起こせば農家のニーズはある」とみるが、JAや農家は静観している状況だ。

 市内農地の過半の面積を管内とするJA越後中央は「稲作中心の地で、特区に期待する農家は(鈴木農園以外に)聞いたことがない。特区に反論はないが、地域密着のJAとしてまずは地元雇用を大切にしたい」(営農部)と話すにとどまる。
 

配慮忘れず制度活用 愛知京都


 26日に全国に先駆けて協議会を立ち上げる愛知県は、稲作地帯とは事情が異なる。施設園芸が盛んな上、自動車などの工業地帯を抱え農業の人手不足が深刻。技能実習生の受け入れ実績がある東三河地域などから、特区への期待は大きい。

 派遣元となる特定機関について、既に民間事業者から問い合わせが多く、県は「技能実習生の監理団体などで、新たに派遣事業の許可を得て特定機関への参入を検討するところもある」(農林政策課)と明かす。JA愛知中央会は「農家からは外国人受け入れに期待がある。制度を生かす方策を考えていきたい。JAグループ愛知として労働力確保の手法の一つとして検討していきたい」と話す。

 3市府県ともに共通して認識するのは、働く環境整備への配慮だ。京都府は「外国人労働者に来てよかったと言われる制度にしていくことが重要だ」(農政課)と説明。JA京都中央会は「農業の現場での労働力不足は深刻。組合員の期待に応えられるよう、JAグループ京都としてしっかりと対応していきたい」と強調する。

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