登ったことのない山の頂を踏破するのは、山登りの醍醐味である

 登ったことのない山の頂を踏破するのは、山登りの醍醐味(だいごみ)である▼希代の人類学者今西錦司も、「初登山」にこだわった。単に忍耐と体力とによって登れるような山では満足できない。「人類を寄せつけなかった山、その山へ登るときこそわれわれの戦いであり、その頂きまで登ったときこそまったき勝利である」。随筆集『山岳省察』で書いている。その精神が、独自の進化論へと導いたのか▼生涯に登頂したのは1552座。岐阜大学学長を承諾した時の言い分が憎い。「そこに山があるから私は岐阜大学に行く」(『私の履歴書』今西錦司全集)。大学の背後には美濃の山々がそびえる。エベレストを目指して聞かれ、「そこにあるからだ」と答えた、英の登山家ジョージ・マロリーの言葉を思わせる▼きょうは「山の日」。日本列島には1万6700ほどが鎮座する。山々を覆う森林は、国土の保全、水源の涵養(かんよう)、地球温暖化の防止、木材生産と、多面的な機能を持つ。その森林が刈り取りの時期を迎えた。忘れてならないのは、「伐(き)って、使って、植える」。持続可能な林業である。切り尽くして“はげ山”にしては、後世に申し開きのしようもない▼森林が育む命の豊かさを感じながらの登山は、「初」とは別の味わいがある。

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