協力隊・大学生・JAが応援 サンショウ産地に刺激 和歌山県有田川町

サンショウの収穫を大学生に指導する建畠さん(右)(和歌山県有田川町で)

 サンショウの生産量全国一を誇る和歌山県有田川町が、産地の維持へ奮闘している。農家の平均年齢は76歳。軽量な作物とはいえ、高齢者にとって傾斜地での栽培は重労働で「産地の維持が危うい」(同町)状況だ。現状を打破しようと、町は地域おこし協力隊を採用し、栽培の研究を進める他、大学と協力した6次産業化商品の開発も始まった。地元のJAありだも独自の金融商品を設け、PRする。あの手この手の戦略で生き残りを懸けた取り組みが動きだした。(藤田一樹)
 

農家「元気出る」

 
 県によると、同県のサンショウ生産量は約600トン(2016年産)と全国の5割以上を占める。このうち4割ほどが同町で生産される。

 同町では、山あいの清水地区で盛んに栽培され、江戸時代には栽培されていたとされる。「ぶどう山椒(さんしょう)」と呼ばれる品種で、ブドウの房のように実り、粒が大きく香りが良いのが特徴だ。

 一方、農家の高齢化が進み、18年度は約200戸と10年間で130戸ほど減少した。町は「数年後には離農がさらに増える恐れがある」と危惧。JAなどと協力し、産地維持に本腰を入れることにした。

 18年に同町初の地域おこし協力隊として、横浜市から冨岡武さん(38)が赴任した。同地区では、年金を受給しながら栽培する農家が多いため、町は「サンショウ栽培だけで生活できる農家のモデルになってもらい、新規就農を後押ししたい」と期待する。

 冨岡さんは同地区の園地を借り、14アールでサンショウを栽培。地域の農家の収穫も手伝う。今後は、他の品目の栽培やカフェ、加工所を設けるなどし、同地区のサンショウを盛り上げたい考え。「高齢の農家の園地を引き受け、面積も増やしていきたい」と意気込む。

 今年度からは、龍谷大学と協力し、商品開発にも乗り出した。現状は、ウナギのかば焼きに使う粉ざんしょうやつくだ煮などに利用される程度。スイーツや化粧品など、これまであまり活用されていなかった商品を開発し、需要を喚起することで農家の生産意欲の向上につなげる狙いだ。来年度の完成を目指しているという。

 5月には、産地の実態を学び、今後の取り組みに生かそうと同大学の学生らが同町を訪れた。地元の農家の指導の下で収穫を体験した他、JAが栽培方法や歴史などを紹介した。3年生の立岡征也さん(20)は「農家が喜んでくれるような商品を作りたい」と話す。

 約1ヘクタールで栽培する建畠操さん(77)は「傾斜地での栽培は大変だが、サンショウ栽培は生きがい。元気が出るので、今後も大学生に来てほしい」と期待を寄せる。

 17年度からは、地元の有田中央高校と連携して、栽培方法の研究も進める。接ぎ木の技術や生育特性などを今年度をめどにまとめる計画だ。

 町は「農家の栽培意欲を引き出し、産地を維持したい」と力を込める。

 サンショウを盛り上げようと、地元のJAありだも動いた。18年度から、運用益の一部をPR費用に充てる「日本一『有田の山椒』応援定期貯金」の取り扱いを始めた。抽選でサンショウ10グラムとミルが当たる他、1年間に限り年0・05%の特別金利を適用する。18年度は募集総額の10億円に3週間ほどで達するなど好評で、今年度も7月から始める予定。

 運用益を利用し、18年度は、粉ざんしょうのサンプルの他、産地の概要などをまとめたパンフレットをJR白浜駅前やJAの農産物直売所「ありだっこ」などで配り、アピールした。

 JAは「『PRしてくれてありがたい』と農家から好評。金融の面でもサンショウを応援したい」(金融企画課)と話す。

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