「奥会津編み組細工」 農村の技 人呼ぶ宝 今風バッグ 高値&人気 福島県三島町伝統的工芸品 

ヒロロ細工を学ぶ生活工芸アカデミー生(福島県三島町で)

山ブドウやヒロロなど天然素材を使った「奥会津編み組細工」(同)

 山ブドウ籠やマタタビざる……。かつて農作業などで日常的に使われていた民具を活用し、移住対策や地域おこしにつなげる取り組みが東北地方で進む。伝統的工芸品「奥会津編み組細工」の産地、福島県三島町では、都市住民らに今風にアレンジしたバッグ作りや農作業を1年間体験してもらい、技術の継承者として高齢化が進む町への定住を狙う。製品を販売する町の祭りには2万人以上が訪れるほど。農山村の技が地域に人を呼び込む宝に変わっている。(塩崎恵)
 

アカデミー開講 定住きっかけに


 30~50代の男女5人が集まり、薄い緑色の縄で黙々とバッグを編んでいく。5人は、三島町が2017年に開講した「生活工芸アカデミー」の2期生。作っているのは、細長い葉の植物「ヒロロ」を使ったヒロロ細工。もともとは、山仕事や農作業に行く際に、道具や弁当を入れる腰籠などが、手提げや斜め掛けバッグといった実用品に形を変えた。ヒロロの他、山ブドウ細工とざるなどのマタタビ細工がある。

 17年、町は編み組細工を人を呼び込む手段として着目。同アカデミーを開講した。5月~翌3月の約1年間、受講生は町が用意した住居で共同生活を送りながら、山ブドウやマタタビなど「編み組細工」の材料採取や編み方などを学ぶ。講師は町の伝統工芸士らが担う。農山村で自活できる知識を身に付けてもらおうと、野菜栽培や田植え、稲刈り体験もする。

 第1期生4人のうち2人が町に残った。神奈川県出身の井口恵さん(34)は、物作りに興味があり受講。「編み組細工はその人らしさが出るのが面白い。もっと習いたかった」と、習得を目指しながら、町の臨時職員として技術継承へ作り方を文章にまとめる業務を担う。今年5月からの2期生、兵庫県出身の西山明代さん(36)も「山ブドウの籠は使うほど艶が出て、親子3代で使えるのが魅力。絶対に作りたい。畑作業も面白く移住を考えている」と前向きだ。

 同町は県西部の山間に位置し、人口は1656人(4月1日現在)。高齢化率は52・36%(同)で、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると60年には、町の人口は315人まで減少することが予測されている。町は「技術や町で暮らすために必要な知識を得てもらい、移住につなげたい」(地域政策課)と意気込む。
 

大手百貨店 熱視線も…


 三島町では1986年から「奥会津編み組細工」などを販売する「ふるさと会津工人まつり」を開く。今年は2日間で町の人口の16倍となる延べ2万6000人が訪れ、過去最高を記録した。

 高価な物で山ブドウ細工のバッグは30万~40万円、ヒロロ細工のバッグも7、8万円ほどで販売。2日間で300万円を売り上げた人もいる。

 毎年、東京や大阪などの有名デパート5、6社から「定期的に販売したい」と依頼が来るが、基本的に町外での販売はしない。町に訪れないと買えないようにし、人口約1600人の町に活気をもたらしている。

 山形県西川町大井沢地区では、冬の手仕事として山ブドウの皮で作った農作業用の籠など、つる細工作りが盛んだった。つる細工の人気の高まりで、手提げ籠や斜め掛けの製品を作るようになった。大井沢つる細工組合の志田友之会長は「一つ数万円で売れ、首都圏の客が多い」と話す。

 秋田県由利本荘市中直根地域では、特産のアケビを生かした地域づくりを進める中で、つる細工に取り組む。もともと農作業に使う腰籠をアケビつるで作っていたが、つる細工ブームに乗り、5年ほど前から有志のグループで作り方を勉強。鍋敷きやコースター、小物入れを地元の直売所で販売している。 
 

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