[米需要の危機](上) コロナ 外食直撃 需要“蒸発” 想定の倍

神田江戸ッ子寿司では、「シャリは大きくできますよ」と板前が客に声を掛ける(東京都千代田区の中店で)

 東京・神田、上野に、すし店6店舗を展開する「神田江戸ッ子寿司(ずし)」は、本格的な江戸前ずしを手頃な価格で提供する人気店として知られる。しかし新型コロナウイルス禍により、以前は昼時に満席だった店内には、空席が目立つ。

 感染対策で、客席を間引いたことだけが理由ではない。オフィス街の客が減り、会食用の出前も大幅に減った。すし人気を支えていた訪日外国人客もゼロで、今も全体の客足は8割ほどにしか戻っていない。2店舗は休業中だ。

 「すしの命はシャリ。おなかいっぱい食べてもらおうと無料で大きくしている」と中店の松原智司店長。だが、客数・出前の減少に伴う米の使用量減少は避けられなかった。4~9月の全店舗の米飯仕入れ量は19トンと前年同期の半分以下だ。9月単月でも4割減と低迷している。松原さんは「冬にまた感染が拡大しないか気掛かりだ」と、集客対策を模索している。
 

内食堅調でも


 米の需要減少は、コロナ禍で加速している。農水省によると、2020年6月までの1年間の需要量は前年同期比22万トン減った。人口減などでこれまで想定されていた毎年の減少量10万トンの2倍超で、この先も歯止めがかかる兆しは見えない。

 内食需要こそ堅調だが、飲食店やコンビニ向けなど業務用の落ち込みが大きい。家庭用と業務用を合わせた主要卸の販売量は4月以降前年割れが続き、大手米卸は「麺類などに需要を奪われ、家庭用が全体を補い切れていない」と分析する。

 米の需給は緩和局面に突入した。20年産は主産地の豊作基調や、作付けが適正量を超えたこともあるが、追い打ちとなったのは想定外の規模での需要減少だ。そのため、来年6月末の民間在庫量は221万~227万トンとなり、米価低迷が問題となった14年産の水準にまで膨らむ見通し。
 

6年ぶり下落


 過剰感を反映するように、20年産米の価格は下がった。産地と卸との相対取引価格は6年ぶりに下落し、9月の相対取引価格の全銘柄平均価格は1万5143円と、前年同月から676円安い。

 業務用米への仕向けが多い関東産は、1000円以上、下げる銘柄が目立つ。業務用米の生産も多い茨城県内のJA担当者は「14年産当時のように再生産が難しい水準にまで価格の下落が進まないか心配だ」と明かす。

 大幅下落を食い止めるため、JAグループは20年産のうち20万トンを長期計画販売とし、過剰感の払拭(ふっしょく)を目指す。しかしその米は来秋以降に主食用米市場に戻るため、大手米卸は「抜本的な対策とはみていない」と冷静で、「21年産の生産を適正量まで減らせるかだ」と強調する。

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 米需給が緩和し、価格下落を食い止められるか、正念場を迎えた。コロナ禍での需要減、作付けの過剰傾向──。生産・消費の現場で何が起きているのかを探った。

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