[あんぐる] 夕映え ほれぼれ 丸山千枚田(三重県熊野市)

春の夕暮れ時、西日に照らされて輝く「丸山千枚田」。田植えで張られた水に太陽の光が反射した(三重県熊野市で)


 高低差150メートルの急斜面に広がる合計面積7・2ヘクタール、1340枚の水田。三重県熊野市紀和町にある全国有数規模の棚田「丸山千枚田」が、その美景で訪れる人を魅了している。田植えシーズンには、扇状に連なった1枚平均で0・3アールほどの小さな水田それぞれに水が入り、魚のうろこのように輝く。

 田植えの時期は5月。千枚田を見下ろす通り峠展望台から棚田を眺めると、農家が2条植えの田植え機で「あきたこまち」などを植えていた。

 この棚田は約900年前に開墾され、1601年には水田が2240枚あったとの記録も残る。だが、過疎化などで耕作放棄が進み、1990年代前半には530枚に減少。危機が迫った。

 守ったのは地元農家だった。93年に「丸山千枚田保存会」を結成。崩れた石垣を積み直すなど、再生活動を開始した。94年に紀和町(当時)が「丸山千枚田条例」を制定するなど行政も支援。一般財団法人熊野市ふるさと振興公社が耕作放棄された棚田を所有者から借り受け、農作業を保存会に委託する手法も導入した。
 
丸山千枚田保存会のメンバー(左)と田植えをするオーナー制度の参加者

 こうした取り組みで800枚を超える水田を再生。復活した絶景を見ようと、2018年度は約3万人が足を運んだ。

 棚田を守る柱の一つが、96年から続く「オーナー制度」だ。応募した家族などが、あぜ塗りから稲刈りまでを体験。全体の2割に当たる1・5ヘクタールをオーナー制度に割り当て、会費の一部を棚田の維持費に充てる。

 今年の参加数は109組。家族で楽しむ同県大台町の看護師、村瀬裕一さん(40)は「美しい棚田で都会ではできない体験ができる」と話す。

 同保存会の会長で元農家の喜田俊生さん(70)も、オーナー制度をきっかけに保存会に加わった。「この棚田にほれているから、普通の水田の何倍も手間の掛かる作業ができる。棚田の守り手が増えてほしい」と話す。(富永健太郎)

「あんぐる」の写真(全4枚)は日本農業新聞の紙面とデータベースでご覧になれます

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