シイタケ原木高騰 地場産の安定確保へ奮闘 植林、“所有者マップ”作成 鳥取県
2020年12月01日
2011年の東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所事故を機に、シイタケ原木の価格高騰が続く中、鳥取県は県産原木の安定確保に取り組んでいる。大規模な植林に加え、早期伐採が見込める果樹園跡地の利用や、土地所有者と生産者をマッチングする市町村単位の原木林マップ作成を進める。自伐可能な原木林を整備することで、購入に頼る新規就農者らの経営維持につなげる。(鈴木薫子)
原木の確保は、自分で山林から調達する自伐型と購入に分かれる。農水省の特用林産基礎資料によると、所有林による自伐型は4割で、残り6割は中・小規模産地や新規就農者を中心に立ち木や原木を購入している。
19年のナラの原木価格は1本330円で、統計がある1980年以降では最高値。クヌギは323円で、2009年に比べると、共に4割高だ。原発事故以前は比較的安定していたが、東日本の原木主産県だった福島からの供給が滞ったことで、西日本からの移送に運賃がかかり、価格高騰につながった。
19年の干しシイタケ国内価格は1キロ3571円で、原発事故後では最高値だった16年に比べ3割安い。鳥取県で栽培指導・研究活動をする日本きのこセンター菌蕈(きんじん)研究所の長谷部公三郎所長は「干しシイタケの需要の落ち込みで、価格が低迷している。購入したほだ木では採算が合わない」と指摘する。
同センターなどのグループは、原木林の造成が急務だと考え、19年に植林を始めた。鳥取市の5ヘクタールに1万5000本のクヌギ苗を植林。15年後に長さ1メートルの原木を12万本確保できる計画だ。将来的に20ヘクタールに広げる。
県は果樹園跡地の活用を後押しする。県と市町村が、土地所有者に園地の鉄線や棚などの撤去費用の9割を助成。植林は国の造林事業を使う。果樹園跡地は土地が肥沃(ひよく)で「木の成長が早く、伐採時期が5年ほど早まる」(県産材・林産振興課)ため、早期伐採が期待できる。
事業は16年度に始まり、これまで6件1・5ヘクタール分を造成。21年度も数件の利用を見込む。
生産者が自力で原木林を探す仕組みづくりも進める。同グループと県は今年、自治体やJA鳥取いなばと連携し、市町村単位の「新・原木林マップ」作りに着手した。森林所有者へ更新された情報を聞き取る際、森林利用の意向を調査する。所有者の許可を得て、インターネットのマップ上で名前や連絡先を閲覧可能にし、生産者と所有者のマッチングに役立てる。既に鳥取市と八頭町が参加。21年1月以降、所有者の意向をマップに反映させていく予定だ。
原木シイタケで使うコナラやミズナラが枯れる「ナラ枯れ」の被害が全国規模で深刻化する中、生産者が対策に乗り出した。インターネット交流サイト(SNS)内にネットワークを立ち上げ、生産者同士で情報をリアルタイムに共有。被害状況や拡大防止策を持ち寄り、対処方法を探る。
ナラ枯れは、カシノナガキクイムシ(カシナガ)が運ぶナラ菌という病原菌が木の中で繁殖することで通水が阻害され、木が枯死する伝染病。原木として使うミズナラやコナラ、クヌギの他、栗やカシワなど広葉樹に伝染し、特に高樹齢の木が被害を受けやすい。全国規模で広がりを見せている。
熊本県人吉市で、年間10万本の原木シイタケを生産する浅香康昌さん(61)は7月、シイタケを発生させるほだ場の雑木林のシイなど20本以上が枯れているのを発見した。県の調査でナラ枯れだと分かった。祖父の代から100年続く農家だが「初めての被害で対処方法が分からなかった」という。
対策の情報が少なく、自らSNSのフェイスブック上に「椎茸(しいたけ)栽培におけるナラ枯れネットワーク」を立ち上げた。全国のシイタケ生産者や専門家ら88人が参加。各県の被害状況や伐採・移動時の注意点などを投稿し、情報を共有する。
鳥取県日野町の廣瀬俊介さん(34)は、原木を確保する山林でコナラが枯れる被害に遭った。対策を探るうちにネットワークに参加。県林業試験場が作ったカシナガのせん入孔のサイズ(約1・4~1・9ミリ)が目盛りで分かる定規「カシナガスケールMiK2」を紹介した。
林野庁によると、2019年度のナラ枯れ被害量は前年度比35%増の6万500立方メートル。20年度の被害をまとめている同庁森林保護対策室は「今年はさらに増えている」とみる。廣瀬さんは「急激な広がりに情報が追い付いていない」として、積極的に情報交換をする考えだ。
自伐支援へ環境整備
原木の確保は、自分で山林から調達する自伐型と購入に分かれる。農水省の特用林産基礎資料によると、所有林による自伐型は4割で、残り6割は中・小規模産地や新規就農者を中心に立ち木や原木を購入している。

19年の干しシイタケ国内価格は1キロ3571円で、原発事故後では最高値だった16年に比べ3割安い。鳥取県で栽培指導・研究活動をする日本きのこセンター菌蕈(きんじん)研究所の長谷部公三郎所長は「干しシイタケの需要の落ち込みで、価格が低迷している。購入したほだ木では採算が合わない」と指摘する。
同センターなどのグループは、原木林の造成が急務だと考え、19年に植林を始めた。鳥取市の5ヘクタールに1万5000本のクヌギ苗を植林。15年後に長さ1メートルの原木を12万本確保できる計画だ。将来的に20ヘクタールに広げる。
県は果樹園跡地の活用を後押しする。県と市町村が、土地所有者に園地の鉄線や棚などの撤去費用の9割を助成。植林は国の造林事業を使う。果樹園跡地は土地が肥沃(ひよく)で「木の成長が早く、伐採時期が5年ほど早まる」(県産材・林産振興課)ため、早期伐採が期待できる。
事業は16年度に始まり、これまで6件1・5ヘクタール分を造成。21年度も数件の利用を見込む。
生産者が自力で原木林を探す仕組みづくりも進める。同グループと県は今年、自治体やJA鳥取いなばと連携し、市町村単位の「新・原木林マップ」作りに着手した。森林所有者へ更新された情報を聞き取る際、森林利用の意向を調査する。所有者の許可を得て、インターネットのマップ上で名前や連絡先を閲覧可能にし、生産者と所有者のマッチングに役立てる。既に鳥取市と八頭町が参加。21年1月以降、所有者の意向をマップに反映させていく予定だ。
ナラ枯れ SNSで情報共有
原木シイタケで使うコナラやミズナラが枯れる「ナラ枯れ」の被害が全国規模で深刻化する中、生産者が対策に乗り出した。インターネット交流サイト(SNS)内にネットワークを立ち上げ、生産者同士で情報をリアルタイムに共有。被害状況や拡大防止策を持ち寄り、対処方法を探る。
ナラ枯れは、カシノナガキクイムシ(カシナガ)が運ぶナラ菌という病原菌が木の中で繁殖することで通水が阻害され、木が枯死する伝染病。原木として使うミズナラやコナラ、クヌギの他、栗やカシワなど広葉樹に伝染し、特に高樹齢の木が被害を受けやすい。全国規模で広がりを見せている。
カシナガのせん入孔を測る定規で被害を調べる廣瀬さん(鳥取県日野町で)
対策の情報が少なく、自らSNSのフェイスブック上に「椎茸(しいたけ)栽培におけるナラ枯れネットワーク」を立ち上げた。全国のシイタケ生産者や専門家ら88人が参加。各県の被害状況や伐採・移動時の注意点などを投稿し、情報を共有する。
鳥取県日野町の廣瀬俊介さん(34)は、原木を確保する山林でコナラが枯れる被害に遭った。対策を探るうちにネットワークに参加。県林業試験場が作ったカシナガのせん入孔のサイズ(約1・4~1・9ミリ)が目盛りで分かる定規「カシナガスケールMiK2」を紹介した。
林野庁によると、2019年度のナラ枯れ被害量は前年度比35%増の6万500立方メートル。20年度の被害をまとめている同庁森林保護対策室は「今年はさらに増えている」とみる。廣瀬さんは「急激な広がりに情報が追い付いていない」として、積極的に情報交換をする考えだ。
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メロン・大葉 相場低迷 再発令 時短営業響く
緊急事態宣言の再発令に伴う飲食店の時短営業や休業を受け、一部青果物の相場低迷が加速している。メロン「アールス」の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は平年の3割安を付け、前回発令された4月上旬と同水準に落ち込む。刺し身のつま物に欠かせない大葉も、業務需要が減って平年の3割安に低迷。小売りでの販売にも勢いがなく、相場を下支えできていない。
小売りも勢い欠く
メロン「アールス」は12月、「GoToキャンペーン」の活況により、上位等級を中心に引き合いが強まり、歳暮需要も加わり高値で推移。だが、年が明けて環境は一変した。中旬(19日まで)の日農平均価格は1キロ799円と平年の32%安で、同4割安を付けた日もある。東京都中央卸売市場大田市場では、初市以降、静岡産の高値が1キロ4320円と止め市の半値に急落し、一時は同3240円まで下げた。
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2021年01月20日

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第1弾は県産黒糖 JAおきなわ「mamu―i」
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2021年01月23日
地域の新着記事
地域内外の知恵生かす 関係人口創出モデル報告会
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具体例として地場産ワインの消費拡大に向けて、広報の専門家の協力を受けてファン組織を設立。オンラインイベントも開いたことを報告した。
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2021年01月24日

奈良・明日香村移住者へ 「農+観光業」を提案 収入安定し放棄地も解消
奈良県明日香村は、観光業を営むために村に移住した人などを対象に、耕作放棄地を活用して農業に取り組んでもらうプロジェクトを2021年度から本格的に始める。初心者でもできるように、耕作放棄地を整備して貸し出し、作業も手厚く支援する。より収入が安定する「農業+観光業」の暮らしを提案し、移住の加速と耕作放棄地解消につなげる。
整備後に貸し出し
明日香村には飛鳥時代の史跡が多く残され、年間約80万人が訪れるなど観光が盛ん。……
2021年01月23日

防疫対策で養豚中止 鶏舎に改良 岡崎おうはん初出荷 愛知県立猿投農高
愛知県豊田市の県立猿投農林高校は、今年度から地元のブランド鶏「岡崎おうはん」の飼養を始め、1月中旬に肉の初出荷を迎えた。きっかけは2019年に県内で猛威を振るった豚熱。飼育していた豚を防疫のため全頭出荷後、豚舎が老朽化していたため再導入を諦めていたが、生徒主体で平飼いの肉用鶏舎としてよみがえらせた。生徒らは「高校の新たな名物にしよう」と奮闘している。
「新名物に」奮闘
同校では母豚5頭を飼い、繁殖と肥育をしていたが、豚熱拡大を受けて19年11月までに全頭を出荷した。……
2021年01月23日

[震災10年 復興の先へ] 「酪農復興」誓い前へ 800頭規模に成長 福島の牧場「フェリスラテ」
東京電力福島第1原子力発電所事故で多大な被害を受けた福島県の酪農。復興を胸に誓い、被災者5人で立ち上げた福島市の復興牧場「フェリスラテ」は、飼養頭数800頭と東北トップクラスの規模に成長し、繁殖から子牛の育成、搾乳までの一貫生産体制を整えた。被災地の酪農をけん引し、完全復興に向けて歩みを進めている。(高内杏奈)
一貫生産体制整える
福島駅から車で約20分。市街地から西に進み、桃やブドウの果樹園を抜けると、3・6ヘクタールの広大な敷地に白く輝く牛舎がそびえ立つ。牛舎はフリーバーンで、牛は自由に歩き回り、ゆったりとわらをはむ。パーラーは一度に40頭搾乳でき、1日の出荷乳量は15トン。飼料作りは国内最大級のミキサーを使う。
「嘆き悲しむだけじゃ変わらない。酪農に関わり続けるため必死に築いた」と話すのは田中一正代表。牛舎の設計から携わった。
2014年に設立したフェリスラテは、福島県酪農業協同組合が事業主体。田中代表ら被災した酪農家に呼び掛け、5人が役員として運営。19年には分場をして、震災後は酪農が途絶えていた飯舘村で乳牛の育成を始めた。もと牛の育成に限定した牛舎で200頭を飼う。県内で繁殖から育成、搾乳までの生産システムを整えた。「道のりは長かった。福島の酪農を再建したい、その思いだけでやってきた」(田中代表)。
原点の地でもう一度
事故当時、県酪農協の組合員のうち3割が浜通り地区におり、その大部分が避難指示区域になった。区域外への流出・餓死・事故死した牛は約2500頭に上り、同県酪農の基盤が大打撃を受ける事態になった。
飯舘村にいた田中代表も、当時飼っていた乳牛50頭の半数を殺処分せざるを得なかった。「何が何だか分からない状況。牛をと畜場に運ぶ家畜車が自分の所に来た時は、悲しみと牛に対しての申し訳なさでいっぱいだった」と振り返る。
関東の大規模牧場で経験を積んだ田中代表は01年、同村長泥地区を経営の場に決めた。“俺の牛舎だ”と胸を張って見上げた時の牛舎の香り、優しい風、期待感を今でも覚えている。ただ牛が好きだった。
そんな思い入れのある村から避難を強いられ、知り合いを頼りに隣県の牧場で働いた。「やっぱり出発点の福島で、もう一度酪農をしたい」。県酪農協から打診があったのはそんな時だった。
フェリスラテの従業員約30人のうち、7人はまだ20代だ。田中代表はマニュアル化や月1回の勉強会を通して次世代育成に取り組む。
搾乳担当の丸森成美さん(23)はテレビ番組でフェリスラテを知り、短大卒業後に就職した。「若手の意見を尊重してくれる。福島の復興に向け、もっと戦力になりたい」と笑顔を見せる。
長泥地区は今も避難指示が解除されていない。田中代表が考える完全復興は、出発点だった長泥地区でもう一度酪農ができるようになることだ。「ハード面の復興は進んだが、『時間が進んでいない場所』がある現実を無視できない」と強調する。
今後は和牛肥育を拡大する予定だ。完全復興のその時まで、フェリスラテの挑戦は止まらない。
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2021年01月23日

ダンスで「広島レモン」PR テレビ局企画動画で配信 果実連が参加
県を代表する特産かんきつ、レモンをダンスでPRする企画が始まった。中国放送(RCC)のレモンを冠した公式キャラクター「レモナルド・レモンチ」のオリジナルダンスを視聴者が踊り、動画を撮影して投稿する参加型ダンスイベントだ。……
2021年01月22日

厄介者「カヤの実」 ナッツ、食用油 人気加工品に 伐採「待った」 奈良県曽爾村
奈良県曽爾村は、村に群生するカヤの実を資源として見直し、地域活性化につなげる。ナッツや食用油など全国から注文が集まる加工品を相次いで開発。実の回収や加工で村に新たな仕事を生み出し、食べ方などの伝承を通して村民の交流も促す。かつて道を油だらけにしていた厄介者の実を、地域振興の“潤滑油”として生まれ変わらせた。
「いってカリカリのおやつにして食べるのが、子どもの時は大好きだった」。……
2021年01月22日

[農と食のこれから 二つの学校から]後編(下) 引きこもり生活一変 新たな居場所 たくましく歩む
「自信はまだないけれど、怖いほど迷いがない。きっと僕は農業が好きなんだと思う」。新型コロナウイルス禍の2020年度に日本農業実践学園に入校した18人の中で最年少、28歳の雙田貴晃さんが、ナスを促成栽培する温床を作ろうと土壌を掘り返しながら、白い歯を見せた。
挫折からしばらく引きこもりの生活が続いた。外の世界に連れ出してくれたのが農業だった。
諦めた司法試験
「理系一家」の末っ子だ。……
2021年01月21日

地元産トロロアオイを伝統和紙に 産地復活へ技術磨く 島根県浜田市・農家ら委員会
国の重要無形文化財やユネスコ無形文化遺産に指定された伝統工芸品「石州半紙」の産地、島根県浜田市三隅町は、和紙の粘着剤として使うトロロアオイの産地復活に取り組む。2020年は10戸が約5アールで栽培し、140キロを収穫した。地元の和紙職人が求める品質に向けて栽培技術を高めながら、23年までに生産量を倍増させ、安定供給で特産品と伝統文化の伝承を支える。
トロロアオイは「花オクラ」とも呼ばれるアオイ科の植物で、根から出る粘液が和紙の粘着剤となる。地元では1950年代まで栽培されていたが、近年は主に茨城県産を使っている。
活動の中核を担うのは、同町黒沢地区の住民でつくる黒沢地区まちづくり委員会。2012年に地域振興の一環でトロロアオイの特産化に乗り出した。種を入手して栽培したが、当初は和紙職人が求める根が太く長いものができなかった。
生産者の野上省三さん(81)は「栽培方法が分からず手探りだった」と振り返る。栽培講習会で畝の立て方や病害虫対策、芽かきなどを共有し、栽培技術を高めた。
今は職人からの評価も上々だ。和紙工房4戸でつくる石州和紙共同組合の組合長を務める川平正男さん(79)は「年々レベルが上がっている。高品質な地元産が安定供給されればありがたい」と歓迎する。
国内のトロロアオイ産地は減少している。19年には、主産地の茨城県の生産者が生産終了を検討していることが報道された。また、宅配便や郵便料金の値上げで輸送コストも上がり、和紙職人の地元産への期待は大きい。
同委員会は、地元の需要量を350キロと算定。23年に20戸で生産量300キロを目指す。齋藤正美会長は「地域一丸で、和紙作りとトロロアオイ栽培の双方を次世代につないでいきたい」と意欲を見せる。
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2021年01月21日

[農と食のこれから 二つの学校から]後編(中) 国際協力から転身 「まず農家に」 地に足着け精進
吹き抜ける風が肌寒さを増した2020年11月下旬、水戸市にある日本農業実践学園の講義用あずまやで、多品目の野菜農家を目指す吉田誠也さん(30)が、パソコンに野菜の生育データを打ち込んでいた。背後には自身で種から育てた10品目の畑が広がる。
東京大学大学院で植物のバイオテクノロジーや分子生物学を修め、昨春から海外で農業の国際協力に携わるつもりだった。「半年前まではここにいるとは想像できなかった。でも、本当はこれが本来の順序。急がば回れで、新型コロナウイルス禍で僕は農家への道に踏み出す決断ができた」
入校者数が右肩下がりを続けていた実践学園は、研修生がゼロとなった19年度と打って変わり、20年度は18人が入校した。
2021年01月20日

[農と食のこれから 二つの学校から]後編(上) コロナで体感「農業っていい」 多業種から入校生 日本農業実践学園
0度近くまで冷え込んだ晩秋、丘陵地のビニールハウスの中は春のような暖かさで、イチゴの白い花の周りには蜜蜂の羽音が響いていた。「蜂が近くに来ても払わないで。攻撃されるかもしれないから」。水戸市の郊外、新規就農者の専門学校「日本農業実践学園」の研修施設。2カ月前に入校し、1年後にイチゴ農家として独立を目指す小林克彰さん(39)が、実習作業の手伝いに来た妻の瞳さん(37)に語り掛けた。
克彰さんは、芸能人のホームページやコンサート情報を制作していた自営のウェブデザイナーだった。会社員だった30歳の頃、副業として会社が認めていた個人受注が増え、独立を決意した。2年前に工業デザイナーの瞳さんと結婚し、埼玉県三郷市に居を構えた。克彰さんが自宅で仕事、瞳さんが会社勤め、2人の生活は順風だった。
2021年01月19日