獣の捕獲 裾野広げる 会員募り狩猟支援 埼玉県横瀬町のベンチャー
2019年11月08日

埼玉県横瀬町のベンチャー企業のカリラボは、猟期の始まりに合わせて15日、巻き狩りに参加したい猟師と地元猟師を結び付けるサービス「カリナビ」をスタートする。全国で初めての取り組みという。併せて、共同でわなを利用するサービス「ワナシェア」も展開する。野生鳥獣による農産物被害の軽減と、鳥獣被害や狩猟の実態を広く知ってもらうのが目的。狩猟免許を持たなくても参加できるイベントも開く。今年度は、町内で活動を実施し、今後は活動範囲を広げていくという。
地域の巻き狩りを支援する「カリナビ」は、狩猟免許所有者に狩りの開催を案内するサービスだ。ベテラン猟師と一緒に狩猟でき、初心者も参加しやすい。無線機付きナビシステムなど、必要な機材を同社が貸し出す。地域外からも参加可能で、高齢化が進む地域では人手の確保につながる。免許がない人向けに、狩りの見学も受け入れる。
共同でわなを利用する事業「ワナシェア」は、会員から出資を募ってわなを購入し、被害に悩む地域で利用するもの。わなや獲物の状況は、インターネット交流サイト(SNS)を利用し、写真や動画を共有する。わなの見回りは同社が担当するため、農家の負担は少ない。
農家の他、野生鳥獣の肉(ジビエ)の消費者、狩猟に興味がある人も会員になれる。同社は「離れた場所でも捕獲を体験できる」とし、SNS上でわなを見学するウェブ会員と、捕獲した鳥獣の解体に同席できる正会員を設ける。同社は「体験で、消費者の狩猟に対するハードルを下げていく。地域の鳥獣害対策や町おこしに貢献したい」と話す。
地域の巻き狩りを支援する「カリナビ」は、狩猟免許所有者に狩りの開催を案内するサービスだ。ベテラン猟師と一緒に狩猟でき、初心者も参加しやすい。無線機付きナビシステムなど、必要な機材を同社が貸し出す。地域外からも参加可能で、高齢化が進む地域では人手の確保につながる。免許がない人向けに、狩りの見学も受け入れる。
共同でわなを利用する事業「ワナシェア」は、会員から出資を募ってわなを購入し、被害に悩む地域で利用するもの。わなや獲物の状況は、インターネット交流サイト(SNS)を利用し、写真や動画を共有する。わなの見回りは同社が担当するため、農家の負担は少ない。
農家の他、野生鳥獣の肉(ジビエ)の消費者、狩猟に興味がある人も会員になれる。同社は「離れた場所でも捕獲を体験できる」とし、SNS上でわなを見学するウェブ会員と、捕獲した鳥獣の解体に同席できる正会員を設ける。同社は「体験で、消費者の狩猟に対するハードルを下げていく。地域の鳥獣害対策や町おこしに貢献したい」と話す。
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「帝国陸海軍は本八日未明、西太平洋においてアメリカ・イギリス軍と戦闘状態に入れり」
「帝国陸海軍は本八日未明、西太平洋においてアメリカ・イギリス軍と戦闘状態に入れり」。78年前のきょう、太平洋戦争が始まったことを国民はラジオで知った▼歌人の斎藤茂吉はこう詠んだ。「たたかいは始まりたりというこえを聞けばすなわち勝のとどろき」。国民の多くが高揚していたという▼1931年9月18日、満州事変の勃発が世論の転機となる。近現代史作家の半藤一利氏は、戦争回避へ歴史を逆転させるチャンスが「(翌)十九日夜を起点とする二十四時間にあった」、鍵は「世論がどう動くかであった」(『戦う石橋湛山』)と書く。陸軍は警戒したが、新聞が号外戦を繰り広げ「マスコミは争って世論の先取りに狂奔」▼議会も翼賛化した。38年の国家総動員法の成立には抵抗を示したが、2年後には「反軍演説」を行った斎藤隆夫を除名。「議会は議論、討論する場であり、それを失っては国家はその骨格を失ってしまう」。ノンフィクション作家の保阪正康氏が『昭和史の教訓』に記す▼安倍政権は集団的自衛権の行使を認め、それを可能とする安保法制を強行、戦争に巻き込まれるリスクが高まった。いま海上自衛隊を中東に派遣しようとしている。報道と国会。権力監視の力が弱まれば歴史は繰り返す。次も悲劇として。肝に銘じたい。
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2019年12月08日

ディスカバー農山漁村の宝 個人賞に上乗さん(石川)
政府は3日、地域の資源を活用し、活性化につなげている地区を表彰する第6回「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」のグランプリに、天然ワカメ商品などを手掛ける島根県大田市の魚の屋を選んだ。今回から選定方法を一新。地域で活躍する人材を表彰するために新設した「個人賞」には、子どもが里山の自然を体験できる環境づくりなどに携わる石川県能登町の上乗(じょうのり)秀雄さん(75)を選んだ。
団体・法人向けの表彰では、所得向上や雇用創出につなげている「ビジネス」、地域活性化に貢献する「コミュニティ」の2部門を新設。両部門からグランプリを選出した。
個人賞に選ばれた上乗さんは、故郷の里山を再開発し、子ども向けの自然体験村「ケロンの小さな村」を創設。さらに耕作放棄地を活用して生産した米を米粉にしてパンやピザに加工、販売し、大人の来場にも結び付けた。年間5000人が訪れる施設を作り上げ、地域のにぎわいづくりに貢献した点が評価された。
同日、首相官邸に選定地区を招き、グランプリなどを発表した。安倍晋三首相は「人の努力や活躍があって地域や日本が元気になる。地域だけでなく人の魅力にもスポットを当てて発信したい」、江藤拓農相は「今の農政は産業政策よりも地域政策が大事という議論が盛んにされるようになってきた。一緒に頑張っていきたい」と話した。
コミュニティ、ビジネス両部門では、準グランプリも選出した。受賞者は次の通り。
コミュニティ=北海道立遠別農業高校(北海道遠別町)▽上山市温泉クアオルト協議会(山形県上山市)
ビジネス=山上木工(北海道津別町)▽杉本製茶(静岡県島田市)
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2019年12月04日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 冬まで高品質桃 10品種で長期リレー 労力分散贈答品に
JA岡山西吉備路もも出荷組合は、10品種の桃をリレー形式で長期間出荷し、ブランドを築いている。6月中旬から12月上旬までの長期出荷は全国的に珍しい。中元や歳暮の贈答需要に対応した所得安定や、労力分散を図っている。現在は、高糖度で日持ちが良いJA独自ブランド「冬桃がたり」を出荷。シーズン最後に高品質桃を出荷し、消費を取り込み、来季の販売につなげる。
同組合は、6月中旬の極早生品種「はなよめ」を皮切りに、12月上旬まで「冬桃がたり」を出荷する。
近年、力を入れているのが、シーズン終盤の「冬桃がたり」の生産、販売だ。極晩生種で、1玉約250グラム、平均糖度は15以上。品質や日持ちの良さから、歳暮やクリスマスの贈答需要が強い。卸売価格は、夏に出荷する主力「清水白桃」の2倍以上。今季は11月20日から出荷を始め、12月10日ごろまでを計画する。
「冬桃がたり」は2011年に栽培を始め、組合員94人のうち今は35人が1ヘクタールで生産している。生産量は増え、19年産は前年比4割増の3・5トン、販売額は5割増の1000万円を計画する。
栽培管理は4~11月まで8カ月を要する。一般的な剪定(せんてい)は夏と冬の2回だが、「冬桃がたり」は、夏も果実が樹上にあるため、冬の1回で作業を終わらせる必要がある。剪定場所の判断が重要で、組合内で研究を重ねている。収穫から出荷までは、室温7度に設定したJAの予冷庫で貯蔵。温度変化を抑え、品質を保持する。
1ヘクタールで10品種を栽培する組合長の板敷隆史さん(46)は「労力が分散され、安定収入につながる。増産して需要に応えたい」と意気込む。
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2019年12月06日

肉持ち込み厳罰化へ 次期国会提出めざす 家伝法改正で農水省検討会
農水省の有識者検討会が6日、家畜伝染病予防法(家伝法)改正の提言(中間取りまとめ)を公表した。入国者が肉製品を持ち込んだ場合の罰則強化の他、アフリカ豚コレラ(ASF)の発生時に周辺農場を含む予防的殺処分を可能にすること、疾病発生時の国や都道府県の指導権限強化を盛り込んだ。これを踏まえ、同省は法案作成を進め、来年の通常国会に提出を目指す。
会議では、①輸出入検疫②野生動物対策③疾病のまん延防止措置④飼養衛生管理──の4テーマごとに提言を示した。
輸出入検疫では、訪日客が急増する中で肉や肉製品の持ち込みが増えているとして、厳罰化の重要性を強調。現状では3年以下の懲役または100万円以下の罰金としている罰則を引き上げることを盛り込んだ。家畜防疫員には、肉が入っている疑いのある荷物を開ける権限が必要とした。
野生動物対策には、豚コレラ(CSF)で野生イノシシがウイルスを拡散した経緯を踏まえ、経口ワクチンを法律に位置付けるべきだと明示。疾病のまん延防止ではワクチンがないアフリカ豚コレラの侵入時に、発生周辺農場の予防的殺処分をすべきだとした。
飼養衛生管理については農場へ責任者を設置し、基準や都道府県の命令に違反する場合は厳罰化を提言。都道府県や国の責任を明確化し、緊急時に迅速な対応が行われるよう求めた。
今回の提言をまとめたのは「我が国の家畜防疫のあり方についての検討会」。10月下旬から4回にわたり議論した。
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2019年12月07日

機能性に魅力 実需が国産要望 もち麦1年で3・5倍
もち性大麦の2019年産生産量が8000トンを超え、前年産に比べ3・5倍と急増した。健康食品としての認知度が高く、国産志向もあり市場が拡大。機能性成分が多く、各地の気候に適した新品種の導入が進み、実需の要望で産地が形成されつつある。急増してもなお需要が供給を上回っている状況で、国産の増産への期待が高まっている。
19年8000トン超 需要伸び品種充実 産地追い風
農水省がまとめた大麦の農産物検査結果(10月末時点)によると、もち麦の検査数量は8581トン、18年産実績を6000トン上回った。
県別で最も多いのは福井県の2357トン。機能性成分が多い新品種「はねうまもち」を導入し、約800ヘクタールを作付けた。4JAが取り組み、大手精麦メーカーに仕向ける。「メーカーの強い要望に応じ、従来の大麦品種を転換した」とJA福井県経済連。交雑や異品種の混入を防ぐため、産地を限定する。
次いで増やしたのが福岡県。九州が栽培適地の「くすもち二条」を前年の4倍、1243トン生産する。うち、JA全農ふくれんは県内の精麦メーカーの求めで試験的に約70ヘクタール栽培した。20年産はこれを上回る注文があるが、「他の麦類の要望もあり、そうは広げられない」(全農ふくれん)と悩ましい現実もある。
宮城県はもち麦「ホワイトファイバー」を前年の11トンから764トンに拡大。実需の関心が高く、県は種子の生産体制を整え一般栽培に踏み切った。今後も増やす計画だ。
もち麦の普及は、県が奨励品種にして、産地品種銘柄として流通させることが欠かせない。産地品種銘柄の採用は、この3年間で6県から18道県に拡大した。大半が、健康機能性が多い品種への転換だ。ビール麦産地の栃木県は、ビール麦から県育成品種「もち絹香」に替えた。「健康志向で今後の需要が見込まれるため」(生産振興課)だ。
もち麦品種は、3年前の5品種から8品種に増えた。国内最大面積となった「はねうまもち」は農研機構が開発、17年に品種登録を出願した。寒冷地向きで、新潟県、北海道でも展開中。暖地向けは「くすもち二条」「ダイシモチ」がある。各地の気候に適した品種開発も、産地化を後押ししている。
農林水産政策研究所企画広報室の吉田行郷室長は「需要に対応するには産地がまとまって品種を統一したり、十分な生産量を確保したりする必要がある」と指摘する。
もち麦は食物繊維の一種、βグルカンを豊富に含む。腸内環境改善や血中コレステロール低減に効果があるとされる。国内流通量に占める国産の割合は1割に満たない。
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2019年12月08日
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みんな二度見!? オート三輪 走る広告塔 茨城県常陸太田市の椎名理さん
茨城県常陸太田市で「てるちゃんぶどう園」を営む椎名理さん(59)の愛車は、昔懐かしいマツダのオート三輪。手直ししてピカピカに磨き上げ、現役で農作業に使っている。車体にはぶどう園のPRロゴを入れ、走る広告塔としても役立てている。
椎名さんは1・3ヘクタールの園で「巨峰」や「常陸青龍」「シャインマスカット」を栽培するブドウ農家。若い時から車好きで20代前半にMG・ミジェットを手に入れて古い車の面白さに目覚め、今では倉庫にオールドカー10台ほどを所有する。
オート三輪を手に入れたのは10年ほど前。県内の倉庫に眠るオート三輪があると知人に紹介され見に行くと、珍しいマツダのT1500だった。1971年製で比較的状態も良く、トラックなので農業に使えると思い、譲ってもらった。
手を入れて乗り始めたが、古い車両のため故障はつきもの。部品もなく親しい修理工場に頼んで直してもらっている。維持費は掛かるが苦にはならない。運転していると、対向車から注目され、工事の人が手を休めて見入ることも度々。駐車していると、懐かしがって話しかけてくる中高年も多いという。
そこで、「てるちゃんぶどう園」のロゴを入れた。それからはさらに目立つようになり、ブドウ園の名も知られるようになったという。今は「おいしいよ常陸太田のぶどう」や「だいすき常陸太田」のロゴも入れ、地域のPRにも一役買う。
椎名さんは「道の駅にわざと寄ったりして楽しんでいる。大切に乗り続けていきたい」と話している。
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2019年12月10日
気候非常事態 長野県が宣言 都道府県で初
長野県は6日、世界的な気候変動への危機感と地球温暖化対策への決意を示す「気候非常事態宣言」を都道府県として初めて発表した。2050年までに県内の二酸化炭素(CO2)排出量を実質的にゼロにすることを目指す。
県議会が同日、台風19号被害やスペインでの国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)開催などを背景に、宣言を出すよう県に求める決議を全会一致で採択。これを受けて県が宣言を発表した。宣言では、国内で頻発する気象災害と世界的な異常気象、気候変動に触れ、「この非常事態を座視すれば、未来を担う世代に持続可能な社会を引き継ぐことはできない」と強い危機感を示した。
県は、太陽光発電や小水力発電といった再生可能エネルギーの拡大、省エネ対策の強化などで、CO2排出量の実質ゼロを実現したい考え。阿部守一知事は会見で「広く県民一丸となって気候変動対策を進めていきたい」と強調した。インターネット中継で阿部知事と会談した小泉進次郎環境相は「台風で大きな被害を受けた長野県が宣言したことは象徴的。来週参加するCOP25で発信したい」とエールを送った。
宣言は、地球温暖化対策を加速させようと欧米諸国を中心に広がっている。欧州連合(EU)の欧州議会が11月に採択した他、国内では長崎県壱岐市、長野県白馬村などが宣言している。
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2019年12月07日

ビワ大産地 台風15号3カ月 復旧「素人には無理」 倒木、落石、通行止めもまだ… 千葉県南房総市
台風15号の被災から9日で3カ月。全国屈指のビワ産地、千葉県南房総市では農道や園地を覆った倒木、落石が片付けられず復旧が思うように進んでいない。急斜面の園地も多く撤去には危険が伴うため「素人には不可能だ」と話す農家もいて、行政などの支援を強く求めている。(関山大樹)
行政支援を切望
千葉県は、産出額8億円(2017年度)を誇る全国2位のビワ産地。だが9月の台風15号の強風で、木が倒れるなどの被害が出た。県によると、20年の見込み被害額は5億9000万円に及ぶ。
同市の沿岸部にある南無谷地区は、地域の山の多くがビワ山だという。「園地を見ると心が折れる」。ビワ農家の木村庸一さん(58)が落ち込んだ表情で話す。60アールのビワ園は、来シーズン半分以上が収穫できなくなった。
山中にあるビワ園は曽祖父の代から守り、かつては皇室に献上するビワも生産した。ビワは花や幼果が寒さの影響を受けやすいため、冬に風が吹いて霜が降りにくく、寒さが滞らない山の急斜面で栽培される。
台風の強風で、山中のビワの半分以上が折れたり、根こそぎ倒れたりした。急斜面のため現在も、石や折れた木が落ちてくる可能性がある危険な状態だ。
木村さんは、チェーンソーで一部倒木の除去や倒れた木を元に戻すなど尽力したが、19、21号と続いた台風で、修復しても元に戻る“いたちごっこ”の状態が続いた。
険しいビワ山を通る農道も、50年ほど前から農家らが協力して作り、コンクリートで舗装し管理してきた。台風直後は、強風や大雨による倒木や落石で通れなくなり、今も山奥に行くにつれ倒木が手つかずの場所もあり、一部のビワ園は立ち入れない。
木村さんは「山中での作業なので撤去は危険が伴う。安易に除去できない木もあり、全ての倒木や落石の除去は素人には不可能だ」と訴え、倒木や落石の撤去などへの行政支援を訴える。
房州枇杷(びわ)組合連合会が、66人の組合員に行った台風被害調査によると、被害額は10月末時点で1億648万円、来年の売り上げは3億円減少する見込みとなった。連合会によると、実際の被害金額はさらに多い見通しだ。
連合会会長で、南房総市のビワ農家、安藤正則さん(63)も園地半壊の被害を受けた。安藤さんは「このままの状況だと復興は1、2年じゃ到底終わらない」と危機感を募らせている。
ビワは苗木を植えてから収穫まで、5年ほどかかる。園地の再建について高齢農家ほど意欲に陰りがあるとし、「気持ちの面で立ち直れない人もいる。園内の倒木撤去や整理の他、所得補填(ほてん)などさらなる支援が必要だ」と要望する。
自身もビワ農家であるJA安房の笹子敏彦常務も「まだ山中に入れないビワ農家も少なくない。特に雨が降った後などは危険度が増す」と話し、復旧への道が険しいことを強調する。
15、19、21号 38都府県被害 農林水3900億円
農水省は6日までに、台風15号の農林水産関係の最新被害額が5日午後4時時点で815億円に上ると発表した。19・21号の被害額(3082億円、2日午後1時時点)と合わせると、総額3897億円に上る。
15、19、21号の被害は38都府県が報告。被害額は、2018年の西日本豪雨の被害額3409億円を超えた。
内訳は農地の損壊が2万6273カ所で被害額746億6000万円。用水路や農道といった農業用施設などが、2万4130カ所で被害額1226億4000万円。作物被害は3万6459ヘクタール、被害総額265億3000万円。農業用ハウスなどの被害は、2万9336件で被害額503億1000万円だった。同省によると、今後も被害額は増える見込み。
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2019年12月07日

地元でもやりたいことできる “Uターン組”食で催し 新潟県糸魚川市
新潟県糸魚川市にUターンした若者らが、「つなぐKitchen Project(キッチンプロジェクト)」のメンバーとして、食を題材にしたイベントを企画・開催している。プロジェクトを通して、糸魚川を離れた若い世代に「糸魚川でも自分たちのやりたいことができる」ということを伝えていく。
メンバーは市役所職員の杉本晴一さん(26)、イタリアンシェフの渡辺光実さん(28)、米や果実などを栽培する生産者の横井藍さん(28)と、JAひすい営農指導員の小野岬さん(24)。
市の広報紙の取材で若手Uターン経験者として杉本さん、渡辺さん、横井さんが集まり、3人で意見を交わす中で「それぞれのやりたいことが3人ならできる」と意気投合し活動を始めた。
その後、女子メンバーが欲しいという横井さんの希望で、巡回で来ていたJAの小野さんが仲間に加わった。プロジェクトチームの名前には「糸魚川のいろいろなところで人・物・事をキッチンでつなぐ」という願いを込めた。
職種の異なるメンバーが、それぞれの得意分野を生かしながら活動。7月には「ハヤカワ夏のピザまつり」を開いた。親子連れ30人が参加し、夏野菜をトッピングしてピザを作った。11月には「ハヤカワ秋のイモまつり」を開いて親子20人が焼き芋などを楽しんだ。
補助金を頼りにせず、全てを参加費で賄えるよう工夫して企画・運営している。メンバーは7月のイベントに合わせて動画投稿サイト「ユーチューブ」を参考にピザ窯を手作りし、11月のイベントでも大活躍だった。
横井さんは「畑で作られた野菜を味わって土に触れる感動を子どもたちに伝え、食を通して農を知ってもらえるような活動をしたい」と意欲を見せた。今後は小学校で取り組む「キャリア教育」などを通して農業の現場と教育の現場をつなぐとともに、イベント依頼などに積極的に対応していく。
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2019年12月07日

ハトムギで健康長寿に “お墨付き”チョコ商品化 知名度アップ狙う 栃木県小山市
栃木県小山市で、特産のハトムギを使ったチョコレートが開発され、11月から市内の「道の駅思川」で販売が始まった。生活習慣病の予防など、市はハトムギの摂取によって市民の健康長寿を目指しており、新たなスイーツで消費拡大を目指す。ハトムギの生産量も増えていて、農家は「栽培の追い風になる」と期待する。(中村元則)
全国ハトムギ生産技術協議会によると、2018年の全国のハトムギの生産面積は1122ヘクタール、生産量は1541トン。茶などで使われ、生産面積は年々、増加傾向にあるという。同市は水田転作の一環で、1991年に農家2戸で栽培がスタート。18年時点で、約10戸が作付面積80ヘクタールで188トンを生産し、国内有数の産地だという。
同市のハトムギは、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で「次世代農林水産業創造技術」の開発研究に選定された。そこで市などは18年、ハトムギの摂取が人間の体に与える影響を調べる実証実験を行った。
20~64歳の健康な市民114人にハトムギ茶や麦茶を500ミリリットル、8週間、毎日飲んでもらい血液や尿を検査した。その結果「ハトムギには動脈硬化などの生活習慣病の予防効果が示唆された」(市農政課)という。
市はハトムギの摂取を進めようと、新商品の開発を促す「アグリビジネス創出事業」を実施。ハトムギのチョコレートは、食品加工品を販売する、ラモニーヘルス(同市)が同事業を活用して、半年前から商品開発を手掛けた。
同社の篠原裕枝代表は「ハトムギを高齢者も若い人も、誰もが食べやすいものにしようと考えた時、チョコレートを思い付いた」と話す。
同社は11月中旬の2日間、東京都墨田区の商業施設「東京ソラマチ」の中にある栃木県のアンテナショップ「とちまるショップ」で試験販売をした。その後、11月下旬から道の駅思川で本格販売を始めた。
商品は「はとむぎチョコ マンディアン」と名付けられ、ハトムギを3%配合したノンシュガーのチョコレート生地に、無添加ドライフルーツを載せている。チョコレートの優しい味わいとともに、かめばかむほどハトムギの香ばしい香りが広がるのが特徴だ。
市農政課は「来年2月のバレンタインデーに健康食品として参戦する」と強調。チョコに期待を掛けている。他にもハトムギを使った商品は、ふりかけなども開発され、多様化している。
相次ぐ商品化に栽培農家も期待。ハトムギを4ヘクタールで栽培する小山はとむぎ生産組合の福田浩一組合長は「小山のハトムギの知名度が増す良い機会になる。これを契機に新規就農者を増やし、生産量を増やしたい」と意気込む。
「はとむぎチョコ マンディアン」は、ビターとミルクの2種類あり、どちらも1箱3個入り(100グラム)で1500円。
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2019年12月06日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 農業も登山も全力投球 倉敷市の小原正義さん
岡山県倉敷市の小原正義さん(40)は、米の生産と餅加工で年間2300万円を売り上げるコアラファームの代表と、登山ガイドの二足のわらじを履く。今秋には、県内の農業振興や農村の活性化に貢献する青年農業者に贈られる「矢野賞」を受賞した。
実家は水稲農家で農業や自然への関心が高く、大学卒業後は8年間、長野県の奥穂高岳の山小屋で働いた。「農業だけでは生活ができないと考え山登りも仕事につなげようと思った」と小原さん。2010年に日本山岳ガイド協会の登山ガイドの資格を取得した。
同じ年に親元就農した。米で収益を上げるビジネスモデルを模索し、生産・販売から餅加工を一体的に行う経営に行き着いた。餅は年間15・9トンを製造。自家栽培の特別栽培米「ヒヨクモチ」を使って、「倉敷・八十八俵堂」の独自ブランドで販売している。
JA岡山西直売所の出荷仲間の紹介などで地道に顧客を増やし、倉敷市のふるさと納税返礼品に採用されている他、JA直売所や県内スーパー、インターネットなど多方面に販路を拡大。売り上げの9割を占める経営の柱になった。
小原さんは「登山も農業も自給自足が原則。通じるところが多い」と話す。山小屋勤務での接客や大工仕事、道路の舗装、水道工事などの経験が、農業経営に役立っているという。
経営が安定した15年からは、農閑期の7、8月に北アルプスや大山などで月10日程度の山岳ガイドも務める。19年は大山ガイドクラブ代表に就任し、山小屋の経営を始めた。
「日常を幸せにする農業、非日常を楽しむ登山」と、どちらも全力投球する。「20代は山、30代は農業に打ち込み、土台を作れたと思う。農業者、登山家として一層レベルアップしたい」と話し、40代を楽しむ。
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2019年12月05日

行動起こす一歩大切 酪農女性340人経営ヒント学び合う 北海道でサミットファイナル
全国から酪農に携わる女性が集い、経営や技術などを学ぶ「酪農女性サミット」が3日、北海道帯広市で始まった。酪農女性ら340人が参加し行動を起こすことの大切さや、今後のあるべき姿などを話し合いながら交流を深めた。4日まで開く。
サミットは2017年から北海道で年1回開かれ、3回目の今年が最後の開催。酪農家の女性が互いに学び語り合い、女性も楽しく仕事ができる酪農を目指そうと、酪農家の女性自らが企画・運営してきた。
「酪農女性のモチベーションUP!講座」と題したトークセッションでは、経営の最前線で活躍する女性たちが登壇した。
オランダで酪農家と結婚したニューランド伏木亜輝さん(43)は、酪農経営は義父と夫が行い「牧場に自分の居場所がない」と悩んでいたことを話した。自分のやりたいことは何かを考えた結果、日本からの研修を受け入れる事業を始めたことを紹介。「少しでも考えたらアクションを起こしてみて」と会場に呼び掛けた。
北海道大樹町で経産牛600頭を飼育する「カネソファーム」の金曽千春代表は、15歳で酪農家の実家を継ぐ決意をした生い立ちを披露した。経営者として先代からの思いを受け継ぎ、次の世代につなぐことで「酪農の未来は明るい」と語った。
酪農以外では、神奈川県藤沢市で野菜を栽培する「えと菜園」の小島希世子代表が、ホームレスや引きこもりの人に農作業を体験してもらい、農家への就職などにつなげる取り組みを紹介した。
「後継者不足に悩む農家と、働きたくても働けない人を結び付けたいとの思いから始めた」と話した。「農業は裾野が広い。適材適所を見つければ、人の才能を伸ばせる産業だ」と農業の可能性を訴えた。
サミットはJA全農、日本コカ・コーラが共催。中央畜産会が後援した。4日は帯広畜産大学の仙北谷康教授が酪農所得や共済について話す他、参加者同士がモチベーションを保つ工夫を話し合う。
成果 農場で実践を 参加者3倍に、注目実感
<初回からの実行委員長 砂子田円佳さん>
北海道内の酪農女性が企画・運営し、全国から酪農に携わる女性らが年1回集う「酪農女性サミット」。これまで全3回の実行委員長を務めてきた広尾町の酪農家・砂子田円佳さん(36)にサミットを始めた経緯や思い、成果などを聞いた。
──開催したきっかけを教えてください。
女性酪農家が話すパネル討論にパネリストとして参加した時、参加者から「これだけ頑張っている人がいるなら酪農女性が集うサミットを開いたらどうか」という意見が出て、酪農家ら6人で企画した。互いに見ず知らずだったが、楽しく酪農をするには勉強も大事、女性の酪農にも勉強する場があればなど、共通した課題や方向性を持っていてすぐに意気投合した。
──女性だけにした理由は何ですか。
酪農関係のセミナーは多いが、参加する女性は少なく質問していいのかと遠慮しがち。「女性」と銘打つことで来やすい人もいる。
私も20代で実家から独立した時、「お前なんか嫁に行ってすぐにやめるだろう」と言われ悔しい思いをした。頑張って働き30代になり、女性らしく生きることや理解してもらうことの大切さを感じた。それにはもっと力を付けないといけない。言われたことだけしてもんもんとするのでなく、勉強して提案することで違う世界が見えてくる。
──3年間、サミットを開いた手応えは。
初回に比べ参加者が3倍ほどに伸びた。当初は「やって意味があるのか」とも言われてきたが、男性の見る目が変わった。開催案内を広報誌や店舗に張って紹介してくれるJAもあった。3年の積み重ねで多くの人に注目されるようになったと実感している。大会実行委員への講演の依頼も増えている。私たちの体験を通じ、次に続く人たちが前に出やすくなってほしい。
──今回で最後の開催としています。
「ファイナル」としたが「これで終わり、解散」ではなく、実行委員が各地で小さくても動いていきたい。参加者も各地域に帰って動き始めてほしいし、その手伝いができたらうれしい。(聞き手・洲見菜種)
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2019年12月04日

冬風揺れる柿すだれ JAふくしま未来伊達地区
全国有数のあんぽ柿産地、福島県のJAふくしま未来伊達地区管内で、皮をむいた柿を干し場につるす加工作業が最盛期を迎えている。きれいなオレンジ色の柿が次々とつるされる光景は「柿色のカーテン」と呼ばれ、この時期の風物詩だ。
原料の「蜂屋」や「平核無」の渋柿から乾燥によって独特の深い味わいと甘味を生み出す地区特産のあんぽ柿。
同地区では、11月上旬から原料となる柿の収穫作業が始まり、中旬からは、連通しと呼ばれる柿の皮むきや縄に柿を取り付ける作業、干し場につるす作業など、加工作業が本格化する。
JA伊達地区あんぽ柿生産部会長の佐藤孝一さん方では、11月15日から加工作業を開始。約8トンを加工する。1本の縄に10個ほど付けられた柿は、手作業で次々と専用の干し場につるされ、約40日間自然乾燥し、あんぽ柿として出荷される。「昼夜の寒暖の差や乾燥に適したこの産地特有の自然環境が、味わい深い極上のあんぽ柿を育む」と佐藤部会長は話す。
JAのあんぽ柿は、主に京浜地方を中心に各地の市場などへ出荷される。現在、「平核無」が出荷最盛期を迎え、生産量の9割以上を占める「蜂屋」は、12月上旬から本格的な出荷が始まり、翌年の3月下旬まで続く。
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2019年12月04日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 豪雨被災から1年5カ月 営農再開へ一歩 果樹産地の総社市
2018年7月の西日本豪雨でブドウ園などの農地や農業用施設に甚大な被害を受けた果樹産地・JA岡山西管内の岡山県総社市福谷地区。6日で1年5カ月となる中、営農再開の動きが始まった。県と市の連携で氾濫した高梁川の堤防を整備し、浸水被害を受けた約3ヘクタールの園地をかさ上げする。100年続く農業に向け、地域の話し合いが進み、近く工事が始まる。JAは営農や融資相談で復興を後押しする。異常気象のリスクが高まる中、災害に強い地域農業のモデルとして注目が集まる。(鈴木薫子)
次代に継に向け 堤防整備、園地かさ上げ
同地区は県内有数のブドウの早期加温栽培産地。しかし、園地には、ビニールが剥がれ、骨組みがあらわのハウスや、川から流れてきた大きな岩が目立つ。堤防の決壊で農地の浸水や施設が倒壊。今も園地は豪雨被害発生時のままだ。
県は同地区で約2キロにわたる高梁川の堤防整備に乗り出した。道路から1、2メートル上げる計画で下流側から用地取得を進めている。同地区の他、高梁川に隣接する4地区で計約5キロの堤防を整備。近く工事に着手し、22年度内の完了を目指す。
園地整備は同市が担当する。堤防から下の園地を3、4メートルかさ上げし、堤防と同じ高さにする方針。整備範囲は上流約600メートルで園地は約3ヘクタール。河川などの残土で埋め立て、栽培用に上層60センチはきれいな土で埋め立てを計画する。復旧には、JA担当者も営農再開に向け密に情報交換をする。
ブドウや桃の生産者22人でつくる福谷果樹組合は、被災した18年産売上高は前年産比2割減の6500万円。19年産は上向いたが、被災前水準には達していない。
ブドウ「マスカット・オブ・アレキサンドリア」などを栽培する同組合の温室ブドウ部会の仮谷昌典部会長は、経営面積の半分の10アールでハウス3棟が倒壊。被害を免れたハウスとの距離は30メートル。半分の土地で収益を高めようと栽培に励む。54歳の仮谷部会長は「80代まで農業を続けたい。今が踏ん張り時。復旧に時間がかかるのは覚悟の上で、次世代のために災害に強い農業を復活させたい」と強調する。
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2019年12月03日

これユズ!? 広島の個性派 初出荷
人の顔ほどのジャンボサイズかんきつ「獅子柚子(ししゆず)」の出荷が始まった。JA広島ゆたか上島選果場管内で栽培される特産で、ブンタンの一種とされる大型の香酸かんきつ。
直径20センチを超える黄金色の果実は、表面がボコボコと波打っており、獅子を連想させる迫力ある外観から別名「鬼柚(おにゆ)」とも呼ばれ、魔よけや縁起物として珍重される。
広島市中央卸売市場ではこのほど初入荷。広島市のスーパーやデパートでは冬至に向けたディスプレー商材として売場に飾る他、温泉施設や外食業界、観光施設からの引き合いもある。
広印広島青果の小山隆之副部長は「存在感抜群の外観に加え、季節感やストーリー性があり注目を集めている。地元の個性派商品として紹介したい」と話す。
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2019年12月03日