岐阜・愛知 豚コレラ風評深刻 ジビエ意気消沈 「商売できぬ」「支援待ったなし」

「ぎふジビエ」登録店舗である日本料理の「桜梅桃李」。玉越さんは県産ジビエの将来に不安を募らせる(岐阜市で)

 豚コレラの続発で、野生鳥獣の肉(ジビエ)に深刻な影響が出ている。岐阜県や愛知県では、農家らが解体処理施設を立ち上げたり、飲食店がメニューを開発したりして、ジビエによる地域振興を進めてきたが、豚コレラの影響で経営や狩猟の展望が見えない状況が続いている。ジビエ振興を担ってきた狩猟者や飲食店は、養豚農家への支援の重要性を強調した上で、「ジビエも深刻な状況に陥っている」「政府の支援は待ったなし」と訴えている。
 

処理施設は売上高半減


 イノシシの一大産地である岐阜県北部の郡上市。農家で狩猟者の坪井富男さん(70)は、9年前に個人で解体処理施設「ジビエITAYA」を立ち上げ、家族で運営を続けてきた。しかし、豚コレラの風評被害によって昨年の売り上げは平年の半分以下に激減。さらに3月末には、同市の山で死んでいたイノシシが豚コレラに感染していることが判明し、来期の狩猟は全く見通しが立てられなくなった。「小さい規模でも有害鳥獣をジビエに活用しようと頑張ってきたが、豚コレラで売り上げがほとんどなくなった。養豚農家や県が大変な中で言いにくいが、ジビエも深刻だ」と明かす。

 岐阜県と愛知県の狩猟者ら30人でつくる「AKジビエ研究会」。イノシシ肉のハム加工販売などを手掛けてきた。狩猟者でリーダーの藤本勝彦さん(57)は「商売ができず、先行きが見えない。個人では対応できないので、行政は解体処理施設にしっかり支援をしてほしい」と訴える。

 ジビエ処理施設は、規模が小さく、もうけより地域振興として、仲間で出資し合って運営する所が多い。農水省によると、豚コレラの影響でジビエ経営に被害が発生した場合、現時点で「減収など経営の補填(ほてん)をするような制度がない」という。

 内閣府食品安全委員会は、ワクチン餌を食べたイノシシの肉を人が食べても、影響がないとする評価案をまとめた。ただ、調査捕獲したイノシシは検査し、流通しない。さらに両県で野生イノシシへのワクチン餌の設置が始まり、当該地域の狩猟が規制されるため、ジビエへの影響は長引く見通しだ。
 

シシ肉打撃 経営休止も


 岐阜県では「ぎふジビエ」として、地域一体で振興を進めてきた。ジビエのコース料理を提供するなど力を入れる岐阜市の日本料理店「桜梅桃李」。豚コレラ発生を受け、仕入れ先を変更して県内のイノシシ肉を確保してきたが、限界も感じる。シェフの玉越勝利さん(51)は「これだけ広がると、ぎふジビエの展望が全く見えない。苦労している解体施設や狩猟者に国の支援がないのはおかしい」と疑問を投げ掛ける。

 郡上市で里山保全、鳥獣対策や獣肉の販売、ツアーなどを幅広く手掛ける「猪鹿庁」の興膳健太さん(36)も「風評被害は実際に起きている。国はまずはアンケートなどを通じて、豚コレラで相当影響を受けているジビエの実態を把握してほしい」と求めている。

 愛知県岡崎市でイノシシ肉の販売などを行う「三州マタギ屋」では、豚コレラが県内で発生以降、肉の注文キャンセルが相次ぎ、今後は経営休止も考える。代表の日浅一さん(73)は「山間地の活性に向けてジビエ振興を頑張っている中で豚コレラが発生し、行き詰まってしまった。このまま国の補償がなければ、若者が挑戦する芽を摘むことになる」と主張する。 
 

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