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地鶏 遺伝子型選び増体 「天草大王」平均6・7% 農研機構など
農研機構と秋田、岐阜、熊本、宮崎の4県の畜産研究機関は18日、地鶏生産の元となる種鶏を遺伝子型で選抜することで、地鶏の発育性を高め、出荷時体重を増やすことに成功したと発表した。出荷時の平均体重は40~222グラム増えた。特定の遺伝子型を系統選抜の目印にすれば、発育性向上に役立つ。増体により、4県の地鶏合計で生産者の売り上げが、年間約6600万円増えると試算する。

「泊」は旅館、「食」は農家 おにぎり 里山料理 宿までお届け 宮城・鳴子温泉郷
宮城県大崎市の鳴子温泉郷で、農家グループが旅館に食事を届けるケータリング事業が活発化している。自ら調理して提供することで、収益の確保につなげる。旅行客の長期宿泊を狙う旅館からの需要や、温泉街で開かれる会議などの食事として需要がある他、今後は宿泊サービスと食事を分ける“泊食分離”で、訪日外国人(インバウンド)などからの需要も見込んでいる。(塩崎恵)
地元米 ファン獲得 NPO運営店
午後4時半、鳴子温泉郷の温泉旅館「宿みやま」に、木のおけに入ったおにぎり20個が届いた。同旅館が宿泊客の夕食用に注文したもので、鳴子温泉地域の農家らでつくるNPO法人鳴子の米プロジェクトが運営するおにぎり店「むすびや」が配達した。
同旅館では月に1、2回、同店におにぎりを注文する。館主の板垣幸寿さん(63)は「食事に変化を付けて、長期滞在につなげたい」と話す。
「むすびや」は、米「ゆきむすび」のおにぎりや弁当を販売する。価格は塩むすびなら1個80円から。大きさや具材は、希望に応じて対応する。旅館からの注文は、週1回程度。旅館で開かれる会議の昼食や、旅館の夕食に利用されており、宿泊客50人用の夜食の注文もあった。現在は旅館7軒が利用する。
法人の上野健夫理事長は「『ゆきむすび』を食べてもらい、ファンを獲得するチャンス」と話す。
目の前で調理 新サービスも
鳴子温泉郷では、農家が作るオードブル「農ドブル」も2019年度から本格スタートする。泊まりに来た客に里山料理を振る舞うケータリングサービスで、県産農産物を使った料理を農家が客の目の前でも作り、提供し、交流する。県内の米やトマト、養鶏農家など15人が参加する。
同サービスは農家の所得向上を模索する中、加工品などは全国の類似商品と価格競争になると感じ、地元での販路を考えていたところ、客が集まる温泉街に目を付けた。宿泊客に農産物を食べてもらい、最終的に購入してもらうことが目的だ。
18年度は、旅館1軒で試験的に行った。季節の野菜を使った煮物やサラダ、漬物など6、7種類を農家が調理し、出来たてを提供。料金は1人5000円からで、20人から予約を受け付けた。旅館では団体研修などが開かれることが多く、月2、3回の利用があり、手応えを感じている。今後は、インバウンド需要を見込む。
企画した同市の「ブルーファーム」の早坂正年代表は、海外では宿泊と食事をする場所が別であることが一般的とし、「日本だけでなく世界をターゲットにすれば、70億人の市場になる。農家が自ら調理して提供することで利幅を増やす」と意気込む。18年度の試験結果を基に、値段やサービス内容を検討していく。
農地付き空き家 取得面積に特例 市町村が 「下限」設定へ
政府は、農村移住を促すため、農地付きの空き家について、農地取得の下限面積を引き下げやすくする方針を固めた。農地法は農地の取得を認める下限面積を原則、都府県で50アール、北海道で2ヘクタールと定めている。今回、地域再生法を改正して市町村が下限面積を定められる仕組みを設ける。通常国会に改正案を提出する。
現行制度でも担い手が不足している地域では、農業委員会の判断で下限面積を1アール程度まで引き下げられる特例がある。
農水省によると、この特例で原則より低い下限面積を設定した農業委員会は2018年10月現在で全国で153あるという。ただ、特例を活用するには、農業委員会による公示などの手続きが必要となっている。
改正案では、市町村が「既存住宅活用農村地域等移住促進事業計画」を作成。空き家などの取得や研修など就農への支援に加え、下限面積の例外を記載する。特定区域内で農地を取得する際の「基準面積」を設定。農業委員会が同意すれば、この基準面積を下限として扱えるようにする。
ただし、現行同様、既存の営農に支障が出ないよう、特定区域内に①遊休農地がかなり存在する②担い手への農地集積に支障がない──を同意の要件とする方針だ。
男子も全力応援 カーリングでスポンサー JA全農
JA全農は18日、カーリング男子日本代表の公式スポンサーになると発表した。日本カーリング協会と3月末に、公式スポンサー契約を締結する。

高速バスで野菜直送 東京便スタート JA金沢市
金沢産の野菜と農産加工品を東京に運ぶ貨客混載の高速バス「産地直送あいのり便」の初便が18日、西日本JRバス金沢営業所を出発した。バスのトランクスペースを使って生産量が少ない「加賀野菜」などを輸送し、販路拡大や運送費のコスト削減、農家の所得増大につなげる。今後、月に4便程度の運行と都内各所での即売会などを計画する。
輸送されたのはサツマイモ「五郎島金時」や「加賀れんこん」「金沢春菊」などの加賀野菜と加工品各9品目の計4ケース。JA金沢市が集荷した。金沢営業所前で積み込み、JAの辰島幹博常務は「小ロットでも可能な新しい輸送事業となる。金沢産野菜の発信の広がりに期待する」とあいさつした。
バスは午前9時半に金沢駅発、午後5時22分に新宿駅着の「金沢エクスプレス2号」。野菜マーケティング販売などのアップクオリティ(東京)が運営を担当し、19日、三菱地所(同)の社員に直販する。アップクオリティによると、バス会社と連携した農産物の貨客混載輸送は9県目。担当者は「都内のレストランやスーパーからも注文を取りたい」と話した。
西日本JRバスでは農産物の貨客混載輸送は初めて。金沢営業所の丸岡範生所長は「バスは3列シートで定員が28人と少なく、トランク収納に余裕がある。定期便を使って輸送したい」とした。
JAの辰島常務は「昨年の試験輸送では鮮度が高く、速く届くと好評だった。生産量の確保が今後の課題だ。これまで以上に、若い人にも加賀野菜を栽培してもらいたい」と期待を寄せる。
TPP発効受け2月上旬分 牛肉輸入6666トン
財務省は18日、環太平洋連携協定(TPP)参加国からの2月上旬(1~10日)の牛肉輸入量を発表した。オーストラリアやカナダなどから6666トン。発効した昨年12月30日から同時期までの累計輸入量は3万9551トンとなった。
TPP参加国のうち輸入実績のあるオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、メキシコの4カ国からと考えられる。1月は前年を大きく上回るスピードで輸入されたが、2月は少し落ち着いた。
今月1日に発効したEUとの経済連携協定(EPA)ではTPP同様に、牛肉関税が38・5%から27・5%に下がった。2月上旬のEU産輸入量は48トンだった。極端に少なかった2018年2月(7トン)の7倍、17年2月(78トン)の62%を占めた。18年は568トンで、ポーランド、アイルランド、フランスなど7カ国から輸入した。

18年産輸入量105万トン 安価に手当て、簡便性… 冷凍野菜が過去最多
2018年の冷凍野菜の輸入量が105万トンと過去最高を更新した。100万トン超えは2年連続。猛暑や台風などの影響から国産生鮮野菜の市場価格が不安定となる中、安価の輸入物で手当てする動きが強まった。調理の簡便性を求める消費者ニーズから市場が拡大している背景もある。国内の野菜産地は、輸入冷凍野菜の増加に危機感を募らせる。国産を求める声は多く、冷凍野菜市場の拡大に合わせた業務向け野菜の拡大など、国内産地の基盤強化策が重要になっている。
国産の不安定を反映
財務省の貿易統計によると、18年の冷凍野菜(調製品を含む)の輸入量は、前年比4%増の105万2076トン。品目別で増加が目立つのは葉茎菜類だ。ブロッコリーは18%増の5万7330トン、ホウレンソウも14%増の5万1796トンだった。全体の4割近くを占めるジャガイモは1%増の38万1634トン。主力の北海道産の生産量が回復した後も、輸入量は高水準が続いている。
国・地域別に見ると、中国からの伸びが目立ち、7%増の46万3251トンと3年連続で過去最高を更新。米国産は3%減の31万7506トン。市場関係者は、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の発効を受け、「今後は欧州産フライドポテトの輸入が増える可能性がある」と話す。
日本冷凍食品協会は、冷凍野菜が増える要因を「年間を通じて安定価格で販売している点が評価されている」と分析。コンビニやドラッグストアでも扱う店舗が増えているという。「今後も市場拡大が続く」と見通す。
首都圏でスーパーを展開するライフコーポレーション(東京都台東区)も「昨年の(冷凍野菜の)売上高は前年を4%上回った」と話す。都内の別のスーパーでも「春先は10%以上伸びた」と説明する。
一方、国産の冷凍野菜に期待する声も高まっている。ライフは国産にこだわった冷凍野菜を販売している。安心感などから「売り上げは2割近くは伸びている」と手応えを語る。JA宮崎経済連の関連会社で、冷凍ホウレンソウなどを製造販売するジェイエイフーズみやざきの担当者は「天候不順などもあり、増える注文に応えられない状況」と原料野菜の調達に苦心しており、「チャンスを逃さないためにも生産体制の確立が急務」と課題を指摘する。

[活写] 伸ばせ金の芽 ライバルは世界
西洋野菜の一種、チコリの収穫が最盛期を迎えている。30年以上続く国内有数の産地、さいたま市では、浦和軟化蔬菜(そさい)出荷組合チコリー部会の農家3戸が共同で作業している。
キク科の多年性植物で芽を食べる。収穫期は1月下旬から4月上旬。今年は3万本の出荷を見込む。近年は埼玉県さいたま農林振興センターと組み、育て始めを遅くするなど夏の高温を避ける技術も試している。
チコリは輸入物が大部分といわれる。部会長の榎本昇さん(66)は「貿易自由化が進んでも国産の鮮度の良さは強み。違いを感じてほしい」と力を込める。(染谷臨太郎)

日本農業のグローバル化 知恵結集し輸出促せ 木之内農園会長 木之内均
日本社会は今、あらゆる分野のグローバル化について騒がれている。しかし、農業分野ではどうだろうか。
農水省の輸出促進対策などもあり、多くの日本の農産物や加工品が海を渡り、世界各地で日本食ブームを巻き起こしている。輸出対策が始まる前に、私は日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査員として、東南アジア各国を回ったことがあるが、その頃は、日本の農産物を海外で販売することなど、考えもしなかった。
だが、実際に海外諸国へ行ってみると、鳥取県の梨や青森県のリンゴが既に輸出を成功させており、高い評価を受けていた。
当時は牛海綿状脳症(BSE)のため輸出できなかったが、和牛の肉は各国から要望があり、オーストラリア産「WAGYU」が知名度を伸ばしていた。
高評価に可能性
私はこの現象に驚いたと同時に、日本農業の可能性の大きさに、夢を感じずにはいられなかった。ところが日本の農業界では、まだ海外に目を向ける人はほとんどいない状況だった。
農業は大地に足をつけ、日々こつこつと動植物の世話をすることから始まる。日本の農村は、まさしく江戸時代の鎖国状態のようだった。
あれから十数年、農水省の輸出促進策の効果もあり、今では日本の農産物が世界に通用することを、多くの人々が認識する時代となった。
だが、このことが日本の農業者や産地を本当に潤しているのだろうか。私にはそう見えない。
私が会長を務める木之内農園を含めて、いくつかの農業法人や若手農家の中には海外進出を模索している人がいることは確かである。しかし、それは点にとどまる。
日本農業のように島国で閉ざされた所で育った個人や小さな法人経営体では、現実として海外進出のリスクや投資に耐えられるだけの体力を持つ経営体は、ごく一部にすぎない。
資金もさることながら、言葉や人種、宗教や文化の違いを乗り越えて、海外で本格的に農業ビジネスを展開できる経営体は無いと言っても過言ではない。
技術は世界水準
私は若い頃にブラジルで1年以上過ごし、その後も多くの国で農業に関わる仕事をしてきた。つい先日も米国のフロリダで開かれた米国イチゴ学会に参加した。
世界の農業者や研究者、農業関連企業の方と話をすると、全員が世界の市場を見据えた上で、自分の事業の進め方を考えている。日本のように、国内市場を中心に考えている農業とは全く異なっている。
日本農業は、島国で狭い耕地や四季の変化を持続的に利用し、高温多雨なモンスーン気候の中で繊細な営農技術を培ってきた。さらに、世界で最も高品質で安定的な生産ができる技術も編み出してきた。
生産現場が育んできたこの技術と、至れり尽くせりの機械や資材メーカーの技術、そして流通やマーケティング。全ての業界が協力して日本の農業と農畜産物のプラットホームを整え、世界に向けて貢献することこそが、日本農業の本当のグローバル化であり、求められる道筋ではないかと感じてならない。
きのうち・ひとし 1961年神奈川県生まれ。九州東海大学農学部卒業後、熊本県阿蘇で新規参入。(有)木之内農園、(株)花の海の経営の傍ら、東海大学教授、熊本県教育委員を務め若手育成に力を入れる。著書に『大地への夢』。
TPP11、日欧EPAで米国 対日輸出 乳製品 半減を予測 貿易交渉 加速を訴え 酪農輸出団体が分析
米国抜きの環太平洋連携協定(TPP11)と日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)によって、2027年までに米国乳製品の対日輸出が半減し、最終的に累計54億ドル(約5900億円)の損失が出るとする報告書を米国の酪農団体が公表した。日米貿易協定交渉で他の協定と「同程度」の成果が必要としており、日本市場の開放を目指し焦りを募らせる米国側の姿勢が改めて浮き彫りとなった。
米国酪農輸出評議会(USDEC)が日欧EPAの発効に合わせ、チーズ、ホエー(乳清)、乳糖、脱脂粉乳の対日輸出の影響について、民間企業に調査を委託した。
日本は日欧EPAで、EUの輸出意欲が強いソフト系チーズで最大3万1000トン(生乳換算約39万トン)の輸入枠を設定。枠内関税を16年目に撤廃する。チェダー、ゴーダなどのハード系はTPP、日欧EPAとも16年目に関税を撤廃する。
こうした内容に基づき、米国乳製品の対日輸出は、22年までの5年間で従来の予測よりも9000万ドル(約99億円)、19%落ちると分析した。
27年までに両協定の参加国に対日輸出の半分を奪われ、累計損失額は13億ドル(約1400億円)と試算。日本の関税削減・撤廃が完了する38年までに同54億ドル(約5900億円)の損失を見込んだ。
最も大きい影響を見込むのがチーズ。人口減の中でも日本の消費量を増えるとみており、魅力的な市場と位置付ける。両協定と同じ条件なら、10年間で対日輸出量を大幅に増やせると推計する。
ただ、米国はTPPから離脱したため、関税の格差などで競争力低下が進み、10年後には対日輸出が8割減るとした。
「日本との間に(TPPや日欧EPAと)同等の協定がないままだと、米国は危険なまでに市場シェアを失う」と危機感を示した。一連の分析を踏まえて、「早期に手を打たないと市場での居場所を失う」と、日米交渉加速の必要性を指摘した。

[達人列伝](81) 赤果肉リンゴ 長野県中野市・吉家 一雄さん(62) 甘さと色 改良で両立 栄養豊富 写真映えも魅力
長野県で、30年にわたり果肉が赤いリンゴの育成に力を注いでいるのが、中野市の果樹農家、吉家一雄さん(62)だ。鮮やかな果肉が目を引く外観だけでなく、味にこだわり育種に取り組む。国内外の品種を取り寄せ、現在園地では5000種もの赤果肉リンゴの実生を試験的に栽培。5種は品種登録され、大学や研究機関からも注目されている。
吉家さんが、赤果肉リンゴと出合ったのは、県農業大学校での学生時代。当時は観賞用だったが、その果肉の美しさに驚き「このリンゴがおいしかったら絶対に人気が出る」と直感した。就農後、通常のリンゴ作りと並行して、赤果肉の育種を試し続けた。
1990年ごろから本格的に品種改良に着手した。94年に、米国原産の加工用リンゴ「ピンクパール」と「紅玉」を交配し、約5年かけて結実。良好に着色したものの一つが、現在まで続く「いろどり」だ。この母種となる「いろどり」に「ふじ」を掛けたのが、「なかの真紅(しんく)」「炎舞(えんぶ)」、「ムーンルージュ」「冬彩華(とうさいか)」の4種。さらに「いろどり」と「王林」を掛けた「なかののきらめき」がある。「冬彩華」を除く5種は2018年5月、農水省に品種登録が認められた。
「赤果肉は酸っぱい」という固定概念を持たれないよう、爽やかな甘味の品種を全国区で販売。やや酸味の強いものは、優先的に市内販売や加工用に向けるなど、普及方法にも気を配る。吉家さんは「この6種を親にして、次の品種へつなげていく」と意欲を語る。目指すのは「ふじ」のように、誰もが知る品種だ。
園地には、欧州、オセアニアなど世界中から農家、研究者らが視察に訪れる。興味を示した料理人には「直接来て食べて」と誘い、その意見を育種に生かす。「オープンなやり方が、客観的な味の判断に役立ち、情報交換の場にもなる」と話す。
吉家さんは「赤果肉は栄養成分も豊かで、食卓に華を添える。話題の写真映えも強み」と、その潜在力にほれ込む。自身の農園では、現在7対3の割合で白果肉のリンゴの出荷が多いが、赤果肉の引き合いが強まり、1、2年のうちに逆転すると見込む。「世界で新品種が発表されると、悔しさよりわくわくする」と、熱意は増すばかりだ。(江口和裕)
経営メモ
園地1.8ヘクタールでリンゴを、0.7ヘクタールで桃を栽培。作業の省力化に努め、母親と妻の家族労働力だけで効率経営を実現している。
私のこだわり
「まず自分が楽しむ。すると人が楽しんでくれる。吸っては吐く呼吸と一緒で、与えることで与えられるものがある。地域の農家や若い挑戦者に、垣根なくノウハウを伝えたい」
中山間地ルネッサンス バイオマスに優先枠 雇用創出を後押し 19年度農水省
農水省は、予算に優先枠を設けて中山間地を支援する「中山間地農業ルネッサンス事業」の拡充を決めた。2種類ある関連事業の優先枠の予算規模をそれぞれ増額。その上で、バイオマス施設の整備でも、優先枠を新たに設ける。農産物にとどまらない中山間地の資源を幅広く活用し、雇用創出などを後押しするのが狙いだ。2019年度から始める。

米の農産物検査の見直し 「制度継続」望む声 産地 手法効率化 流通 規格強化を 農水省調査
米の農産物検査の見直しを巡り、農水省は、産地や流通、実需など各段階の関係者に行った調査結果を公表した。同制度への要望を尋ねたところ、現状維持を求める意見が多く、同制度の廃止を求める回答はほとんどなかった。一方、検査員の確保に課題がある実態を踏まえ、産地からは検査の効率化を求める声も上がった。ただ、流通関係者は検査規格の強化を求める傾向となった。
同調査では、「生産者」「集荷事業者」「登録検査機関」「米卸」「米穀店」「炊飯事業者」の6段階の関係者に加え、「都道府県」に対し、同制度への要望を選択肢で尋ねた。
炊飯事業者は同制度について、「現状のままでいい」が43%で最多となった。炊飯事業者以外でも、全ての関係者で現状維持の回答が上位となった。一方、「(同制度の)全面的な廃止」を求める回答はどの関係者でも0~3%にとどまった。ほぼ全ての関係者が基本的に同制度の維持を求めている実態が明らかとなった。
ただ、産地からは検査の効率化を求める回答が相次いだ。「検査手法の合理化・簡素化」を回答した割合は、生産者で41%、集荷事業者で49%、都道府県で36%となり、それぞれ最多の回答となった。また、検査を行う登録検査機関では、「事務の簡素化」(49%)を求める回答が最多となった。
産地で検査員確保に課題がある実態を踏まえ、東北地方のJA関係者は「(等級などを判断する穀粒鑑定では)従来の検査員による目視鑑定に加え、機器による計測なども取り入れ、作業を効率化する必要がある」と指摘する。
一方、流通関係者からは「検査規格の強化」を求める回答が多かった。米卸で34%、米穀店で43%となり、それぞれ最多の回答だった。等級の判断に関わる基準の厳格化などを求める声がある。
同制度を巡っては、農業競争力強化支援法で今年8月までの見直し着手を明記。同省は1月下旬に産地や実需の関係者などを交えた意見交換会を開き、今回の結果を公表した。調査自体は2015年度に実施していた。

豚コレラ 一般車両 消毒始まる 愛知
愛知県は豚コレラウイルスの封じ込めのため、田原市の発生農場から半径10キロの搬出制限区域の外でも、一般車両や畜産関係車両の消毒を始めた。県は「口蹄(こうてい)疫レベルの措置」で拡散を防ごうと必死だ。
田原市に隣接する豊橋市では、15日夜から①畜産関係車両の消毒②国道一帯に消毒液を散布③消石灰、または、消毒マットを敷設──を講じる。豊橋市の3カ所に設置した畜産関係車両の消毒ポイントは、24時間体制で稼働する。
作業員によると、週末のため関係車両の数は少ないものの「通過時には必ず立ち寄ってくれる。意識も高まっている」と話す。消毒後は証明書に、どこで何時に消毒したかを明記する。
幹線道路につながる道路6カ所にも、消石灰や消毒マットを設置し、消毒液の散水車も整備した。一般車両も消毒する。
県は16日、発生農場から半径3キロ未満の移動制限区域にある20農場について、立ち入り検査と血液検査の結果、異常はなかったことを確認した。同区域には発生農場を含めて35農場があり、15農場は関連農場として殺処分が進んでいる。
液体ミルク 災害用へ備蓄続々 国内製造・販売も加速
国内での製造・販売が解禁された乳児用液体ミルクを災害用に備蓄する動きが自治体で出ている。災害時に乳幼児を守るためとし、東京都文京区や群馬県渋川市、大阪府箕面市が2019年度予算案に盛り込んだ。国内メーカーも製造・販売の準備や商品化の検討に入っており、今後各地の自治体で備蓄の動きが活発化しそうだ。
乳児用液体ミルクは粉ミルクのように湯で溶かす必要がなく、災害時にも、すぐに乳児に飲ませられる。11年の東日本大震災、16年の熊本地震の際に海外からの救援物資として持ち込まれ、関心を集めた。日本では昨年8月に厚生労働省が製造・販売を解禁した。
東京都文京区は昨年11月に区内の私立大学4校や製造メーカー、出版社と共同事業体(コンソーシアム)を形成。4校を妊産婦、乳児向けの救護所に指定し、災害時に乳児160人が1日半利用できるよう、125ミリリットル入り液体ミルクパック2000個と使い捨ての哺乳瓶を備える。新年度予算案に備蓄関連費用で260万円を計上した。
群馬県渋川市も2月下旬開会予定の市議会に提案する新年度予算案に備蓄費用として約56万円を計上する方針を固めた。紙パック(125ミリリットル)入りの液体ミルクを3日分として420本、保健センターに備蓄する。
大阪府箕面市も19日開会の市議会に国産の乳児用液体ミルクを備蓄する費用12万7000円を盛り込んだ予算案を提出する。常時600個(1個125ミリリットル)を公立保育園に備蓄する。
乳児用液体ミルクの製造・販売の動きも加速する。江崎グリコや明治が製造に向け準備を進める他、森永乳業や雪印メグミルクが商品化を検討する。渋川市の担当者は「製造メーカーが増えることで価格や質の向上が期待され、液体ミルクの備蓄を検討する自治体は今後増えるのではないか」とみる。
農政運動 成果活用を 自己改革で与党決議、 農業予算増… 18年 全中まとめ
JA全中は、2018年にJAグループが行った農政運動の主な結果をまとめた。前年を上回る予算額の確保や、JAの自己改革を後押しする与党の決議採択などを成果と強調。「JAグループの要望、考えが反映された政策や予算が確保できた」と総括し、積極的な活用を呼び掛ける。
共済連 次期3カ年で考え方表明 利用者との関係強化
JA共済連は16日、JA共済の次期3カ年計画(2019~21年度)の基本的考え方を明らかにした。重点取り組み事項として、①契約者数の確保に向けた生命保障を中心とする保障提供の強化②新たなJAファンづくりに向けた農業・地域に貢献する取り組みの強化③事業の効率化・契約者対応力の強化と健全性の向上──を盛り込んだ。中長期的には組合員・利用者との関係を強化し、強固な事業基盤を確保するとともに、新技術を活用したり他事業とも連携したりしながら保障の提供を拡充する。
佐藤綾音さん(山形)大臣賞 農大校発表会
全国農業大学校協議会は16日、2018年度全国農業大学校等プロジェクト発表会・意見発表会の表彰式を東京都内で開いた。最高位の農水大臣賞に、山形県立農林大学校2年の佐藤綾音さんを選んだ。佐藤さんは「食品残さの飼料化で酪農経営の所得向上を目指す!」を発表。緑茶かすでベータカロテン補給飼料を開発し、乳牛の分娩(ぶんべん)間隔短縮につながったことを報告した。

[あんぐる] すき振るえ雨よ降れ 砂かけ祭(奈良県河合町)
奈良県河合町の廣瀬神社で毎年2月11日、農家役の「田人(たひと)」や参拝者が境内の砂を掛け合う、「砂かけ祭」が開かれる。砂は田畑を潤す水の象徴で、激しく飛び交うほど十分に雨が降り豊作になると伝わる。
祭りの当日、同神社の境内に、竹としめ縄で四方を仕切って水田を模した一角が現れる。広さ約60平方メートルの砂地で、砂の掛け合いに備え、世話役の農家がトラクターで軟らかく耕した。
祭りは米作りの所作を一通り行う「殿上の儀」から始まり、その後、境内に頭巾をかぶった白装束の田人が登場。砂の水田を耕しながら一周した後、手にしたすきで集まった人々に勢いよく砂を浴びせ始めた。
参拝者も田人に砂を掛け返すのが、この祭りの特徴だ。ゴーグルや雨がっぱを身に着け、手ですくい取った砂をぶつけて“応戦”。砂の応酬は休憩を挟んで1時間ほど続き、境内に人々の歓声や悲鳴が響いた。
同県橿原市から友人と訪れた吉田緑さん(60)は「見物客に砂を掛ける祭りなんて聞いたことない。逃げ回ったが砂だらけになった」と笑った。
廣瀬神社は紀元前89年創建と伝わり、日本書紀にも名が残る。675年には雨乞いや豊作祈願の祭りを行っていたとする記録もある。
宮司の樋口俊夫さん(71)は「この辺りは昔からは雨が少ない。水を求める農家の思いが祭りを生んだのだろう」と話す。
祭りの終盤には、地元産のもち米で作り、農家らが「田」の文字を押印した餅と、厄よけになる松葉をわらで巻いた松苗をやぐらからまき、五穀豊穣(ほうじょう)を願った。
世話役の一人で、稲作農家の山崎清兆さん(80)は「1000年以上受け継いだ祭りを次の世代に伝えるのが私たちの務め。砂に勢いがあったので、今年も豊作が期待できそうだ」と話した。(富永健太郎)

停電、断水に備え 酪農災害対応で手引 北海道
昨年9月の北海道地震による道内全域の停電で酪農に大きな被害が出たことを踏まえ、道は酪農家やJAの災害対応のマニュアルをまとめた。被災の経験を参考に、自家発電での搾乳に必要な電力を把握する方法や発電機の扱い方、断水時の備えなどを示す。今後、JAを通じ道内の全酪農家に配る。
条件想定、作業手順も
大規模停電では搾乳が滞り乳房炎が発生した他、自家発電装置のない乳業工場は操業を停止。道の推計では、集出荷できなかった生乳は2万3000トンを超える。停電を経験した酪農家の間では自家発電機を整備する動きが広がっている。
マニュアルは、まず搾乳などに必要な電力を把握することが重要だと指摘。使用電力が大きいほど、発電機などへの投資額も増える。経営に合った発電規模を決めてから設備を整えるよう呼び掛ける。
停電時に想定するパターンは①通常通り②生乳を出荷できるよう搾乳と生乳冷却③搾乳だけ──の三つ。動かす機械類の消費電力を合計し、その1・2倍ほどの能力を持つ発電機を備える。バルククーラーなど一部の機械は、起動する時に電力使用が増えることも計算に入れる。
発電機の調達では、「購入」「レンタル」「他の生産者と共同利用」「JAのものを利用」などから最適なものをあらかじめ選定する。
発電機を使い始めるための作業手順も示した。「電源切替開閉器」を通じて配電盤とつなぐ方法などを図で示す。
断水への備えでは、牛の飲み水や機械の洗浄に必要な水の量の計算法を示した。過去には、設備が不十分で、給水車が来ても貯水できない例が多発したと指摘。ポリタンクなどに加え、ビニールシートとコンテナなどで簡易貯水槽ができることも紹介する。
道は、個々の酪農家だけでなく、地域全体の停電対策の検討にも活用されることを期待。「JAなどが地域の酪農家に災害対策を働き掛けるきっかけにしてほしい」(畜産振興課)とする。3月中に、道のホームページに掲載する予定だ。