畜酪対策ヤマ場 コロナ禍の不安払拭を

 2021年度畜産・酪農対策を巡る政府・与党の論議が山場を迎える。新型コロナウイルス禍などで農家は不安を抱える。一方で、政府の輸出拡大方針を受け増産が求められている。JAグループの重点要請を踏まえ、生産意欲を高め、将来への希望が持てる決定とすべきだ。

 政府・与党に訴えたいことは第1に、新型コロナの感染拡大と長期化が畜産・酪農経営基盤を揺さぶっていることだ。春の第1波では、インバウンド(訪日外国人)の激減や外食業者の休業、休校に伴う学校給食の停止などで需要が落ち込み、牛枝肉価格の下落などを招いた。経済活動の再開で価格は徐々に上向き、乳用牛や繁殖雌牛の飼養頭数が増加に転じるなど、生産基盤の回復への兆しが見られる。

 しかし、ここに来て第3波による需要の減少が懸念されている。中小家族経営を含む多様な生産者が、意欲を持って営農を継続できる環境整備が求められる。肥育生産奨励金や和牛肉保管在庫支援、経営継続補助金など新型コロナ対策での経営支援に万全を期さなければならない。今後の需給動向に応じた機動的な対策も重要だ。

 第2に、環太平洋連携協定(TPP)や日欧経済連携協定(EPA)、日米貿易協定などによる市場開放の進展で、国産需要が脅かされていることだ。牛肉や乳製品をはじめ酪農・畜産物の関税を段階的に削減。それに伴い、例えば牛肉の輸入は、17年度の57万2000トンから19年度には62万3000トンに増えた。政府は影響を分析し、万全な対応をとるべきだ。

 第3に、10年先の目標を掲げた酪農肉用牛近代化基本方針(酪肉近)の実践が始まったばかりの中での決定になるということだ。同方針では生乳生産は780万トンへと52万トン増やし、肉用牛の飼養頭数は303万頭へと約52万頭増やすという意欲的な増産目標を掲げた。これは、菅義偉政権が掲げる2030年の農林水産物・食品の輸出目標5兆円も踏まえたものだ。

 出だしでつまずくと、目標達成は困難になる。そこで加工原料乳生産者補給金は再生産と将来への投資が可能となる水準にし、総交付対象は需要に応じた適切な数量にする必要がある。集送乳調整金は、条件不利地からでも確実に集乳できる単価が求められる。都府県酪農へのてこ入れも重要だ。また、肉用子牛生産者補給金の保証基準価格は、肉用子牛の再生産が確実に確保できる水準にすべきだ。

 酪農・畜産は、コロナ禍に加え、豚熱や高病原性鳥インフルエンザといった家畜伝染病にも見舞われている。政府が、海外との人の往来を段階的に再開し始めたこともあり、飼養衛生管理の一層の強化が求められる。

 政府・与党は、近年にない厳しい環境にあるとの認識を深めるべきだ。野党も同じである。政治が主導し、農家の不安を払拭(ふっしょく)する対策となるよう求める。
 

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