1本の太く真っすぐな道が延びる。日本画家東山魁夷(かいい)の代表作『道』の前では、誰もが自分の人生を思う

 1本の太く真っすぐな道が延びる。日本画家東山魁夷(かいい)の代表作『道』の前では、誰もが自分の人生を思う▼行く末にも来し方にも見え、絶望と希望とが織り交ざる。どちらに見えるかは、見る人の置かれた立場や心境によるのかもしれない。画家自身が、「遍歴の果てでもあり、新しく始まる道でもあった」と言い残している。青森県八戸市の種差(たねさし)海岸の牧場につながる通りは、人生行路として描かれた▼それはやや右上がりに画面の外に消えていく。美術史家の尾崎正明さんは「明らかにこれから未来へ進んでいこうとする、新しい旅立ちへの画家の意志を表現しているように見える」と、『現代の日本画 東山魁夷』(学研)に書いた。明るい未来への行路であってほしいとの思いからだろうか▼幼少の頃から交通の媒介となる「道」に興味を寄せられたのが天皇陛下である。「私にとって、道はいわば未知の世界と自分とを結びつける貴重な役割を担っていたといえよう」。若い時に書かれた『テムズとともに』(学習院教養新書)にある。自由に外に出られない立場ならではの実感であったろう▼きょうは令和初の天皇誕生日。還暦のお祝いと重なる。歩まれるのは平和につながる「道」であることをお祈りする。これまでも、これからも。
 

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