[達人列伝 61] 「折戸なす」 静岡市・斉藤伸雄さん(75) 選抜重ね伝統に磨き とげなし、球形 食味自信

丸い形が特徴の折戸なすを収穫する斉藤さん(静岡市で)

 徳川家康が好んだとされる、静岡市清水区折戸地区在来のナス「折戸なす」。野生種に近かった特性を、斉藤伸雄さん(75)は自家採種と系統選抜を10年以上重ねて改良し、とげが少なくきれいな球形の実で出荷している。えぐ味を感じにくいよう、握りこぶしほどの大きさで収穫する。「生でもおいしく食べられる」と人気だ。

 「折戸なす」は丸い形状が特徴。ことわざ「一富士、二鷹、三茄子(なすび)」のナスともいわれている。あくが少なく生で食べてもえぐ味を感じにくく、食味は梨やリンゴに例えられることもある。果肉は引き締まっていて、煮崩れしにくい。斉藤さんを含め、JAしみず折戸なす研究会の8人が年間約10トン生産している。

 斉藤さんが「折戸なす」の生産を始めたのは、12年ほど前。一度は途絶えた品種を復活させようと、国の研究機関から種子を譲り受けて地域で栽培が始まったころだった。評判の良さから試しに食べてみたところ、従来のナスとは違う、あくの少なさに驚いた。「消費者に自信を持って薦められる」と、導入を決めた。

 栽培当初は特性が野生種に近く、葉もへたも、とげだらけ。手袋をして作業しても手に刺さってけがをすることもあり、作業を嫌がる農家もいるほどだった。試行錯誤で自家採種と系統選抜を繰り返し、栽培を始めて2、3年ごろからとげが少なく、形のいいものができるようになった。

 地域の土壌が水を保ちにくい砂地であることも栽培のハードルだ。斉藤さんは「ナスは水分を多く求める。他県の農家から『こんな所で栽培できるわけない』とも言われた」と振り返る。

 斉藤さんは畝を立てず、株元にはわせたパイプで朝1回、場合によって昼に再度水やりをする。葉のしおれや枝の状態を見ながら、量や回数をコントロールすることで、品質の良い実が安定して取れるようになった。

 「ライバルに負けない実をつくるためには、ライバルを知ることから」と、園地の一部には加茂なすや水ナスを植える。折戸なすと食味を比較し、品質を確認している。斉藤さんによると、「折戸なす」は従来品種より3割は収量が少ない。「栽培する仲間と協力して、収量も兼ね備えた系統を探したい」と意気込む。(吉本理子)
 

経営メモ


 ビニールハウス4アールで折戸なすを栽培し、7~12月に出荷する。妻と2人で管理。他農家が持つ系統も試験栽培している。トマトやキュウリなど野菜も生産する。
 

私のこだわり


 「他産地の品種と競いながら、おいしさ、作りやすさを追求する」 

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