日米貿易協定交渉 食料安保 必ず守り抜け

 日米貿易協定交渉を巡る両国のつばぜり合いが激しさを増している。27日にはトランプ大統領と安倍晋三首相の首脳会談が行われ、早期合意に前のめりなトランプ氏が農畜産物の市場開放を強硬に迫る見込みだ。食と農は国の礎であり、政府は食料安全保障を守り抜くため毅然(きぜん)と対応すべきだ。

 トランプ氏は4月の日米首脳会談で、対日貿易赤字削減を強く求めた上で「日本が米国産農産品にかけている関税を取り除きたい」と語り、5月合意に期待を込めた。ハガティ米駐日大使は21日に東京都内で行った講演で、「トランプ大統領は(今後)数週間単位での合意を望んでいる」と述べ、米国が早期合意にこだわる姿勢を改めて示した。

 トランプ政権は、自動車でも揺さぶりをかけている。日本などからの自動車や部品の輸入で米国の安全保障が脅かされていると結論付けた。交渉の結果次第では、日本に対し数量制限の検討を求めてくる恐れもある。

 これに対し、安倍首相は4月の首脳会談で「過去の経済連携協定の内容が最大限」とした日米共同声明に沿った交渉とする必要性を強調した。茂木敏充経済再生担当相は、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が「日本には(数量制限を)求めない」と述べたと説明する。トランプ氏が期待する5月合意はあまりに唐突で、一方的だ。自民党の農林幹部も「そんな簡単に合意できるものではない」と憤る。

 とはいえ、トランプ政権の猛烈な攻勢の前に防戦一方となっている感は否めない。なし崩し的な合意をのまされないよう、政府は交渉の土台を再確認し、理不尽な要求をはねつける姿勢を堅持すべきだ。環太平洋連携協定(TPP)から離脱したのは米国側の都合で、オーストラリアなど加盟国との競争が厳しくなったのは、米国の自己責任である。米国の焦りに日本が付き合う必要は全くない。

 TPP交渉への参加で、政府は米韓自由貿易協定(FTA)で、対米自動車輸出で韓国に後れを取ったことなどを理由に挙げた。それにもかかわらず、トランプ政権に自動車で揺さぶりをかけられている。自動車で何を得られるのかさえ見通せない。

 TPPとの整合性をどうするのかという課題もある。牛肉のセーフガード(緊急輸入制限措置)発動基準などは米国を含めて設けられており、現在のTPPでは事実上、機能しない状態となっている。日米貿易協定交渉が仮に進展し、米国のTPP復帰が見込めない場合、発動基準などを見直す必要があるが、TPP加盟国が果たして再協議に応じるかは不透明だ。こうした課題を解決せず、日本だけが過大な負担を強いられることは絶対に避ける必要がある。

 これは一体、誰のための交渉なのか。圧力に屈して命につながる食と農を安易に差し出すようなことは決して許されない。
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは