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全農の「JA支援」 収支改善を「一体で」 部門またぎ相談機能発揮へ
JA全農は19日、JA経済事業の収支改善で経営基盤強化を後押しする「JA支援」について、2022年度からの次期中期3カ年計画の取り組み方向を公表した。JAと全農が一体的に取り組む状態を「目指したい姿」と位置付け、JA全体を捉えた支援に向けて、全農は事業部門を横断した相談機能の発揮を目指す。
中期3カ年計画公表
同日、JA支援の加速に向けて、県本部の幹部・担当者らを対象に開いた全国会議で、本所のJA支援課が説明した。……

宇治茶の初取引 平均1キロ1万1187円
2021年産の宇治新茶の初市が19日、京都府城陽市のJA全農京都茶市場であった。平均価格は煎茶1キロ1万1187円と、新型コロナウイルス禍による需要減退で異例の安値だった昨年の8512円を大きく上回った。最高値は和束町産の手もみ茶で1キロ18万8888円(昨年10万円)と、資料の残る2000年以降で最高価格となった。宇治市の中村藤吉本店が落札した。
初市に先立ち、JA全農京都の中川泰宏会長が「昨年は茶農家にとって厳しい売り上げとなったが、茶商の皆さんの支援で、何とか今年の初市を迎えることができた。若い茶生産者を育てるためにも、目いっぱいの数字を書いてほしい」と高値での入札を呼び掛けた。……

トロロアオイ「生・消」で守る 寄付募り産地維持へ奮闘 埼玉県小川町
手すき和紙を作るために欠かせないトロロアオイ。ユネスコ無形文化遺産「和紙・日本の手漉(すき)和紙技術」に登録されている、「細川紙」の産地・埼玉県小川町で、トロロアオイの担い手と和紙職人の掘り起こしを目指すプロジェクトが始動した。クラウドファンディング(CF)での呼び掛けに賛同した消費者へトロロアオイの種を送り、プランターや庭で育ててもらう。栽培したものは、小川町トロロアオイ生産組合が検品して、同町の紙すき職人に納める。新たな産地の維持・活性化策に期待がかかる。(木村泰之)
消費者も栽培に参加
「『わしのねり』プロジェクト」と銘打ち、海外への国産農産物の普及などに取り組むスタイルプラス(東京都港区)が企画した。
プロジェクトを始めたきっかけは、トロロアオイの主産地・茨城県での全農家5戸が高齢化で、栽培をやめるかどうかを検討したからだ。同県の生産量(2019年)は全国1位で7・5トンとシェア75%を占める。当面は作り続けることになったが、作り手がいなくなると、全国の和紙生産地が受ける影響は大きい。
一方、小川町では1965年ごろまでトロロアオイを栽培していた。だが一時途絶え、紙すき業者は茨城県から取り寄せていた。02年に遊休農地を活用し、30戸で同組合を結成して栽培を復活させた。茨城に次ぐ3・8トン(19年)を作るが、今は10戸。最年少は65歳と担い手の年齢的な問題を抱える。
同社から企画を持ち掛けられた組合長の黒澤岩吉さん(84)は「一般の人の参加を機に、町内で栽培する人が現れてほしい。要望があれば指導に積極的に協力し、困っている和紙産地の期待に応えたい」と話す。
国内で約3割の和紙を生産する同町の紙すき職人も後継者問題を抱える。一時、数百戸あった細川紙の紙すき業者は約5戸に減少。職人を育成する町和紙体験学習センターは老朽化で、修繕費がかさんでいるという。
同社はこうした修繕費用や、新商品の開発などの費用をCFで集める。5月16日までに84万円を目標にする。栽培に不慣れな消費者のため、農家から動画で栽培指導が受けられるようにした。
川口洋一郎代表は「トロロアオイの知名度は低い。消費者と農家、紙すき職人の三位一体で生産を継承していくことが必要」と、参加を呼び掛けている。
<ことば> トロロアオイ
アオイ科の一年草。オクラに似た花をつけるため「花オクラ」とも呼ぶ。根から取る粘液を「ねり」といい、手すき和紙の繊維を均一にする添加剤として使う。日本特産農産物協会によると、1965年度には約1万5000トンの収穫量があったが、2019年度は10トンとなった。胃腸薬や菓子類、麺類のつなぎなどの食品添加物としても用いられる。
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豚熱相次ぎ注意喚起 「ワクチン過信しないで」 農水省
豚熱の発生が相次いでいる。3月31日からの半月余りで、1万頭規模の農場を中心に5事例を確認。栃木県で17日に発生した豚熱は、2事例合計の殺処分対象が約3万7000頭(関連農場を含む)と、2018年9月以降に各地で発生した13県の計67事例でも最大規模となった。農水省は「ワクチンを過信せず飼養衛生管理の徹底を」と呼び掛ける。
63例目の奈良市の事例以降、65例目の津市ではワクチン接種前の子豚の感染だったが、他の事例では接種済みの豚で感染していた。
直近5事例の農場は、いずれも感染した野生イノシシが約10キロ以内で見つかっていた。最も近いのは64例目の前橋市で、半径2キロ圏内の4地点で野生イノシシの感染を確認。ウイルス侵入リスクは高い状況だったとみられ、陽性イノシシが迫る農場ではより一層の衛生管理が必要となる。
4月9日に同省が公表した専門家による疫学調査チームの報告では、発生事例では死亡豚の増加傾向を感じても、わずかな頭数だとして県への通報が遅れたケースがあった。同省は「経営の規模にかかわらず豚に異変があれば迷わず、すぐに通報してほしい」(動物衛生課)としている。
同省は以前から「ワクチンを接種しても全ての豚が免疫を獲得できるわけでない」として、継続的な防疫体制の確立を求めている。
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RCEPの影響試算 農業一人負けが続く 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏
合意された東アジア中心の地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の影響についてわれわれが行った暫定試算の結果、日本の国内総生産(GDP)増加率が2・95%と突出して大きく、中国・韓国もわずかに増加するものの、東南アジア諸国連合(ASEAN)とオセアニア諸国はGDPが減少することが判明した。
つまり、日本がASEANなどの「犠牲」の上に利益を得る、日本の一人勝ちの構造が見えてくる。さらに、日本全体の利益ではなく、日本の中では、自動車の一人勝ちと農業の一人負けの様相を呈している。
農業への影響は軽微との大方の指摘に反して、われわれの試算では、農業生産の減少額は5600億円強に上り、米国抜きの環太平洋連携協定(TPP11)の1・26兆円の半分程度とはいえ相当な損失額である。かつ、RCEPでは野菜・果樹の損失が860億円と、農業部門内で最も大きく、TPP11の250億円の損失の3・5倍にもなると見込まれる。
一方、突出して利益が増えるのが自動車分野で、RCEPでは、TPP11よりもさらに大きく、約3兆円の生産額増加が見込まれる。これは、日本の貿易自由化の基本目標が「農業を犠牲にして自動車が利益を得る構造」だとかねて指摘してきたことが、RCEPでも「見える化」されたことになる。
なお、政府は日本の農業生産量は変わらないと試算しているが、これは関税が撤廃されても、それによる生産量の減少がちょうど相殺されるように生産性が向上する、つまり、そういう政策が打たれるので生産量は変化しないというメカニズムの産物である。「影響がないように対策するから影響はない」と言っているだけで影響試算とは言えない。
さらには、種苗の育成者権を強化し、農家の自家増殖の権利を制約することを義務化する法整備を日本が強く求めたが、各国の農民・市民の猛反発で実現できなかった。これが意味するのは、世界的な反発で他国には押し付けられなかったことを国内では種苗法改定でやってしまったという事実である。
今こそ、日本と世界の市民・農民の声に耳を傾け、「今だけ、金だけ、自分だけ」の企業利益追求のために、国内農家・国民を犠牲にしたり、途上国の人々を苦しめたりする交渉を再考する必要がある。
保護主義(銅)自由貿易・規制改革でない。市民の命と権利・生活を守るか、一部企業の利益を増やすかの対立軸だ。「自由貿易・規制改革」を錦の御旗にして、これ以上市民の命・権利と企業利益とのバランスを崩してはいけない。これ以上日本政府・企業が「加害者」になってはいけない。
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生乳増産2年連続 都府県も8年ぶり 指定団体20年度
中央酪農会議(中酪)によると、2020年度の指定生乳生産者団体(指定団体)の受託乳量(生産量)は2年連続で前年を上回り、700万トン台に回復した。北海道がけん引し、都府県でも増頭対策の効果が現れ、8年ぶりに前年を上回った。今後、増産を軌道に乗せるには都府県の酪農基盤強化や、指定団体による需給調整機能の発揮が引き続き求められる。
指定団体の受託乳量は国内生乳生産量の9割強を占める。20年度の受託乳量(うるう年修正後)は前年比1・4%増の707万トンとなり、4年ぶりに700万トンを超えた。北海道は2・3%増の401万トンで、初めて400万トンを突破した。乳用雌牛が増加し、粗飼料も良く、1頭当たり乳量も安定していた。
都府県は0・3%増の306万トン。中国地方が6%増と最も拡大し、近畿や九州も1、2%増産した。最大の関東は0・6%減だったが、2月以降に生産が伸び、当初の見通しから上振れした。
生乳生産量が上向く中で課題もある。全国的にメガファームが増産をけん引するものの、小規模・家族酪農の離農が進み、空き牛舎も目立つ。都府県酪農の基盤を強化するため、関東生乳販連は「第三者継承など担い手確保に向け、実態に即した支援が必要」(迫田孝常務)と指摘する。
新型コロナウイルス下の生乳流通では、指定団体が全国連や乳業メーカーと緊密に連携し、生乳廃棄を回避したことに成果があった。その結果、20年度の脱脂粉乳・バター向けは増加し、年度計では6・6%増の169万トンに拡大。家庭需要が伸びた飲用向けは1・4%増の325万トン、業務需要の低迷で生クリーム等向けは4・8%減の125万トンと縮小した。
コロナ禍の生乳需給への影響は長期化する見込み。業務需要の回復はいまだ不十分で、バターなど乳製品在庫が積み上がる課題も残る。不透明な消費環境の下で増産を軌道に乗せるには、「需給調整の要である指定団体の機能発揮が重要」との声が強い。
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脚立転落事故防げ レバー式開き止め 操作簡単、後付け可 農研機構
農研機構は、果樹などで使う脚立の転落事故を防ぐため、開き止め装置を考案した。指先のレバー操作により従来の半分以下の時間で、開き止めの解除とセットができる。既存の脚立に後付けできる点も特徴だ。試作品を使って改善しながら商品化を目指す。
脚立は果樹園で広く利用されているが、落下などの事故が多発している。農家の場合、はさみを持って上ることが多いので、転落すると重大事故につながることがある。
農研機構・革新工学研究センター(現・農業機械研究部門)は、誤った脚立の使用が事故につながっている可能性があるとして、リンゴ、ミカン、柿の農家で使用実態を調査。誤使用をしている作業者は95%に上った。
特に、開き止めを緩んだ状態で使っていた例は68%。使っていない人も14%いた。
果樹園では脚立を移動のたびに地形に合わせた後支柱の角度の調節が必要。開き止めのチェーンをぴんと張った状態に掛け替えるのに手間がかかることが誤使用の原因と捉え、チェーンに代わる開き止め装置を考えた。
装置は、三脚型脚立のはしご側の頂上部分と後支柱をL字形に結ぶ構造。連結部に入れたラチェット機構で後支柱の自由な開閉と開き止め機能を両立させた。ラチェットは歯車と歯止めの爪を組み合わせ、片方にだけ回転させる機構。逆に回すときは爪を外す。
実際に10人に使ってもらったところ、開き止めの調節にかかる時間は、チェーン式を56%短縮できた。「開き具合の調節が面倒でない」「こつが分かれば使いやすい」などの評価が聞かれた。開発チームでは使い勝手を試しながら、軽量化や耐久性の改善をしていく。
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米「星空舞」 安定供給へ 原種の生産拠点が竣工 鳥取
鳥取県は、鳥取市の県農業試験場内で、県ブランド米「星空舞」の原種生産合理化施設の竣工(しゅんこう)式を開いた。生産者へ供給する種もみの原種を生産する拠点。扱う品種を限定し、病原菌や異型などの混入を防ぐ管理の徹底で、高品質な原種を生産する。JAグループ鳥取と連携し、「星空舞」の栽培面積拡大に対応していく。
県内では、同試験場が3ヘクタールの圃場(ほじょう)から原種を採取し、これまでは2カ所の生産施設で個体を選抜していた。ただ、扱う品種数が増え、コンタミ(異品種混入)リスクが高まっていた。
新施設で扱う品種は主に「星空舞」に限定する。総事業費は7357万円で国の交付金も利用した。約200平方メートルの施設内に、縦型遠赤外線乾燥機や保管用冷蔵庫、加温式育苗器などを設置。「星空舞」専用のコンバインも新たに導入した。原種は国府町種子生産組合などへ供給する。
2019年に本格デビューした「星空舞」の栽培面積は21年産で19年産比3倍の1150ヘクタールを計画。JA鳥取県中央会の栗原隆政会長は「生産者と消費者から喜ばれる『星空舞』の早期のブランド化へ、施設を有効活用したい」と意気込んだ。
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[あんぐる] 心華やぐ幻想空間 「梨灯り」(奈良県五條市)
梨の古い産地である奈良県の大阿太高原で、満開になった梨の花をライトアップするイベント「梨灯(あか)り」が1日から17日にかけて五條市の農園で開かれた。園地は、まるで万華鏡のように彩られ、来場者は写真撮影や散策を楽しんだ。
イベントは、大淀町の梨農家などでつくるボランティア団体「梨の花プロジェクト委員会」が主催した。会場の梨園は同会のメンバーが荒廃した1ヘクタールを、募金を募って共同で購入したものだ。花が見やすいよう梨棚を撤去するなど、花の観賞に特化し、「梨の花農園 RIKAEN」として再生した。夜でも花を満喫してもらおうと、2017年からライトアップを続けている。
今年は、会期中の11日に、花に囲まれた「梨の花ウエディング」を催し、2組の夫妻が花言葉の「和やかな愛情」を誓った。
開放された梨畑で写真撮影や散策を楽しむ家族連れの姿が目立った
大淀町を中心に広がる大阿太高原は、明治時代から続く近畿地方で最大級の梨の産地。しかし、高齢化や担い手不足で、100戸以上あった農家は、約45戸まで半減した。同地の春の風物詩だった一面に白い花が広がる光景も、“隙間”が目立つようになった。
桜の名所である吉野町のように大淀町を梨の花で盛り上げようと、14年から梨の花を軸とした地域おこし活動に取り組んでいる。
同園は花の見頃が終わっても、ワークショップや音楽会、バーベキューなど、通年でイベントを積極的に開催。18年には梨スイーツを提供するカフェ「あだむる」を園内に開き、地域の交流拠点にもなっている。
同会代表で同町の梨農家の中元悦子さん(70)は「日本で伝統的に好まれる桜や梅、桃の花と同じように、梨の花を愛(め)でる文化を根付かせることが夢。町中を白い花でいっぱいにする」と笑顔を見せる。(釜江紗英)
「あんぐる」の写真(全4枚)は日本農業新聞の紙面とデータベースでご覧になれます
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日本の身の丈 大国モデルと決別を 法政大学教授 山口二郎
新型コロナウイルス対策を巡る政府の失態を見ていると、日本はもはや科学技術の面でも行政能力の面でも、大国とは言えないということを痛感する。
コロナ禍で露呈
まず、ワクチンを自前で作れない国だったとは、ショックだった。国費を投入して開発したはずのCOCOA(感染接触確認アプリ)も不具合が見つかり、役に立たなかった。政治家や官僚の腐敗や自己中心主義は表面的な現象で、深層においては日本の政府が一定の目的のために適切な政策を立案し、責任を持って遂行する能力を失っていると感じざるを得ない。
20世紀後半の繁栄を知る者にとってはつらいことだが、私たちは大国ではなくなりつつあるという現状認識を基に、日本の将来を構想するしかない。もちろん、科学技術分野で世界の先端を切り開く力を取り戻すことが望ましい。そのためには、目先の金もうけのためにすぐ役立つ技術の開発に資金をつぎ込むのではなく、植物を育てるように根を大事にする政策が必要となる。
自給率向上こそ
もう一つは、大国でなくても国民が生きていけるように、社会、経済の仕組みを徐々に転換することが必要である。20世紀後半の繁栄の時代には、日本は先進的な工業技術を生かして輸出で利益を上げて、食料と原材料を輸入するというモデルで経済大国にのし上がった。産業の再生を期待しつつも、これからは大国ではない生き方を身に付けることが、国民の安全のために不可欠である。そのためには、食料とエネルギーの自給率を高めることが必要である。
エネルギーを自給するためには風力、太陽光などの再生可能エネルギーを飛躍的に拡大することがカギとなる。化石燃料の支払いに充てていたお金が手元に残れば、それだけ国民は豊かになれる。
食料自給率の向上のためには、農業の強化がカギとなる。今の政府は希少な果実や和牛など高価格の食品の輸出を奨励している。そうした収益を追求する農家がいてもよいが、脱大国の農業は国民を養う基礎的な食料を供給することを基本的役割とすべきである。
料理研究家の土井善晴氏は「一汁一菜」をキーワードに、自然の恵みを取り入れた単純でおいしい食事を基にしたライフスタイルを提唱している。脱大国の農業は土井氏の言う日々のシンプルな食事と結び付いてほしいと思う。
今年は衆院総選挙の年である。日本人の生活のありようを考え直すという構想力が問われる。政党の自由闊達(かったつ)な議論を期待したい。
やまぐち・じろう 1958年岡山県生まれ。東京大学法学部卒。北海道大学教授などを経て2014年に現職。現実政治への発言を続け、憲法に従った政治を取り戻そうと「立憲デモクラシーの会」を設立。近著に「『改憲』の論点」(集英社新書)
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米在庫 余剰感強まる 業務需要低迷 21年産契約に影響
消費不振で米の民間在庫量が高止まりし、余剰感が強まっている。特に新型コロナウイルスの影響が大きい業務用銘柄を抱える産地を中心に、月を追うごとに在庫状況が悪化。卸は米の先安観から仕入れを必要最小限にとどめており、21年産の契約にも影響が出始めている。
農水省によると2月末の民間在庫量は……
コロナ下 消費行動変化 「食品保存増」2割 自宅で料理増3割 JCA調査
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、米や肉、野菜など食品の各品目で、保存量が増えた消費者が2割に上ったことが、日本協同組合連携機構(JCA)の2020年度の調査で分かった。自宅での料理回数が増えた人は3割いた。外出自粛や在宅勤務の増加が背景にある。食品の販売は、消費者の生活様式変化に対応した戦略が鍵になる。
JCAの「農畜産物等の消費行動に関する調査」で、毎年実施する。20年度は20年8~9月にインターネットで全国の2159人が回答した。
自宅での食品(冷凍を含む)の保存量が増えたと……

和牛 世界に向け発信 動画150万回再生 JFOODOの動画話題
和牛の魅力を台湾、香港の消費者に発信しようと、日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)が作成した動画「和牛100%.TV」が話題だ。タレントの照英さんが産地を巡り、和牛のおいしさの秘密に迫る内容で、「日本和牛こそが他国産WAGYUとは異なる本物の和牛であることを効果的に伝えたい」と狙う。
山形、滋賀、宮崎、鹿児島の生産者らが登場する産地編と、おいしい食べ方を紹介するクッキング編の計8本を動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開し、合計再生回数は約150万回に上る。特に産地編の再生回数が多く、日本の和牛生産への関心の高さがうかがえる。
各回とも5分ほどの動画で、生産者の和牛に懸ける思いや、徹底したトレーサビリティー(生産・流通履歴を追跡する仕組み)などを紹介。宮崎編では、輸出向け認定施設として和牛の食肉処理などを手掛けるミヤチクや、宮崎県立高鍋農業高校の生徒らが出演する。
台湾、香港向けの字幕付きだが、音声は日本語のため、国内の消費者も楽しめる。飼料の工夫や、子牛ごとに与える乳量を管理できる哺乳ロボットの活用など、各生産者の飼養管理も学べる。
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広島産ハッサクサワー新発売 全農
JA全農は20日、広島県産のハッサクとレモン果汁を10%使用した「広島県産はっさく&レモンサワー」(350ミリリットル、アルコール度数4%)を新発売する。JA広島果実連と共同開発した。
ハッサク特有のほのかな苦味を生かし、県産レモンの酸味を組み合わせ、風味豊かな味わいに仕上げた。
高糖度の果実の開発競争の中で、昔ながらの味わいが魅力のハッサクの消費は落ち込み、収穫量は最盛期の15%にまで減少。全農の担当者は「ハッサクを食べたことがない若い人にも訴求していきたい」と意気込む。
価格は183円。中国エリア、近畿、四国、九州のセブン─イレブン約6800店で先行販売する。
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ペルーで新パナマ病 バナナの大敵、まん延防止へ
ペルー政府は、バナナの大敵である新パナマ病(TR4)が、最北部に位置するスヤナ州のバナナ農園で確認されたと発表した。ペルー全土を対象に植物防疫対策の緊急事態宣言を発令し、隔離の徹底などまん延防止に取り組む方針だ。
南米ではコロンビアで2年前にTR4の侵入が確認され、今回ペルーに広がった。世界最大のバナナ輸出国であるエクアドルが両国に挟まれる所に位置し、南米バナナ業界では大きな衝撃が走っている。
世界のバナナは、1950年代にフザリウム菌によるパナマ病によって主流品種の「グロスミシェル」が一掃された。現在は抵抗品種の「キャベンディッシュ」がほとんどを占める。ところが、フザリウム菌の別の系統TR4による新パナマ病が80年代になってアジアから猛威を振るい始め、アフリカなどに広がり、南米に侵入した。
栄養繁殖の商業用バナナは世界中でTR4に弱い「キャベンディッシュ」一色のため、感染の広がりを防ぎにくい。日本が多くを輸入するフィリピンでもTR4は深刻な打撃を与え、園地の改廃などが進んでいるという。
南米の研究者らとTR4の研究をしている東京農工大学の有江力教授は、人や車の往来で汚染された土壌を通じて感染が広がり「バナナの生果実から病気がうつる心配はないだろう」と指摘する。
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大豆生産伸び悩み 政府目標の6割 収量・面積とも課題
政府が増産を目指す大豆の収穫量が足踏み状態にある。農水省の調査によると、2020年産は21万8900トンで、前年比1%の増加にとどまった。収量が安定せず、作付面積が伸び悩んでいることも影響。政府の生産努力目標は30年度に34万トンだが、6割の水準にとどまる。目標達成には収量・面積の両面でてこ入れが必要だ。
政府は食料・農業・農村基本計画で、主要品目の生産努力目標を設定している。大豆は作付面積17万ヘクタール、10アール当たり収量200キロを前提に、30年度に34万トンとした。だが大豆の収穫量は、過去10年で最も多かった17年産でも25万3000トン。同年以降は、3年連続で21万トン台にとどまる。
20年産の10アール収量は前年を2キロ上回ったものの、154キロどまり。作付面積は14万1700ヘクタールで、3年連続で減った。収穫量は努力目標の64%の水準だ。米など他の品目と比べても、特に努力目標との差が大きく、同省は「面積も10アール収量も足りない」(穀物課)と受け止める。
10アール収量は、豊凶による変動が大きい。過去10年間の最高は12年産の180キロだが、近年は150キロ前後で推移している。不安定な収量は実需者が国産大豆を敬遠する要因になっており、輸入品からの需要奪還に向けても安定が欠かせない。
作付面積も増えていない。16、17年産では15万ヘクタール程度だったが、米価の回復に伴い、転作大豆から主食用米に回帰した影響もあるとみられる。米需給が緩和局面となる中、転作作物としてどう推進するかが課題となる。
同省は20年度第3次補正予算で、主食用米から大豆などへの作付け転換を促す「水田リノベーション事業」を用意。同予算と21年度予算では、技術導入などを支援して安定生産を後押しする「水田麦・大豆産地生産性向上事業(麦豆プロ事業)」も措置した。同事業は5月14日まで2次募集している。
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移住・二地域居住したい 都民4割が関心 首位は鎌倉・三浦(神奈川) リクルート調査
東京都民の4割が地方移住や二地域居住に関心があるとの調査を、民間会社がまとめた。移住や二地域居住に関心のある都民に住みたいエリアを聞き、ランキングもまとめた。1位は、神奈川県の鎌倉・三浦エリアで、「街ににぎわいがある」を理由に挙げた人が多かった。
調査は、(株)リクルートが1、2月、東京都在住の20~69歳の男女を対象にインターネットで行った。東京駅から50キロ圏外を「地方」とし、希望するエリアを三つ選んでもらった。回答数は、事前調査は1万5572人で、本調査は1万572人。
事前調査で移住・二地域居住に関心があるか聞いた。「強い関心がある」が7%、「関心がある」が25%だった。移住・二地域居住が決まっている人や実施に向けて行動している人を含めると、4割が関心を持っていた。
本調査で、関心があると答えた人に理由を聞くと「自然が豊かな環境で生活したい」が56%で最も多かった。「リラックス・リフレッシュできる時間・空間がほしい」が41%、「住居費を下げたい」が31%の順だった。
ライフステージ別では、「自然が豊かな環境で暮らしたい」と答えた人は、子育てを卒業した60歳以上の夫婦世帯と、子どものいる家族世帯で多かった。単身の女性は「東京での生活・仕事に疲れた」が多かった。
移住などに関心があると答えた人に、希望するエリアも聞いた。選んだ理由は、街のにぎわいや医療・子育て環境、地域の自然環境などが多い。観光地として有名なエリアなどが人気を集めた。
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米国産牛肉SG終了 関税38・5→25%に 発動基準協議 本格化へ
日米貿易協定に基づき、米国産牛肉に発動していた緊急輸入制限措置(セーフガード=SG)が16日までで終了した。日米両政府は6月中旬までの合意を目指し、発動基準の見直し協議を進めている。2020年度の輸入量や、SGによる輸入の抑制効果などを踏まえ、今後、協議が本格化するとみられる。
同協定に基づく米国産牛肉の20年度の輸入量は、3月上旬までにSG発動基準の24万2000トンを超過。……

即駆け付け農機修理「Dr.car」出発 農家負担軽減 信頼構築へ JAぎふ
JAぎふは4月から、圃場(ほじょう)で農業機械が動かないなどのトラブルを素早く解決するため、農業機械の整備士が現場に急行する「農機のDr.car(ドクターカー)」の運用をスタートした。
農作業中に機械が故障するなどのトラブルが起こると、農家は、農機を農機センターへ持ち込むが、作業時間のロスや搬入コストなどの課題があった。……

走る、つなぐ 地域の食 [コロナが変えた日常]
新型コロナウイルスの感染拡大で、外出自粛や飲食店の営業短縮が長期化する中、東京都三鷹市では、地域密着の宅配サービス「チリンチリン三鷹」が1周年を迎える。
JA東京むさしの直売所「三鷹緑化センター」を拠点とし、農家が生産する野菜などの生鮮食品と、地元の飲食店が作った弁当などを自転車で宅配。コロナ禍で休業を余儀なくされた人らが配達員となり、市内全域に届けている。
この仕組みに、農産物の新たな販路を探していた農家が加わることで、消費者は新鮮で安心な野菜や肉、卵などを在宅のまま買えるようになった。購入者は配達員に1回500円の支援金を支払う。
参加農家は1年で2戸から20戸に広がった。直売所にない物は配達員が協力店に立ち寄って調達。注文を受ける電話の応対は、地元の葬儀社が担当するなど、地域挙げての協力体制だ。多品目の供給ができるようになり、地元産の食材にこだわる飲食店も増えた。
市内在住の発起人、濱絵里子さん(38)は「みんなの『困った』を結び付けたら面白い展開になった。今後は野菜ごみを再び農地に返すなど、地元で活動の輪を広げていきたい」と話す。(仙波理)
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