中山間直接支払い 実態踏まえ制度改善を

 農水省の中山間地域等直接支払制度が見直し時期を迎える。

農地や集落維持にとって不可欠な制度であり、各集落が引き続き取り組めるように現場実態を踏まえた改善をするべきだ。

 中山間地域等直接支払制度は、農地を維持するための活動を集落協定で定め、5年以上継続して取り組む農家や集落に面積に応じて交付金を支払う制度。2000年度から5年を1期としてスタートし、現在は第4期の最終年度となる。

 学識経験者で構成する農水省の第三者委員会は、農地保全への効果が高いとして制度継続を求める意見をまとめた。同省によると、60万人が参加し、66万ヘクタールを超す中山間地域の農地維持に効果を上げた。この制度によって7万5000ヘクタールもの農地減少が食い止められた。継続は当然である。

 財政当局には、「生産性の向上の効果が限定的だ」などとして制度を疑問視する声がある。だが、農地減少を食い止めることは安定した食料供給と国土保全に欠かせない課題だ。政府・与党は、制度の充実を望む現場の声を重視すべきである。

 第三者委員会の議論では数々の課題が浮き彫りになった。深刻なのは、高齢化が進み協定で示された活動を5年間続けることに不安を感じる農家が増えていることだ。途中で耕作放棄地を発生させると、交付金返還が求められることへの不安が高まっている。第4期に移行する時に対象農地が3万ヘクタールも減ったのも交付金返還を回避するための事例が多く、農水省は期中で要件を緩和した経過がある。

 5期対策の移行時に参加農家が激減し、耕作放棄地が増えるようなことはあってはならない。国民の理解を得られることを前提に、返還条件は抜本的に見直し、安心して参加できる環境を整えることが必要だ。

 20年度の概算要求で農水省は、基本額に加算する制度を大幅に見直すとともに、棚田地域振興法に基づく新たな加算制度の創設を盛り込んだ。これらの加算制度が簡単な手続きで利用できるようにして、人員が限られる市町村の事務負担を軽減する必要がある。

 農業の担い手や人員・人材が見つからない集落が増えている。農地の担い手を明確にする「人・農地プラン」作りを急ぐとともに、集落そのものを維持する対策も手厚くする必要がある。第三者委員会でも、「農業だけで解決することは困難だ」として、社会インフラを含めた地域政策の充実を促す声が出された。

 自民党は先の参院選で「地方創生」の公約に地域政策の充実を掲げた。これまでの地方創生事業は各省からの寄せ集め事業が多く、期待した効果は上がっていない。中山間地域等直接支払制度だけで農地を維持することは困難だ。国土を守る農山村で豊かな暮らしが続けられるように、総合的な地域対策を確立することが求められる。

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