ポスト安倍 「大乱世」菅氏が浮上 ノンフィクション作家 大下英治

大下英治氏

 かつて田中角栄元首相は、自分の派閥の有望な若手の将来についてこう語ったことがある。

 「平時の羽田(孜)、乱世の小沢(一郎)、大乱世の梶山(静六)」

 その伝によれば、ポスト安倍について、私はこう見ている。

 「平時の岸田(文雄)、乱世の石破(茂)、大乱世の菅(義偉)」

 岸田は、羽田に似ている。実に温厚で、周りの人で彼の人柄を悪く言う人はほとんどいない。羽田もそうだった。敵をつくらず、バランスも取れていた。ただし、羽田は、乱世の時期に総理となり、2カ月という短命に終わってしまった。
 

「石破だけは・・・」


 前回、宏池会の前会長で岸田の後見人の古賀誠が、実に鋭いことを指摘したと書いた。

 「中曽根(康弘)長期政権の後は、短命政権が続き、ついに細川(護熙)連立政権に政権を奪われてしまった。小泉(純一郎)長期政権の後も、ついには、野党の鳩山(由紀夫)政権に取って代わられてしまった。より長期政権となった第2次安倍政権の後に、仮に岸田さんがポスト安倍の総理になったとしても、問題山積の状況で引き受けるのは相当大変なんじゃないか」

 さらに、コロナ禍に襲い掛かられている。

 では世論調査で安倍首相を引き離し、断然トップを維持している石破が、世論通り総理の座に就くのか。

 だが、政権から遠くにいて、安倍首相を非難し続ける石破に対し、何より安倍首相と、その盟友の麻生太郎財務相は、「石破だけは総理の座に就かせない」と息巻いている。
 

党内で高い評価


 そこで急浮上しているのが菅義偉官房長官である。いまや、経済の落ち込みも強く、コロナ禍がどこまで続くのか分からない。「乱世」どころか「大乱世」である。安倍政権を党から支え続けている二階俊博幹事長は、菅を高く評価している。菅は、二階と同じく公明党とのパイプも太い。維新とも安倍首相同様太いパイプがある。内閣の要の官房長官を長年務めたことで、官僚も抑え切っている。

 菅は派閥こそ持たないが、実は、隠れ菅派の議員が50人近く存在する。

 安倍首相も石破にだけは政権を渡したくないので、官邸と党とで自分を支え続けてきた菅と二階とが組むなら「それもよし」と考える可能性がある。

 何より、これまでバラバラであった野党が、立憲民主党と国民民主党との新党結成で勢いを取り戻しつつある。安倍首相の健康不安説も加わり、次の総選挙を考えれば、誰がポスト安倍にふさわしいのか、一層熱を帯びてきている……。

 おおした・えいじ 1944年、広島県生まれ。広島大学文学部卒業。週刊文春の記者を経て、作家として独立。政財官界から芸能、犯罪など幅広いジャンルで創作活動を続けている。近著に『小池百合子の大義と共感』『内閣官房長官』『田中角栄 最後の激闘』など。

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