[コロナ以後を考える] 農畜産物販売 国産回帰 うねりつかめ

 農畜産物の販売は今年も新型コロナウイルスの影響と向き合うことになる。消費行動や販売環境の変化を的確に捉えた対応が必要だ。国民が必要とするものをその国で生産する「国消国産」の取り組みを、農業・食料関連産業を挙げて本格化させる「元年」としたい。

 日本農業新聞がスーパーや卸など140の流通業者に聞いた2021年トレンド調査で、販売キーワードの1位は「新型コロナ対応」だった。コロナ関連で「ネット取引・宅配」「安全・安心」なども上位に入った。

 感染を避ける消費行動が今後も予想される。外出や宴会の自粛から外食など業務筋が苦戦する一方、「巣ごもり」は続き、スーパーや宅配など家庭消費のニーズは旺盛なままだ。加工を含め業務筋はもともと原料に安さを求め輸入原料を多く使う。対して生鮮品を扱うスーパーは鮮度や安全・安心を求め、国産を選ぶ傾向にある。家庭消費の増加は国産の追い風となる。

 景気の先行きは依然厳しく、節約志向は根強い。総務省の家計調査(2人以上世帯)を見ても、食品の支出は、外食の落ち込みが本格化した3月以降、前年割れが目立つ。高級食材は苦戦を強いられたが、牛肉は価格低迷で消費機会が広がり、価格回復後も定着しつつある。

 共働きや単身世帯の増加で、簡便性へのニーズは底堅い。有望視されるのが、ネット取引や宅配だろう。従来も共働きや単身世帯の増加で買い物の便利さが重視されていたが、新型コロナの感染拡大で人との接触機会を減らす手段として利用が急拡大した。新規参入も相次ぎ、農畜産物の販売手法としてさらに存在感を増すだろう。また宅配やテークアウト(持ち帰り)など外食の事業多角化も進んだ。

 感染力が強い新型コロナウイルスの変異種が海外で確認され、英国では葉物野菜など輸入が滞り一部のスーパーで青果物の不足が発生し混乱が出ている。こうした世界情勢の不安定さから食品の調達先が国内に向かっている。コロナ禍で消費者の安全・安心への意識は一層高まり、国産の強みを発揮できる。

 輸入原料の使用が多かった冷凍食品では、こだわりの国産食材を使い、レストランのおいしさを再現した商品などを各社が強化。自宅で贅沢(ぜいたく)感のある料理を手軽に食べたい「プチ贅沢」ニーズを取り込み、市場は成長する気配だ。

 消費動向の潮目の変化を捉えた生産販売体制が必要だ。トップセールスや対面式の催しなど従来型の販売促進は難しい。デジタル対応を進めながら、生産と消費の距離を近づけたい。節約志向があっても、商品の価値や生産の背景を評価し、適切な対価を支払う消費層はある。生産者を支援する「応援消費」も活発だ。国産回帰の機運は確実に高まっている。一過性で終わらせず、生産、加工、流通・宅配、小売り、外食などが連携し、太く長いものにしたい。

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