[働き手確保へ 支えるJA](1) 農作業受託(熊本・あしきた) 果樹中心に180戸利用

柳田さん(左)の指示を受けてハウスの設営作業を行う「それいゆアグリ」の作業員ら(熊本県芦北町で)

 農業の働き手不足が深刻だ。規模拡大の障害となるだけでなく、産地の維持も脅かしている。全国のJAは、作業受託や他組織との連携、援農、働き手の募集、情報通信技術(ICT)による省力化などに取り組む。自己改革の一環にも位置付けて、農家を支援するJAの取り組みを追う。

 ◇

 熊本県JAあしきたの子会社「それいゆアグリ」は、特産のかんきつ「不知火」(デコポン)の収穫や摘果、草刈り、ハウスのビニール張りなど、高齢や働き手不足の農家から幅広い作業を請け負う。水稲など農繁期が異なる品目と組み合わせ、年間を通じて作業員を確保。中山間地が多い管内の営農の維持や農家の規模拡大に貢献する。

 「“アグリさん”(同社)がいないと収穫は厳しい」

 芦北町でデコポンなど3ヘクタールの園地を経営する柳田豊彦さん(62)は11月下旬、同社の作業員にかんきつ用ハウスの設営をしてもらっていた。普段の労働力は本人と妻の2人。収穫時には親戚や近所の人を頼っていたが、ここ数年は高齢で困難に。収穫作業などを依頼するようになった。

 同社は2018年度、デコポンや甘夏といったかんきつ類の収穫を中心に、JAの果樹部会員の3分の1に相当する農家180戸から農作業を請け負う。支援に当たる作業員数は延べ4680人、時間は同3万3000時間に及ぶ見通しだ。かんきつの作業受託を本格的に始めた12年度の同1万時間から右肩上がりで伸び、「地域になくてはならない存在」(柳田さん)となりつつある。

 組合員なら誰でも利用でき、料金は果樹の収穫で作業員1人1日8時間で9600円(税別)が基本。管内の市町が3割前後を助成し、農家負担は抑えられている。農家は希望する作業の内容や場所、期間、人員数などを書面で申し込む。作業後には農家からサインをもらい、料金を請求する──という流れだ。

 同社は10年に、JAが行っていた水稲の作業受託事業を法人化する形で設立され、水稲の育苗や農業経営も行う。作業員の定着が課題だったが、農繁期の異なる品目を組み合わせ、年間を通じて就業できるようにすることで克服した。現在、正社員は17人でほとんどが農家出身ではない。20代が3人、30代が6人と若手が多い。

 正社員には社会保険を完備し、他にパート15人、かんきつの収穫期には臨時で30~50人ほどを雇用する。JAからの出向者2人の人件費も負担するが、社全体、農作業受託事業単体ともに黒字を確保。効率的なスケジュール調整と適切な料金設定が重要という。

 ただ、それでも農家からの申し込みに全ては応えきれていない。作業員の確保と同時並行で、JAは就農希望の研修生の受け入れを検討するなど、担い手の育成を急ぐ。同社の作業員の中で「将来的に就農を考える人も現れ始めた」(事務局の上畑耕介さん)という。

 JAグループによる農作業受託は水稲などで多い。園芸品目を含む幅広い作業の支援では、JA全農おおいたが先行する。農作業受託会社と連携し、年間延べ1万5000人以上のアルバイト作業員が従事している。全農は同事業の全国展開を目指す。

おすすめ記事

JAの新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは