農水省概算要求 輸出、ジビエ、農福連携 「菅案件」軒並み増

 農水省の2021年度予算の概算要求案で、菅義偉首相肝いりの政策が軒並み、20年度当初予算よりも増額の要求となった。農産物輸出やジビエ(野生鳥獣の肉)利用、農福連携などを支援する事業だ。同省は、輸出拡大に向けた部局の新設も求める。これらは同省が近年、力を入れてきた分野だが、首相の後押しも受け、さらに推進させたい考えとみられる。
 
 同省は概算要求案で、農林水産物・食品の輸出額を30年に5兆円にする政府目標の実現に向けた施策を柱の一つとした。輸出向けの産地づくり、危害分析重要管理点(HACCP)対応の施設整備など5事業で計217億円を計上。4月に農水省に政府全体の輸出本部を設置した影響もあるとみられるが、20年度当初予算の実に3倍だ。

 ジビエの処理加工施設の整備などと鳥獣被害防止対策を併せて支援する事業の予算は、同59%増の162億円を要求。農福連携や、休暇先で働く「ワーケーション」にも対応した農泊などを推進する「農山漁村振興交付金」も同5%増の103億円を求める。

 菅首相は、農産物輸出の拡大を地方活性化策の柱に据える。官房長官時代には、農産物輸出だけでなく、ジビエや農福連携に関する政府の会議の議長も務めた。ワーケーションの推進も提起し、インバウンド(訪日外国人)観光と絡めて農泊にも熱心とされる。

 概算要求案は、菅氏の首相就任前から編成作業が始まっていた。だが、菅氏の官房長官時代の肝いり政策は、霞が関の官僚に「スガ案件」と呼ばれ、「予算要求が通りやすい」(政府関係者)と特別視されていた。同省にも、こうした狙いがあった可能性がある。

 同省は21年度の組織・定員要求に、江藤拓前農相の肝いりで、農産物輸出の促進や規制緩和交渉を担う「輸出・国際局」、同省が輸出の柱とみなす和牛などの生産基盤強化に向けた「畜産局」の新設を盛り込む。局の新設は政府全体での調整が必要となり、難航も予想されるが、“首相肝いり”でもあることを旗印に実現を目指すとみられる。

 一方で、こうした手法については「輸出を増やすことに異論はないが、度が過ぎれば、安倍政権で問題になった官僚の忖度(そんたく)が繰り返されないか」(自民党農林議員)との指摘もある。

おすすめ記事

農政の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは