[達人列伝 63]白ゴマ 鹿児島県喜界町・田向利惠子さん(64) 島外に黄金の一粒を 化学肥料使わず品質追求

収穫後、乾燥したゴマを振るい落とす田向さん(鹿児島県喜界町で)

 搾ったオイルは透き通った黄色。ナッツと花の甘いにおいを混ぜたような良い香りが鼻をくすぐる。国内の自給率わずか0・1%のゴマの中でも、鹿児島県喜界町の田向利惠子さん(64)が生産する白ゴマは他にない特徴が際立つ逸品だ。奄美群島・喜界島でしか出回らない在来種を、化学肥料を使わずに育てる。少量しか取れないが、その品質の良さは全国で話題に。東京の飲食店やJR九州の観光列車の食事メニューにも採用されるほどだ。

 喜界島のゴマ収穫は8月下旬から始まる。天日で干したゴマは乾燥するとさやが開き、実が顔を出す。さやを豪快にたたいて落とし、葉や殻を取り除き、洗い、よく乾燥させてようやく出荷できる。利惠子さんのこだわりは、海岸近くにビニールシートに広げゴマを潮風に当てること。雨にぬれると粒が茶色くなり品質が下がるため、急な雨に備え、海岸に車を止めて乾燥を見守るときもある。

 10年前に夫に先立たれ、サトウキビとの兼業からゴマ一本に専念。落ち込んだ時期もあったが、東京で暮らす息子の勝大さん(31)の協力で、アイスクリーム用のごま油「GOMACASI(ごまかし)」を商品化。浅くいったゴマを、自ら搾った。香水のような小瓶としゃれたデザインの箱に入れ東京のイベントで販売すると若者の心をつかんだ。「島外に喜界島の白ゴマの魅力を伝え、正当な価格で販売すること」が利惠子さんと勝大さん2人の目標だった。

 年に何度も台風が接近する喜界島。種まき後、大雨が降れば種が流れてまき直し。収穫直前の台風は塩害で実が枯れ、収量は安定しない。「大量生産できない分、質の高さを追求したい」と利惠子さん。ソラマメの根を土壌に混ぜるなど工夫する。

 「黄金色の一粒と一滴」を求めるファンは多く、注文は全国から来る。2月にはJR九州のスイーツ観光列車「或(あ)る列車」に白ゴマを練り込んだ白玉が登場。利惠子さんも生産農家として紹介された。毎年届くファンレターには「田向さんのゴマの種をください」。そんなお願いもある。

 需要は高く、島のゴマ販売単価は5年前の1・8倍になった。それでも初心を忘れない利惠子さん。「すりごまにすると違いが分かる。ぜひ試してほしい」とアピールする。(木原涼子)
 

経営メモ


 70アールで喜界島在来種の白ゴマを栽培。輪作で島在来のソラマメも作る。近所の農家からゴマを買い取り、製油業者に販売する仲買役も引き受ける。
 

私のこだわり


 「畑ごとに日記を付け管理を徹底している。今まで一度もクレームはありません。決して“ゴマ”かしていません」 
 

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