20年度畜酪対策 中小支援で基盤維持を

 2020年度畜産・酪農政策価格、関連対策で、政府・与党の本格論議が今週始まる。最大の焦点は生産基盤維持・強化だ。特に都府県の中小規模の家族経営を含め生産の底上げ策が問われる。今後10年間の展望を示す酪農肉用牛近代化方針(酪肉近)とも密接に絡むだけに、生産意欲を促す価格、政策決定が必要だ。

 まず、論議すべきは、改正畜産経営安定法の下で酪農家の生乳出荷を巡り「いいとこ取り」が横行し、飲用向けが増え用途別需給取引に支障が出かねない現状の是正だ。法改正に伴い、指定生乳生産者団体の一元集荷体制が廃止された。結果的に酪農家全体の所得が減る事態になれば、「何のための法改正だったのか」との疑問がさらに大きくなる。農水省は、生産者の公平性確保を前提に適正な制度運用と指導を徹底すべきだ。

 今回の最大の焦点は、生産基盤の弱体化を食い止め、どう経営を立て直すか。これには大規模経営ばかりでなく、家族農業が中心の都府県の中小経営への支援拡充も欠かせない。

 問われるのは、従来にも増して将来の展望が持てる政策価格と関連対策だ。日米貿易協定承認案の国会審議も大詰めを迎える中で、相次ぐ大型自由貿易協定に生産者の将来の不安も募る。今回の畜酪政策価格、関連対策は、こうした自由化進展への対応や酪肉近論議の方向性を示す“発射台”の意味合いも持つ。

 特に酪肉近では、国産乳製品の需要の強さを受け、現行約730万トンの1割増、最大800万トンを目指すべきだ、との具体的な提案も出ている。生産者団体と乳業メーカーなどで構成するJミルクの将来ビジョンでも、10年後の生乳生産を775万~800万トンとしている。大前提は、生乳全体の55%を占める北海道の増産傾向が続き、都府県の減産に歯止めがかかることだ。チーズ、液状乳製品の需要増を想定している。同時に酪農所得対策の議論も必要だ。

 畜酪農家戸数の減少が続く中で、規模拡大などを支援する畜産クラスター事業では一層柔軟な対応が求められる。中小経営を念頭に具体的な条件緩和などが必要だ。高齢者から若手への円滑な経営継承も大切だ。放置すれば離農につながりかねない畜産環境対策や、ふん尿処理施設の更新支援も欠かせない。

 政策価格では、加工原料乳生産者補給金と集送乳調整金が大きな課題だ。配合飼料価格の値下がりなどから補給金単価算定では下げ要素も多いとされるが、生産意欲の観点から特段の配慮が必要だ。決定水準によっては20年度飲用乳価交渉への悪影響も懸念される。また、指定団体を対象とした集送乳調整金には物流コスト高を反映すべきだ。同調整金の引き上げは酪農家の結集を促し、用途別需給調整にも結び付く。

 政府・与党の折衝は、農業団体の意向を十分踏まえ、酪肉近論議など今後の展望を開く決着にすべきだ。

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