[達人列伝 53] アジサイ 宮崎県小林市・松永一さん(89) 育種70年「和」を追求 現代の“花さかじいさん”

自慢のアジサイを手にほほ笑む松永さん(宮崎県小林市で)

 宮崎県小林市に、アジサイなど10種類以上の花を育てる“花さかじいさん”がいる。松永一さん(89)だ。育種に取り組み70年。新たな品種を作る際には、淡い色彩や繊細な形状など「和風の美しさ」を追求する。洋花の改良でも日本の植物を参考にする徹底ぶりだ。これまでに新たな品種を複数、育成し、国内外で高い評価を得る。

 モットーは「和の美しさ」を広めること。2011年に品種登録した四季咲きのアジサイ「霧島の恵」が自慢の一つ。開花期が6~11月と長く、花びらの色合いが青やピンクから薄い緑に移る様子を楽しめる。花びらが丸いシクラメンを育種するのに、梅の花を参考にするほど「和風」にこだわる。和食が脚光を浴びるように、花の世界でも日本風の良さが認知されているという。

 新たな品種を次々と作り出せるのは、わずかな変化も見逃さない観察眼があるからだ。365日、水やりなどの際に前年と比較し、花びらの色の違いなどを注意深く見る。花を人に例えて、「学校の先生が児童の表情から体調を読み取るのと同じ。長くやっていれば鋭敏になる」という。

 日持ちの良さや病害に対する強さも重視する。知人や企業から品種改良の依頼がひっきりなしに舞い込む中、「きれいでも弱ければ、他の人が育てられず、意味がない」と、美しさと強さを兼ね備えた苗の選抜を徹底する。その結果、松永さんの元には「丈夫で長持ちする。育てやすい」と喜びの声が続々と届く。

 1万本に数本の割合しかない優秀な苗を選び、掛け合わせる地道な作業の繰り返しだが「他の人より、桁違いに長い時間をかけるのがこつ。苦労とは思わない」と目を細める。

 これまでにアジサイやシクラメンの他、サイネリアなどで新品種を10種類ほど育種し、色や形の新系統も含めると約50種類を開発した。特に、バラ咲きの青いポリアンカは世界で絶賛されたという。世に送り出した品種は日本フラワー・オブ・ザ・イヤーなど多くの栄冠に輝いてきた。

 白いあごひげをたくわえ、「現代の花さかじいさん」とも呼ばれた松永さん。「時代の移り変わりとともに花を買う人も減ったが、『きれいだ』と感じてくれる人が増えればいい」と、花の魅力を伝え続ける。(松本大輔)
 

経営メモ


 ハウス20アールでアジサイやシクラメン、ポリアンカなど約3000鉢の花を栽培。育種の傍ら、70年前のヒメアジサイの品種なども育てる。
 

私のこだわり


 「人間が指揮棒を振ってもうまくいかない。時間をかけて優秀な鉢を見つけ出す」

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