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[東日本大震災 あなたの分も生きた10年](1) 面影胸に今日も耕す 荒れ地芽吹いたヒマワリ
少し冷たい風が潮の香りを運ぶ夕暮れ、あの人を思い出す──。
宮城県東松島市の阿部ちよ子さん(76)はハウス4棟と露地20アールで、トマトなど年間20種類の野菜を1人で作っている。残された畑を守るのが私の使命。その思いで10年を過ごしてきた。
午後6時から1時間。震災前、ちよ子さんが一日のうちで最も好きな時間だった。故・勲さん=享年72=とのウオーキングの時間だ。「今年はどんな野菜を作ろうかね」「そろそろ田植えの準備しねどな」。勲さんが話すのは農業のことばかり。その横顔が好きだった。雨や雪が降っても外に出た。ちよ子さんが雪に足を取られて派手に転び、2人でげらげら笑ったこともある。夫が差し伸べる大きく日焼けした手。「幸せな時間だった」(ちよ子さん)
薬届けねど
10年前のあの日、勲さんの薬を取りに病院に行った。……

コロナで揺れる五輪 日本の構造再点検を 思想家・武道家 内田樹
先日、日米欧6カ国を対象に行われた世論調査で、東京五輪開催に反対する回答が日英独3カ国で過半数を占めた。日本では「反対」が56%、6カ国中最多だった。米国だけが賛否とも33%で意見が割れたが、それ以外の5カ国では開催反対が賛成を上回った。開催の可否はワクチン接種の進展次第であるが、日本でのワクチン接種の遅れぶりを見る限り、国際世論が「五輪中止」を選択するのはもう時間の問題である。
相次ぐトラブル
東京五輪はそれにしてもトラブルがあまりに多かった。猪瀬直樹都知事(肩書は当時)のイスラム差別発言、安倍晋三首相の「アンダーコントロール」発言、ザハ・ハディド氏設計の競技場計画のキャンセル、国際オリンピック委員会(IOC)委員買収疑惑、シンガポールのダミー会社への送金、フランス司法当局の取り調べを受けての日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長退任、そして森喜朗会長の性差別発言による辞任……。一つのスポーツイベントでこれほど大量の失敗や不祥事が発生した事例を私は過去に知らない。たまたま不運が続いたのだろうか。
私は違うと思う。これは構造的なものだ。日本のあらゆるシステムが「制度疲労」を起こして、そこかしこで崩れ始めているのだ。
わずか30年で…
少し前まで、日本はこんな無能な国ではなかった。イベント一つでこれほどのへまをやらかすような国ではなかった。1989年、日本経済がその絶頂にあった時、1人当たり国内総生産(GDP)は世界2位、株式時価総額で世界のトップ50社のうち32社が日本企業だった。その年、三菱地所がマンハッタンの摩天楼を買い、ソニーがコロンビア映画を買った。90年の映画「ゴースト」で主人公の銀行員の喫緊の課題はビジネスに必須の日本語の習得であった。今、日本の1人当たりGDPは世界25位、世界トップ50社に名前が残っているのは1社だけである。日本語を必死で勉強している金融マンをニューヨークで見つけることは困難だろう。
わずか30年間で日本がここまで没落したことに世界はずいぶん驚いていると思う。内戦があったわけでもないし、テロが頻発したわけでもないし、恐慌に襲われたわけでもない。確かに「バブル崩壊」と2度の震災は日本社会に深い傷を残したが、それでも2010年に中国にその地位を譲るまで日本は42年間にわたって米国に次ぐ「世界第2位の経済大国」だったのである。その間に「蓄積」したはずのさまざまな知恵と技術はいったいどこへ行ってしまったのか。
日本の没落が止まらないのは「没落している」という事実を多くの国民が直視しようとしないからである。具合が悪いのに「絶好調」だと言い張っていれば、治る病気も治らない。今は五輪中止を奇貨として日本のシステムを土台から再点検する時である。
うちだ・たつる 1950年東京生まれ。思想家・武道家。神戸女学院大学名誉教授、凱風館館長。専門はフランス現代思想など。『私家版・ユダヤ文化論』で小林秀雄賞、『日本辺境論』で新書大賞。近著に『日本戦後史論』(共著)、『街場の戦争論』。
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経営継承希望DB化 全国から新規就農募る 熊本県が支援機構
熊本県は2021年度、担い手農家を長期的に確保するため、くまもと農業経営継承支援機構を設立する。高齢などを理由に、農地や農業施設といった経営資産を譲ろうと考えている農家の情報をデータベース(DB)化。将来的にはデータをホームページで公開し、全国から新規就農者を募る考えだ。
機構は県や市町村、JA、県農業会議などで構成。……

歌って踊って日本酒飲んで 農水省チャンネル新動画を公開
新型コロナウイルスの影響で落ち込む日本酒の消費を喚起しようと、農水省がユーチューブ公式チャンネル「BUZZ MAFF(ばずまふ)」で、新たな動画を公開した。同省の若手職員や酒造好適米の生産者らが次々に登場し、日本酒で乾杯を呼び掛けるダンスを全力で踊る内容だ。
日本酒造組合中央会が制作した動画「日本酒ダンス」を基に、ダンス動画で人気のユーチューバーの指導も受けながら制作し、5日に公開。その日のうちに数千回の視聴があった。
動画には、若手を中心とする同省職員40人超が出演。ラップ音楽と共に、同省の大臣室前や地方農政局の事務所など、次々に舞台を変えて踊る様子が流れる。宮城県内の酒米生産者3人も出演し、ダンスを披露している。
日本酒はコロナ禍を受け2020年は前年比で国内出荷量が11%減、輸出量は13%減。こうした苦境を背景に、ラップの歌詞では「酒米、来年は作れないかもしれない」と危機感を強調。会食が困難な中で「リモート飲み会」を呼び掛けるなどで、消費拡大を訴える。
ばずまふの運営メンバーで動画制作を提案した同省鳥獣対策・農村環境課の吉村真里菜さんは「皆が酒米や日本酒の産地が元気になることを祈りながら踊った。特に、日本酒になじみの薄い若い人たちに魅力を届けたい」という。
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リーフ茶「飲む回数増えた」 コロナ下で若者の行動に変化
若い世代(18~29歳)の26%が、新型コロナウイルス下でリーフ茶(茶葉からいれた緑茶)の飲用頻度が「増えた」と回答したことが、農水省の調査で分かった。家で過ごす時間が長くなったことや健康への関心が高まったことが背景にある。ペットボトル緑茶飲料の浸透で茶葉離れが課題だった消費に、変化が見られた。
農水省が「緑茶の飲用に関する意識・意向調査」を、昨年10月中旬から11月上旬にかけて実施し、18歳以上の男女1000人から回答を得た。
リーフ茶の飲用頻度が「増えた」と回答した人は全世代合計では14%(143人)だったが、18~29歳の世代では「とても増えた」「少し増えた」と回答した人が26%(36人)に上った。
増えた理由(複数回答)として、18~29歳世代では「自宅で食事する時間が増えたから」(67%)が最多。「自宅でくつろぐ時間が増えたから」(47%)、「健康機能性に魅力を感じたから」(44%)、「家族と過ごす時間が増えたから」(22%)と続いた。
リーフ茶飲用頻度が「増えた」と回答した全世代で、茶葉購入先(複数回答)として「増えた」のは「スーパー」(75%)、「インターネット販売」(30%)、「茶専門店」(29%)、「ドラッグストア」(21%)。
ネット購入が増えたと回答した人の割合は60代がトップ(42%)、次いで70代(36%)と高齢層の電子商取引(EC)利用の急伸も見てとれる。18~29歳の世代は33%でそれに続いた。
茶葉は緑茶飲料や他の飲料にシェアを奪われ、需要が減少している。コロナ下での業務需要の落ち込みも拍車を掛け相場が低迷し、消費喚起が課題となっている。
農水省は「リーフ茶飲用の機会増加を捉えて、茶業界には若者がさらにお茶を飲むような取り組みを期待したい」(茶業復興推進班)と話す。
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農高では基礎固め 農大校で課題研究 即戦力を育成 5年一貫教育へ 和歌山県
和歌山県は、農業系高校と農林大学校で5年間の一貫教育に乗り出す。2022年度の高校入学生から開始。高校のうちに栽培などの基礎知識や技能を身に付けてもらうことで、大学校では果樹などについての課題研究に力を入れられるカリキュラムを検討する。担い手の減少が進む中で、即戦力となる人材の育成を急ぐ。
県によると、こうした一貫教育は全国でも珍しい。……

受診結果アプリで 推移グラフ化再検査通知も 健康維持へ期待 鹿児島厚生連
鹿児島厚生連病院健康管理センターは、健康診断と人間ドックの受診者を対象に、健康管理アプリ「CARADA健診サポート」を使った情報提供のサービスを始めた。スマートフォンでいつでもどこでも結果が見られるため、日頃からの健康管理に期待がかかる。
アプリは無料で使える。……

「祇園パセリ」料理の主役に キッチンカーで発信 JA広島市
JA広島市が事務局を務める祇園町農事研究会パセリ部会は、特産「祇園パセリ」のキッチンカーでのPRを始めた。2月に広島市で開かれたマルシェでデビューして「祇園パセリ」やパセリスムージーを販売。栽培の歴史やレシピなどを掲載したリーフレットを配った。県内のイベントなどにも出店を予定し、メニューを増やして料理の主役としてパセリをアピールする。
「祇園パセリ」は、葉が柔らかくて細かく縮れ、濃い緑色が特徴。……

[あんぐる] どこかに君の姿を 東日本大震災10年(福島県大熊町)
「ずっと汐凪(ゆうな)が呼んでいるような気がするんだよね……」。東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故から10年、ずっと娘の姿を捜し続ける男性がいる。木村紀夫さん(55)。第1原発から約4キロ南にあった福島県大熊町の自宅が津波に襲われ、父と妻、当時7歳の次女を失った。以来、木村さんは「(震災とは)毎日付き合っているようなもの」と話す。
2011年3月11日午後2時46分。木村さんは隣接する富岡町にある勤め先の養豚場で激しい揺れに襲われた。家族の姿が頭に浮かんだが、自宅に戻れたのはその日の夕方。津波で破壊された一帯で夜通し3人を捜したが、翌日には第1原発が水素爆発。全町に避難指示が発令され、家族の安否が不明のまま、住み慣れた町から引き離された。
放射線量が高く、今も帰還困難区域が大半の大熊町によると、12人が津波の犠牲に。父と妻の遺体は震災の年に見つかったが、汐凪さんだけが見つからなかった。木村さんは避難先の長野県白馬村から車で片道400キロ以上の距離を毎週のように通い、捜索を続けた。
木村さんが捜し出した汐凪さんの衣類や持ち物。帰還困難区域内の知人宅に預けているのは「汐凪が大好きな町から、よそに運び出す気持ちになれないから」
状況が動いたのは16年12月。自宅から数百メートル離れた海岸近くで、汐凪さんのマフラーが発見され、近くから小さな骨が見つかった。鑑定の結果、汐凪さんの顎と首の一部と判明。だが、それ以上は不明のままだ。
寂しがり屋だったという汐凪さん。木村さんは「体が見つからないのは、私への伝言だと思うんです。全てが見つかったら、もう誰も来なくなると思っているんでしょう。『私を捜して』『会いに来て』って……」。
木村さんの自宅や所有する農地は、放射性物質による汚染土などを集積する中間貯蔵施設の建設予定地に含まれる。だが「できれば公園などにして、訪れた人がここで何があったのかを感じられる場所に」と願う。
2年前、長女の進学を機に大熊町から南約50キロのいわき市に転居した。これをきっかけに今、震災を伝える活動に力を入れている。最近は自宅跡から各地を回線で結ぶリモート授業も始めた。この10年は「日々の積み重ねにすぎませんね。震災は永遠に終わらない」と語気を強めた。(仙波理)
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[震災10年 復興の先へ] 東北被災地は今…イノシシ増殖 営農再開も被害拡大に不安 帰還へ懸念材料
東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う帰還困難区域のうち、福島県内5町村(富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村)でのイノシシ捕獲頭数が2年連続で2000頭を超えたことが環境省の調べで分かった。人がいない状況のため繁殖が止まらず、営農を再開した農地で被害も発生。宅地に侵入するケースもあり、避難した住民が今後、帰還する上での支障になる恐れがある。(柘植昌行、中川桜)
福島5町村捕獲数 2年連続で2000頭超
水田と山林の境目にイノシシ向けの電気柵が走る。富岡町の稲作農家、渡邉伸さん(60)は「ここを突破することもある」と打ち明ける。地元の帰宅困難区域指定が解除された2017年以降、営農を再開。水田5ヘクタールを手掛けるが、イノシシに稲を踏み倒されることもあり、食害にも悩まされ続けている。
渡邉さんは家族と住むいわき市から通い、農作業を続ける。片道1時間かけて水田に到着し、被害が出ているのを見つけると、「本当に気落ちする」と話す。生息数も増えていると感じ「今後、水稲の収量に大きな影響を与えるのではないか」と不安だ。
日中にもかかわらず、宅地を歩き回るイノシシ――。大熊町の根本友子さん(73)は一時帰宅が可能になって以降、そんな光景を何度も見た。町農業委員会の会長として、営農再開に向けた水稲の実証栽培に関わり、イノシシの食害を目の当たりにした。
避難の長期化で、大熊町は「イノシシが増える環境が整ってしまった」(産業建設課)とみる。今後、町民に帰還を促すに当たり、イノシシの頭数減を課題に挙げる。町内には約150台のわなを設置。1台当たりの捕獲数を増やすため、最適な設置場所の把握などを進める方針だ。
環境省は福島県内5町村の帰宅困難区域で、13年度からイノシシの捕獲事業を開始。19年度の合計捕獲頭数は2136頭に上った。20年度も1月末時点で2128頭。2年連続で2000頭台で推移する。
農地だけでなく住宅の庭地を掘って荒らす被害も後を絶たない。環境省は18年度から捕獲体制を強化。わなを増設、捕獲期間も延長し、捕獲頭数の増加につながった。同省は「帰還する住民が安心して暮らせるよう引き続き捕獲を進める」(鳥獣保護管理室)と話す。
イノシシの生態に詳しく、富岡町で実態調査にも携わる東京農工大学の金子弥生准教授は「体格の大きさなどから考えると、餌を十分に取れている。今後も増える余地がある」と見込む。
金子准教授の試算では東日本のイノシシ生息密度は1平方キロ当たり5頭程度。一方、富岡町の調査地区は38頭と、8倍近い。そこで「帰還困難区域や周辺地域の生息密度を減らすことが重要」と強調。行政主導の狩猟人材の確保、フェンス設置による生活圏のすみ分けなどを指摘する。
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重点項目実践JA最多 自己改革着実に 20年度活動報告
JA全中は、JA自己改革の成果をまとめた「JAグループの活動報告書」の2020年度版を公表した。20年度は、重点6項目に取り組むJAの割合がいずれも過去最高。「営農・経済事業への経営資源のシフト」は63・2%が実践し前年比8ポイント増、「生産資材価格の引き下げと低コスト生産技術の確立・普及」は93・5%で同1・4ポイント増などの成果が出た。
活動報告書は18、19年度に続く3冊目。……
豪産牛肉の輸出相手国 日本抜き中国1位に
オーストラリアの牛肉輸出額で、中国向けが初めてトップとなったことが6日までに分かった。中国の旺盛な消費需要が背景にある。豪政府の受託を受け、銀行のルーラルバンクがまとめた年次報告書で明らかにした。日本向けは6年連続で増え、過去最高を更新した。
報告書によると、2019会計年度(19年7月1日~20年6月30日)の総牛肉輸出額は、前年度比16・6%増の140億3000万豪ドル(1豪ドル約84円)。うち中国向けは同45・8%増の34億6500万豪ドルと、初めて日本向けを上回った。
中国消費者の所得増加に伴う肉の需要増に加え、アフリカ豚熱の発生による豚肉の代替需要が高かったことが背景にある。ルーラルバンクは「需要増加は中国の豚の数量が回復するまで」とみて、次年度には伸び率が鈍化すると分析。また、中国との貿易摩擦で特定企業の輸入禁止措置がなされていることも、懸念材料だと指摘している。
日本向けの牛肉輸出額は、前年度比6・4%増の27億3900万豪ドルとなった。6年連続前年度を上回り、過去最高を更新した。ただ日米貿易協定で米国産に押され、次年度は拡大が難しいという。
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東日本大震災から10年 農業産出額 被災3県増加傾向 福島は水準戻らず
東日本大震災からの復興に向けた懸命の努力で、被災3県の農業産出額はいずれも増加傾向にある。だが、福島県だけは震災前の水準に戻っていない。岩手、宮城の両県が震災前を2割近く上回るのとは対照的だ。営農再開の遅れに加え、「風評被害」も課題となっている。
2018年の産出額は岩手が2727億円、宮城は1939億円。震災前の10年に比べると、それぞれ19%、16%増え、全国平均の11%を上回る伸び率となった。だが、福島県の18年の産出額は同9%減の2113億円。震災後に、震災前を上回った年は一度もない。
営農再開率3割
産出額が回復しない要因の一つは、東京電力福島第1原子力発電所事故で避難を強いられた12市町村の営農再開率が約3割にとどまることだ。12市町村の産出額は127億円で、こちらも震災前の約3割だった。
農水省や福島県などでつくる官民合同チームの調査では、この12市町村で営農再開の意向がないか未定の農家のうち、所有する農地を貸し出してもいいと考えている人が7割いた。同省は営農再開の加速に向け、こうした農地を集めて担い手にマッチング(結び付け)することが重要だと指摘。4月に施行する改正福島特措法で、これを後押しする。
同法は、市町村が行っている農地中間管理機構(農地集積バンク)を通じた農地集積の計画作成などを、福島県もできるようにした。市町村の職員が不足する避難解除区域での集積をさらに進めるためだ。新たな制度を通じ、同省は25年度末までに12市町村の営農再開面積を震災前の60%に当たる1万378ヘクタールにすることを目指す。
風評被害も課題
福島県では、風評被害も大きな課題のままだ。消費者庁の2月の調査によると、同県産の食品の購入をためらう消費者の割合は8・1%。過去最小となったが、今も一定に存在する。同県の主要農産物の価格が全国平均を下回る状況も続いている。全国平均に比べ、米は約3%、牛肉は11%、桃は16%下回る。
原発事故後、同県産をはじめとした日本産食品の輸入規制をする国・地域は最大で54あったが、15まで減った。19年の同県産の農産物の輸出量は過去最高を更新。だが日本の主要な輸出先の香港や中国などは、今も同県産の輸入規制を続ける。
風評被害の払拭(ふっしょく)に向け、同省はテレビCMやウェブを通じた県産農産物のPRなどを支援。20年には卸や小売業者に対し、同県産を取り扱わなかったり、買いたたいたりしないように求める通知も出した。輸入規制の撤廃は、昨年4月に設置した農林水産物・食品輸出本部が外務省などと連携し、各国への働き掛けを進めている。
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桃 初の10万トン割れ せん孔細菌病が多発 20年収穫量
2020年産の桃の収穫量が9万8900トンとなり、前年産より9000トン(8%)減ったことが農水省の調査で分かった。4年連続の減少で、同省の統計開始以降初めて10万トンを割り、過去最低となった。主産地の福島県や長野県などで、葉や果実に穴が開く「せん孔細菌病」が多発したことが要因。同省は20年度第3次補正予算に同病の防除対策を盛り込み、生産継続を支援する。
都道府県別の収穫量は、全国1位の山梨県がほぼ前年並みの3万400トン。同2位の福島県は2万2800トンで同16%減、同3位の長野県は1万300トンで14%減った。果実を収穫するために実らせた結果樹面積は全国で9290ヘクタールで、3%減った。一方、全国の10アール当たり収量は6%減の1060キロだが、福島県、長野県では、ともに12%の減少だった。
両県の収穫量の減少について、同省はせん孔細菌病の多発を要因に挙げる。対策として同省は、20年度第3次補正予算で、同病などを対象とした「重要病害虫等早期防除対策事業」に4億6300万円を計上した。福島や長野など、同病の被害が拡大している地域のJAや複数の農家でつくるグループが対象。発生状況の調査や枝葉の病斑の除去などの経費として、最大半額まで補助する。
希望者は、防除の時期や取組内容などを盛り込んだ事業計画書を地方農政局に提出する。予算の限度額に達していない場合、年度をまたいでの申請でも認められるが、同省は「まん延を早期に防止するためにも、早めに申請してほしい」(植物防疫課)と説明する。
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日本農業賞 ネットで表彰式
JA全中とNHKは6日、第49回・50回日本農業賞の表彰式をオンラインで開催した。新型コロナウイルス感染拡大により表彰式を延期していた昨年の第49回の大賞7組、特別賞3組と、第50回の大賞7組、特別賞3組へ、事前に送付していた表彰状を読み上げた。国内農業のトップランナーをたたえ、地域農業のけん引役としての一層の活躍に期待を寄せた。
全中の中家徹会長は「コロナ下で国消国産の重要性が広く認識された」と指摘。……
生協宅配の新規加入者 「収束後も利用増」の意向 生協総研が調査
生協宅配の新規加入者のうち、新型コロナウイルス収束後も利用を増やすとした回答が約3割に上ったことが、生協総合研究所の調査で分かった。コロナ下で生協宅配の新規加入を決めたタイミングは、1回目の緊急事態宣言が発令された昨年4月が最も多かった。
調査は、昨年10~11月、世帯や回答者本人が生協宅配を主に利用している全国の25~64歳の女性を対象に実施し、4881人が回答した。……

[未来人材] 23歳。シュンギク周年栽培 10アール収部会平均の2倍 夢だった専作を実現 福岡市 福田篤さん
福岡市のシュンギク農家、福田篤さん(23)は、地域で難しいとされていた周年栽培で「シュンギク一本で食べていく」という夢を実現した。約30人が所属するJA福岡市春菊部会西支部で、最年少ながら部会平均の10アール当たり収量の約2倍を達成。JAも期待する若手農家として、部会を引っ張る。
兼業農家だった祖父を手伝う中で、農業が好きになった。12歳の時に祖父が亡くなったが、会社勤めの両親は農地を継がなかった。「それなら俺が引き継ぐ」と決意。20歳でハウスを継ぎ、小松菜とシュンギクの栽培を始めた。
シュンギクは高温や病害虫に弱いため、近隣では冬場に育てて、夏場は小松菜や水菜を育てる。福田さんもそれに倣って始めたが、経験不足で収量が安定せず、1年目で「やめようと思った」という。
迷いが生じた時、シュンギク農家の浜地和久さん(70)に出会った。周年出荷で部会首位の収量を維持し、休暇も確保してシュンギク一本で稼ぐ浜地さんに、衝撃を受けた。自分もシュンギク一本でやる――。浜地さんに師事しながら誰よりも必死に勉強し、就農2年目にはシュンギクに一本化した。
夏場の収穫は「ひと手間」が大きく左右する。部会では米ぬかを土壌にまいて被覆消毒をするが、一輪車などに載せてまくことが多く、場所によってばらつく。
福田さんはいったん小分けにした米ぬか袋を5メートル間隔に置き、隅々まで均一に散布することで、夏の収穫量を安定させている。かん水の間隔も、根が効率よく吸水する浸透基準を基にする。「忙しいからと手を抜いたり、作業を後回しにしたりすると、夏場は一瞬で駄目になる」という。
周年栽培は徐々に安定し、就農当初の迷いもなくなった。20年には部会の10アール平均収量が3・5トンの中、同6トンを達成した。JA西グリーンセンターの井浦健士郎さんは「部会約50人の中で、夏場に安定出荷をする会員は1割程度だ。技術力が高い」と感嘆する。
近隣農家が諦めた周年出荷を実現したことで「親も見直しているのではないか」と福田さんは誇らしげだ。
農のひととき
福岡のシュンギクは生でサラダがお勧め。妻は市外出身で、初めて生で食べて感動した。昨年生まれた子どもも、離乳食としておいしそうに食べている。
農業は仕事とプライベートの時間を調整できる点が魅力。就農当初は休みを取れなかったが、今は週休2日を確保。家族と過ごす時間を大切にしている。仕事のやる気にもつながる。
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規制会議議論始まる 准組利用「組合員の判断」 農水省が方向性表明
政府の規制改革推進会議農林水産ワーキンググループ(WG)は5日、改正農協法施行5年後の見直しに向けた議論を始めた。農水省やJA全中などから意見を聴取。同省は今後の検討の方向性として、JA准組合員の事業利用については「組合員の判断に基づく」との考えを示した。WG側は、農家所得増大に向けたJAの自己改革の成果を詳細に示すよう求め、数値目標による進捗(しんちょく)管理の必要性も指摘した。
WG 所得増「数値目標を」
会合は非公開。同省は各分野の改革の実施状況を総括し、方向性を示した。……
次ページに農水省が示した農協改革の検討方向の表があります
全中、「不断の改革」決議
JA全中は5日、東京・大手町のJAビルで臨時総会を開き、「JAグループの『不断の自己改革』の実践に関する特別決議」を採択した。農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域の活性化という三つの基本目標の実現に向けて、自己改革を継続することを表明。持続可能なJA経営基盤の確立・強化に取り組むことも確認した。……
有機農業 50年に100万ヘクタール 新戦略中間案 環境負荷軽減へ 農水省
農水省は5日、環境負荷の軽減と農業生産力向上の両立を目指す中長期的な政策方針「みどりの食料システム戦略」の中間取りまとめ案を公表した。2050年までに①化学農薬の使用量半減②化学肥料の使用量3割減③有機農業を全農地の25%に拡大──といった意欲的な数値目標を提示。技術革新や農家・消費者らの理解などを前提とし、生産体系を大きく転換する方針を打ち出した。
次ページに新戦略のポイントの表があります