農村の強さ、農業の脆さ 都市住民も自給力を 農業ジャーナリスト 小谷あゆみ氏

 いまだ感染者ゼロを貫く岩手県は、SNSで「田舎センバツ優勝」と揶揄(やゆ)されましたが、なるほど言い得て妙で、人の少ない田舎は、いまや安全で安心な地域の称号になりました。連休を前に、都市住民による「疎開」を避けたい山形県は、高速道路など県境での検温を始め、新潟県燕市では、都内に進学した学生に帰省の自粛を求める代わりに「コシヒカリ」5キロを送る制度で、名をはせました。

 他にも感染者の少ない県を見ていくと、いずれも都道府県別食料自給率の上位にあり、有事に強い地域と脆弱(ぜいじゃく)な地域が表れつつあります。47都道府県、1724市町村がわがまち、わがむらを守るため、何もかも政府に、中央任せにしない、自力、自立という地方の復権は、数少ないコロナの恩恵で、農村や農的暮らしの強さが発揮されました。ただ残念ながら市場を、労働力を、外部依存・一極集中させがちな産業としての農業は、困窮しています。

 そうした一方で、地産地消や直売所が見直され、中でも、スマホ一つで生産者と消費者を直接つなぐ産直サービス「ポケットマルシェ」は、生産者の応援で3月以降、売り上げを10倍に伸ばし、登録生産者を応援する呼び掛けが功を奏し、登録する生産者はこの2カ月で400人増の2300人と、困る生産者と買い物難民、双方の駆け込み寺になっています。「家での調理は、時短から時長へ、文化的な食事にシフトし、何より消費者は、生産者とつながることに魅力を感じ始めています」と、代表の高橋博之さんは話します。

 このつながりは、応援消費よりもう一歩親密なお裾分けや縁故米に近い関係です。人々が求めていたのは、自動化やロボット化より、個人が楽しめるオンラインの八百屋だったのです。受け取るのは物だけではなく、友情や対話です。いざというとき、消費者と直に対話できれば、知恵や心の支えとなります。それを担うのがJAならどんなに喜ばれるでしょう。

 わが家にも配給マスクが届きました。どうせなら、野菜や花の種でも付けて、自分を守る、食を守るステイホームガーデンと自給力を奨励してはどうでしょう。命を育む生産的な活動は、この閉塞(へいそく)した社会に自己肯定感をもたらします。人任せにしない、自分でつくる。農の存在意義を分かち合うことは、農家を強くし、都市をも強くします。どちらかだけではありません。手を取り合い、心を通わせることが互いの生き残り策になるのです。

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