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和牛子牛80万円迫る 堅調の枝肉相場に連動 高止まり懸念も
和牛子牛価格が80万円に迫る高値で推移している。枝肉相場が好調なことに加え、大型連休の需要期向けに肥育牛の出荷が進み、導入意欲が強い。一方、資金力に余裕がない中小肥育農家を中心に子牛高値の負担感が大きくなっており、価格の高止まりを懸念する声も出ている。(斯波希)
JA全農がまとめた全国の主要家畜市場の4月の取引結果によると、1頭平均価格は78万7957円(22日時点)。……

[活写] 上を向いていこう
富山県砺波市で22日、航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が展示飛行し、国内最大級の花の祭典「2021となみチューリップフェア」の開幕を祝った。
同市は、国内屈指のチューリップ球根の産地。メイン会場となった12ヘクタールの砺波チューリップ公園には、300品種、300万本のチューリップを展示した。産地ならではの多彩な品種で、巨大な地上絵や、県の観光名所「雪の大谷」を再現した花壇などを設け、来場者を楽しませる。県のオリジナル品種をモチーフにした新しい展望タワーも登場した。
フェアは今年で70周年を迎えた。昨年、新型コロナウイルス感染拡大を受けて初めて中止したが、節目となる今年は、飲食エリアの制限など感染対策を徹底して開催した。
開会式に出席した県花卉(かき)球根農協の石田智久組合長は「厳しい状況下での開催だが、直接産地に足を運んで花を見てもらえることは生産者の励みになる」と話す。
フェアは5月5日まで。(染谷臨太郎)
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果実もたるもオール山梨でワイン 丹波山村産ミズナラ全国初活用 甲州市の醸造所が今秋初出荷へ
山梨県丹波山村と甲州市のワイナリー「奥野田葡萄(ぶどう)酒醸造」が、同村産ミズナラを使ったワインだるを開発した。これまで県産材を使ったワインだるがなかったことから、「オール山梨産」のワインを作ろうと企画。村の林業を再興したい思いなども重なり、約4年の歳月を経て完成にこぎ着けた。国産ミズナラのワインだる製造は、全国で初めてという。今秋にこのたるで熟成した白ワインが完成する見通しだ。(長田彩乃)
林業再興めざし開発
県産の材料にこだわるワイナリーの代表・中村雅量(58)さんが考案した。村の特産品開発や林業復活などにつなげたいと、村とワイナリーが共同で開発を進めた。
4年前から取り組みを始め、調査や業者の選定などしてきた。昨年3~12月に村有林を伐採して、2メートル材60本を製材。今年3月末にたるが完成、検品を経て4月にワイナリーへ納品された。
たるには樹齢約70年のミズナラを使用。大きさは直径35センチ、長さ40センチ、容量は18リットル。現在、ワイナリーが昨年に醸造したシャルドネのワインが注がれていて、3カ月程度で熟成が完了するという。
4月中旬にワイナリーで披露された。完成したばかりの17基を岡部岳志村長が中村さんに贈呈した。たるにシャルドネのワインを注いで完成を祝った。
村の担当者によると国産ミズナラを使ったワインだるの製造は全国で初。国産ワインではたるで熟成しないものもあるが「世界的にたる熟成は当たり前」と中村さん。木の香りがワインに移ってバランスの取れた仕上がりになり、料理との相性が良くなるという。
村は面積の98%が山林。森林の多くは東京都の水源林で、村有林は約10%。たるを製造するため伐採することで、森林保全につなげたい考えもある。
中村さんは「ワイン産地の水源の木材を使ってワインを熟成させることは、作り手として最もぜいたくで理想的なものづくりの形。飲みたい人もたくさんいると思う」と喜びを語った。
林業会社に勤めた経験があり、伐採にも携わった岡部村長。「たるを地元産材で作ることで村として『オール山梨』のワイン製造に貢献できる。県産ワインの新たな付加価値創出の第一歩になったと思う。村内での仕事の創出にもつなげていきたい」と、村の産業振興への意欲を見せた。
このたるで寝かせたシャルドネのワインは、今秋に完成する予定だ。約400本を生産する見通しで、村とワイナリーは試飲会なども検討している。
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RCEP承認案参院委審議入り 商標保護に期待
参院外交防衛委員会は22日、日本と中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)などによる地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の承認案の審議を始めた。京都府の「宇治茶」など、日本のブランドや地名が中国で勝手に商標登録されている問題を巡り、外務省は同協定によって「商標の保護や模倣品・海賊版の問題が改善されると期待している」と述べた。自民党の佐藤正久氏への答弁。
同協定は参加国に対し、悪意のある商標出願を拒絶・取り消しできる制度を設けるよう規定する。同省は「(各国で)適切な整備、運用がされていない場合は改善を求めていきたい」とした。
茂木敏充外相は「先に国内手続きを終え、他国にも早くやってほしいと働き掛けることは極めて重要」とし、協定発効に向けて日本が早期に承認する意義を強調した。公明党の三浦信祐氏への答弁。
同日の委員会では、参考人の意見も聴取した。慶応大学の木村福成教授は、日本が政治的問題を抱える中国や韓国との初の経済連携協定(EPA)となったことを巡り、ASEANを中心とした多国間協定への参加という形だからこそ「一つの協定の中に入れた」との考えを示した。
みずほリサーチ&テクノロジーズの菅原淳一調査部主席研究員は、RCEPは自由化の水準やルール分野の合意内容が環太平洋連携協定(TPP)などに劣るとして、「発効後の深化(見直し)を日本が主導すべきだ」と述べた。
アジア太平洋資料センターの内田聖子代表は、東京大学大学院の鈴木宣弘教授が日本の野菜や果樹が打撃を受けると試算していることを挙げ、「きちんと検証し、影響が出るなら何らかの対策が必要だ」と訴えた。
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みのる食堂熊本に開店 全農
JA全農は23日、直営の飲食店「みのる食堂アミュプラザくまもと店」をJR熊本駅前の大型商業施設「アミュプラザくまもと」(熊本市西区)にオープンする。食材の大半に県産の農畜産物を使用。代表的な県産米ブランド「森のくまさん」を羽釜で炊いて出す。
外食分野で国産農畜産物の利用を拡大させるため、全農は全国で直営の「みのりカフェ」「みのる食堂」を展開している。……
集落営農・農業法人 米価下落に危機感 大規模ほど厳しく 6割「転作に余地」 本紙調査
集落営農・農業法人の9割が2021年産米価格は下落すると見通していることが、日本農業新聞の調査で分かった。近年にない厳しい見方が広がる一方で、主食用米の需給均衡に必要な転作拡大の機運は高まっていない。収入面の課題から、転作強化に踏み切れない実態も浮かび上がる。
調査は3月中・下旬に郵送で実施。……

[未来人材プラス] シェフから農家に 糖度15超マンゴー栽培 販路開拓し全量完売 茨城県日立市 鈴木拓海さん(41)
フランス料理のシェフからマンゴー農家に転身したのは、茨城県日立市の鈴木拓海さん(41)。パリでシェフの修業をして帰国。独立後、自ら作った食材を使いたいとの思いが募り、果樹栽培に手を付けた。沖縄で印象に残ったマンゴーを作ろうと、2013年に10本の鉢植えを始めた。現在はハウスで、150本の木から年間約3000個を収穫する。
幼少期から料理やシュークリームなどの菓子を作るのが得意だった鈴木さん。シェフになるのが夢で、調理師専門学校を19歳で卒業して渡仏。パリのビストロや三つ星の飲食店などで修業した。
フランスに5年間滞在して04年に帰国。「両親が営む飲食店で経営を学んだ。独立するなら、食材も自分で作りたかった」と就農を決めた。
だが、農業は未経験だった。JA日立市多賀の紹介で農地を借り、16年に就農した。マンゴーの他、30アールでナスやエダマメなども1人で栽培する。マンゴーは、養分が分散しないように、根域を制御したボックスで栽培。樹上完熟で収穫するため、糖度は15以上だ。
販路は自ら開拓した。通販サイトなどで、1玉3000円前後で売る。異業種の若手経営者が集まる場に顔を出し、知り合った企業が開くイベントなどで大口の注文も獲得した。とろけるような食感が口コミで広がり毎年完売する。規格外品は両親の飲食店を活用して、ジャムやタルトに加工する。加工品を含めたマンゴーの利益は、年間約300万円という。
マンゴーを栽培する7アール2連棟のハウスや農機は自己資金で調達した。19年に行政支援が手厚い認定農業者になったと同時に、理事としてJA運営にも携わる。くくりわなや箱わな、銃免許も取得して地域の有害鳥獣駆除にも貢献する。鈴木さんの今の夢はシェフ兼農家。「新型コロナウイルス禍でも需要が見込めるケータリングを展開したい」と展望する。
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農業試算 「予定なし」 RCEP承認案 参院審議入り
日本と中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国による地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の承認案が21日、参院本会議で審議入りした。野上浩太郎農相は、同協定による農林水産業への影響の試算を「行う予定はない」と説明。米や牛肉などの重要品目を関税撤廃・削減の対象から除外し、「国内農林水産業への特段の影響はない」ためだとした。共産党の紙智子氏への答弁。
野上農相は、協定による野菜や果実の関税撤廃について①関税率が比較的低い②品質面から需要が低い──ことなどから「撤廃されても国産価格などの競争条件は大きく変わらず、輸入増は想定しにくい」と説明した。……

非接触 イチゴ鮮度そのまま 個別容器に注目 宇都宮大発ベンチャー
イチゴを直接触らずに収穫から消費者の手元まで届けられる容器「フレシェル」が、大粒で完熟のイチゴでも傷まずに流通できると注目を集めている。宇都宮大学発のベンチャー企業、アイ・イートが開発した。追熟しないイチゴを、完熟まで甘さを最大限引き出して出荷できる。
同社によると、ドーム型のデザインが高級感を演出し、東京都内の百貨店では1粒1500円以上で販売できた。ドームは直径が73ミリ、高さが100ミリで、50~70グラムの果実が入る。県が育成した「栃木i27号(スカイベリー)」などの大粒な品種に対応する。
収穫の際、茎を長めに持ってイチゴをもぎ取り、茎を持ったままへたの外側にスポンジ製の土台を差し入れる。さらに透明のドーム状のふたを付けると、果実がどこにも接触していない状態で出荷・流通ができる。
容器内には香りも閉じ込められ、開けた時に香りが広がると好評だ。
日持ち効果も確認した。同社によると、10日以上は傷まず、保存に適した環境下では最大1カ月ほど品質を維持したという。大粒で完熟したイチゴは傷みやすく、主に産地近郊でしか味わえないが、日本各地や海外へも届けられる。2021年からタイへ出荷し、現地で好評だったという。
容器は、イチゴの自動収穫機で利用するために開発がスタート。同社は自動収穫機の作業スピードの向上なども併せて研究を進めていく。
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生花「母の日」商戦 自宅で楽しむセット
5月9日の「母の日」に向け、生花小売り各社の売り込みが活発だ。今年も雑貨や食品などと合わせた、個性的な商品の提案が進む。新型コロナウイルス下の自宅時間を花で楽しんでもらおうと、販促を強める。
青山フラワーマーケットは、水差し型の花瓶にカーネーションを挿した「ピッチャー&カーネーションセット」(3850円)を販売する。「花瓶を贈ると母の日後も花のある暮らしを楽しめる」と呼び掛ける。カーネーションの花束に、中川政七商店が作る、カーネーションの色素で染めたオリジナルのストールやふきんを合わせたセットも薦める。
カレーやオリーブオイルと
日比谷花壇が販売する花束とレトルトカレーのセット(同社提供)
日比谷花壇は「花と料理ですてきなひとときを」と、生花と食品のセット商品に力を入れる。自立するカーネーションの花束に、スープストックトーキョーのレトルトカレー4種を合わせて提案(6600円)。花束と日清オイリオグループのオリーブオイルとのセット(5500円)もラインナップする。
ユニークな飾り方提案
カレンドの「マグカップブーケ」(花恋人提供)
花恋人が運営するカレンドは、マグカップにカーネーションの花束を挿した「マグカップブーケ」(3色、4180円)を用意する。花を飾り終えた後はマグカップ単体で使用でき、箱も小物入れになる。昨年発売して話題を呼んだ、生花と傘で作る「アンブレラブーケ」も「母の日」限定デザイン(6380円)で展開する。
エルベ・シャトランの「ボールビジュー」(第一園芸提供)
第一園芸は、赤いカーネーションの鉢植えと帝国ホテルのクッキーのセット(5720円)がオンラインで人気だ。系列店のエルベ・シャトランでは、丸いガラス花瓶に水の中まで花びらを浸したアレンジ「ボールビジュー」(3色、Mサイズ8800円)を販売。「従来と違った花の飾り方が楽しめる」(同社)とPRする。
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農地バンク・農業会議合併 新組織「ひょうご農林機構」が誕生 兵庫県
兵庫県の農地中間管理機構(農地集積バンク)である兵庫みどり公社と、県内40市町の農業委員会を束ねる県農業会議が合併し、新組織「ひょうご農林機構」が誕生した。より現場に近い農業委員会のネットワークを駆使し、農地集積バンクとしての機能を強化、農地の集積・集約を加速させる。合併は公社が会議を吸収する形で、「農業会議」を冠した法人がなくなるのは47都道府県で初めて。(北坂公紀)
現場と連携、機能強化へ
新組織は1日付で発足した。……

[活写] 青い境界線 たずねて
大分県杵築市の「大分農業文化公園」で、70万本のネモフィラが見頃を迎えている。50アールの大花壇「フラワーガーデン」一面に青い花が広がり、来場者は広々とした園内で、写真撮影や散策を楽しんでいた。
同園は、2018年から来場者の要望に応える形でネモフィラの栽培を開始。職員が栽培方法を学び、花壇を手作りして風景をつくり上げてきた。
25、29日にはネモフィラを摘んで、小さなブーケを土産にできる摘み取り体験を開催する。また、花をイメージした青いソフトクリームなど地場産農産物の加工品も人気だ。
会期中は検温や来場者情報の記録など、新型コロナウイルス対策を徹底する。矢野格園長は「ネモフィラ、園内にあるダム湖、そして空。三つの青がコラボレーションする風景を楽しんで」と笑顔を見せる。見頃は4月下旬まで。入場無料。(釜江紗英)
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EC和牛ギフト活発 花と合わせ華やかに 花束に見立て楽しく
5月9日の「母の日」に向け、ギフト用の和牛を提案する動きが電子商取引(EC)市場で活発化している。花とのセットや肉を花に見立てた商品など、各社が趣向を凝らす。今年は8割が「母の日」の贈り物をECサイトで購入するとのアンケート結果もあり、商機が広がっている。
黒毛和牛のギフト専門ECショップ「evis meats」は、和牛肉と生花をギフトボックスに詰め合わせた商品を売り込む。「箱を開けた瞬間のサプライズだけでなく、花を飾ることで食卓も華やかに彩れる」とアピールする。
肉の部位はイチボ、モモ、サーロインなど6種類から選べる。価格は1万3360円で、肉の量は部位ごとに異なる。同店は1月にオープンし、完売も相次ぐなどギフト用の和牛が好評という。
焼き肉店などを運営する翔山亭(東京都千代田区)は、和牛肉を花束に見立てた「肉フラワーギフト」を自社ECサイトで販売する。渦状に巻いた肉が、バラの花びらのように見えるのが特徴だ。「店舗以外でも和牛を楽しんでもらえるよう、ギフト開発に力を入れている」(同社)。
霜降り肉と赤身など3種類を組み合わせた「愛」(250グラム)が6000円、「優」(400グラム)が9000円。
日本最大級の取り寄せ情報サイト「おとりよせネット」のアンケートによると、今年は77%がネット通販で「母の日」のプレゼントを購入すると回答。百貨店などの実店舗は減少傾向となった。「生活スタイルが変わり、行動が制限される中、対面の機会が少ない『ギフト通販』を利用する人が定着してきた」と指摘する。
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魅力満載の動画配信 特産をラップで称賛 長野県職員
「信州長野は日本の屋根」「南は市田柿 ガキには分からない粋な味」。長野県庁に勤める若手職員4人からなる「WRN」は、ラップで若い世代に農や自然、地域の魅力を伝える。歌詞には特産のリンゴやブドウ、キノコなどの農産品が登場する曲もある。(藤川千尋)
カラス対策も曲に
グループ名の「WRN」は「We Respect Nagano」(長野県を誇りとする)の頭文字を取った。鳥獣対策・ジビエ振興室の宮嶋拓郎さん(31)がリーダーを務める。この他、森林づくり推進課の服田習作さん(31)、ゼロカーボン推進室の三村裕太さん(32)、上田保健福祉事務所の井出伊織さん(33)がメンバーだ。
きっかけは2015年ごろ。当時、県飯田合同庁舎に勤めていた宮嶋さん。若手農家の交流会を企画し、県のホームページに告知を出したものの人が集まらなかった。痛感したのは、地域の魅力や県の取り組みが、伝えたい人に届いていないこと。「世の中に関心を持ってもらう伝え方が必要」と考えた。
当時流行していたラップに注目。同じ庁舎で働いていた服田さん、三村さん、井出さんに声を掛けて活動を始めた。
現在はライブを企画したり、制作したミュージックビデオを動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿したりするなどして活動する。
3月に投稿した「Night Veil」は、県が約40年ぶりに実施したカラスの生息調査を基に作った。農作物を荒らすカラス対策の曲だ。歌詞では「ついばむ 放置果実」と、摘果などで畑に捨てられた果実がカラスの冬の餌となることを強調。「生き延びるための餌残さない 対策そういう 意識共有」と呼び掛ける。
4月中旬に業務で参加できなかった井出さんを除いたメンバー3人が、長野市の戸隠神社や新潟県内の川や海で新曲のミュージックビデオを撮影した。新たな楽曲で発信したいのは「山や森林を大切にすることは田や畑へ豊かな水を供給すること」であり、「海の生態系の保全につながること」だ。
宮嶋さんは「ラップを通じて、若い世代に農や地域の魅力を伝え、盛り上げていきたい」と話す。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=PnTYAjVzOr4
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仏製マシンが四角く牧草ラッピング 積み上げ隙間なく 福島の佐久間牧場
直方体に束ねられた450キロの牧草を持ち上げた4本のローラーが、まるでお手玉を転がす指先のように動く──。福島県葛尾村で乳牛180頭を飼養する農業法人の佐久間牧場で、牧草を保管するため仏製のラッピングマシンが活躍している。
機種はKUHN(クーン)社製の「ラッピングマシーンSW4004」。ロールベール兼用の機種で、直方体に包装すれば、隙間なく重ねられ集積場所の節約になる上、輸送の利便性も高い。
油圧スライドシステムを採用しており、常に前進方向での作業が可能。移動時は幅2・5メートルになるため、代表の佐久間哲次さん(45)によると「狭い場所での移動も気にならない」という。
佐久間牧場では、年間で牧草を約360個使う。カラスに突かれても穴が開かないよう、同牧場では12層に巻く。それでも牧草1個にかかる時間は40秒ほどだ。
佐久間さんは「後継者が少ないのは、酪農に限らず農業全体の悩み。機械化で労働の省力化を進め、農業と縁がなかった人たちにも興味を持ってもらえたら」と話す。
販売元の日本ニューホランドによると、スクエアタイプの機種は、大規模な牧草地が広がる北海道では他社製品も含め使用例があるが、本州での運用は珍しいという。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=W-e1D5tHLU8
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全農の「JA支援」 収支改善を「一体で」 部門またぎ相談機能発揮へ
JA全農は19日、JA経済事業の収支改善で経営基盤強化を後押しする「JA支援」について、2022年度からの次期中期3カ年計画の取り組み方向を公表した。JAと全農が一体的に取り組む状態を「目指したい姿」と位置付け、JA全体を捉えた支援に向けて、全農は事業部門を横断した相談機能の発揮を目指す。
中期3カ年計画公表
同日、JA支援の加速に向けて、県本部の幹部・担当者らを対象に開いた全国会議で、本所のJA支援課が説明した。……

宇治茶の初取引 平均1キロ1万1187円
2021年産の宇治新茶の初市が19日、京都府城陽市のJA全農京都茶市場であった。平均価格は煎茶1キロ1万1187円と、新型コロナウイルス禍による需要減退で異例の安値だった昨年の8512円を大きく上回った。最高値は和束町産の手もみ茶で1キロ18万8888円(昨年10万円)と、資料の残る2000年以降で最高価格となった。宇治市の中村藤吉本店が落札した。
初市に先立ち、JA全農京都の中川泰宏会長が「昨年は茶農家にとって厳しい売り上げとなったが、茶商の皆さんの支援で、何とか今年の初市を迎えることができた。若い茶生産者を育てるためにも、目いっぱいの数字を書いてほしい」と高値での入札を呼び掛けた。……

トロロアオイ「生・消」で守る 寄付募り産地維持へ奮闘 埼玉県小川町
手すき和紙を作るために欠かせないトロロアオイ。ユネスコ無形文化遺産「和紙・日本の手漉(すき)和紙技術」に登録されている、「細川紙」の産地・埼玉県小川町で、トロロアオイの担い手と和紙職人の掘り起こしを目指すプロジェクトが始動した。クラウドファンディング(CF)での呼び掛けに賛同した消費者へトロロアオイの種を送り、プランターや庭で育ててもらう。栽培したものは、小川町トロロアオイ生産組合が検品して、同町の紙すき職人に納める。新たな産地の維持・活性化策に期待がかかる。(木村泰之)
消費者も栽培に参加
「『わしのねり』プロジェクト」と銘打ち、海外への国産農産物の普及などに取り組むスタイルプラス(東京都港区)が企画した。
プロジェクトを始めたきっかけは、トロロアオイの主産地・茨城県での全農家5戸が高齢化で、栽培をやめるかどうかを検討したからだ。同県の生産量(2019年)は全国1位で7・5トンとシェア75%を占める。当面は作り続けることになったが、作り手がいなくなると、全国の和紙生産地が受ける影響は大きい。
一方、小川町では1965年ごろまでトロロアオイを栽培していた。だが一時途絶え、紙すき業者は茨城県から取り寄せていた。02年に遊休農地を活用し、30戸で同組合を結成して栽培を復活させた。茨城に次ぐ3・8トン(19年)を作るが、今は10戸。最年少は65歳と担い手の年齢的な問題を抱える。
同社から企画を持ち掛けられた組合長の黒澤岩吉さん(84)は「一般の人の参加を機に、町内で栽培する人が現れてほしい。要望があれば指導に積極的に協力し、困っている和紙産地の期待に応えたい」と話す。
国内で約3割の和紙を生産する同町の紙すき職人も後継者問題を抱える。一時、数百戸あった細川紙の紙すき業者は約5戸に減少。職人を育成する町和紙体験学習センターは老朽化で、修繕費がかさんでいるという。
同社はこうした修繕費用や、新商品の開発などの費用をCFで集める。5月16日までに84万円を目標にする。栽培に不慣れな消費者のため、農家から動画で栽培指導が受けられるようにした。
川口洋一郎代表は「トロロアオイの知名度は低い。消費者と農家、紙すき職人の三位一体で生産を継承していくことが必要」と、参加を呼び掛けている。
<ことば> トロロアオイ
アオイ科の一年草。オクラに似た花をつけるため「花オクラ」とも呼ぶ。根から取る粘液を「ねり」といい、手すき和紙の繊維を均一にする添加剤として使う。日本特産農産物協会によると、1965年度には約1万5000トンの収穫量があったが、2019年度は10トンとなった。胃腸薬や菓子類、麺類のつなぎなどの食品添加物としても用いられる。
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豚熱相次ぎ注意喚起 「ワクチン過信しないで」 農水省
豚熱の発生が相次いでいる。3月31日からの半月余りで、1万頭規模の農場を中心に5事例を確認。栃木県で17日に発生した豚熱は、2事例合計の殺処分対象が約3万7000頭(関連農場を含む)と、2018年9月以降に各地で発生した13県の計67事例でも最大規模となった。農水省は「ワクチンを過信せず飼養衛生管理の徹底を」と呼び掛ける。
63例目の奈良市の事例以降、65例目の津市ではワクチン接種前の子豚の感染だったが、他の事例では接種済みの豚で感染していた。
直近5事例の農場は、いずれも感染した野生イノシシが約10キロ以内で見つかっていた。最も近いのは64例目の前橋市で、半径2キロ圏内の4地点で野生イノシシの感染を確認。ウイルス侵入リスクは高い状況だったとみられ、陽性イノシシが迫る農場ではより一層の衛生管理が必要となる。
4月9日に同省が公表した専門家による疫学調査チームの報告では、発生事例では死亡豚の増加傾向を感じても、わずかな頭数だとして県への通報が遅れたケースがあった。同省は「経営の規模にかかわらず豚に異変があれば迷わず、すぐに通報してほしい」(動物衛生課)としている。
同省は以前から「ワクチンを接種しても全ての豚が免疫を獲得できるわけでない」として、継続的な防疫体制の確立を求めている。
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RCEPの影響試算 農業一人負けが続く 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏
合意された東アジア中心の地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の影響についてわれわれが行った暫定試算の結果、日本の国内総生産(GDP)増加率が2・95%と突出して大きく、中国・韓国もわずかに増加するものの、東南アジア諸国連合(ASEAN)とオセアニア諸国はGDPが減少することが判明した。
つまり、日本がASEANなどの「犠牲」の上に利益を得る、日本の一人勝ちの構造が見えてくる。さらに、日本全体の利益ではなく、日本の中では、自動車の一人勝ちと農業の一人負けの様相を呈している。
農業への影響は軽微との大方の指摘に反して、われわれの試算では、農業生産の減少額は5600億円強に上り、米国抜きの環太平洋連携協定(TPP11)の1・26兆円の半分程度とはいえ相当な損失額である。かつ、RCEPでは野菜・果樹の損失が860億円と、農業部門内で最も大きく、TPP11の250億円の損失の3・5倍にもなると見込まれる。
一方、突出して利益が増えるのが自動車分野で、RCEPでは、TPP11よりもさらに大きく、約3兆円の生産額増加が見込まれる。これは、日本の貿易自由化の基本目標が「農業を犠牲にして自動車が利益を得る構造」だとかねて指摘してきたことが、RCEPでも「見える化」されたことになる。
なお、政府は日本の農業生産量は変わらないと試算しているが、これは関税が撤廃されても、それによる生産量の減少がちょうど相殺されるように生産性が向上する、つまり、そういう政策が打たれるので生産量は変化しないというメカニズムの産物である。「影響がないように対策するから影響はない」と言っているだけで影響試算とは言えない。
さらには、種苗の育成者権を強化し、農家の自家増殖の権利を制約することを義務化する法整備を日本が強く求めたが、各国の農民・市民の猛反発で実現できなかった。これが意味するのは、世界的な反発で他国には押し付けられなかったことを国内では種苗法改定でやってしまったという事実である。
今こそ、日本と世界の市民・農民の声に耳を傾け、「今だけ、金だけ、自分だけ」の企業利益追求のために、国内農家・国民を犠牲にしたり、途上国の人々を苦しめたりする交渉を再考する必要がある。
保護主義(銅)自由貿易・規制改革でない。市民の命と権利・生活を守るか、一部企業の利益を増やすかの対立軸だ。「自由貿易・規制改革」を錦の御旗にして、これ以上市民の命・権利と企業利益とのバランスを崩してはいけない。これ以上日本政府・企業が「加害者」になってはいけない。
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