滋賀県のJAこうかは、食育や農業体験、交流イベントなど「くらしの活動」の充実を専任部署がけん引している。信用・共済や営農、直売など部門の垣根を越えた活動を増やし、希薄化が懸念されていた組合員との関係を再構築する。直売所を起点に、4年ぶりの組合員数増加も実現した。
持続可能なJA運営には、基盤となる地域の活性化や組合員の暮らしの充実が欠かせない。JA全国大会議案のくらし・地域活性化戦略では、組合員の世代やライフステージに応じた多様な協同活動と、総合事業の強みを生かした役割発揮の「好循環」を目指す。
JAは、組合員参加型のサロンや食育、農業体験の開催、地域行事への参画といった「くらしの活動」を起点に、地域とのつながりをつくってきた。しかし、JA職員の減少などに伴い、組合員との関係希薄化が課題になっており、接点の再構築に向けた対応策を検討した。
そこで昨年4月に立ち上げたのが「教育文化事業部」だ。総合事業の強みを生かして「くらしの活動」を充実させるため、部門の垣根を越えた活動展開の旗振り役となる。
同部は昨年、金融部の渉外担当が食育教本を活用する組合員訪問活動を企画。無料試読をきっかけに、食農教育に関する話題を提供する。信用、共済だけでなく、農業や食についても情報発信できる渉外に変え、組合員の幅広いニーズを拾えるようにした。
直売所や生活購買店舗など、組合員・地域住民との接点となる拠点も重要になる。JAは昨年、共済事業の子ども向けイベントを初めて直売所の特売と同日に開催。子育て世代を直売所に誘導し、相乗効果につなげた。
組合員加入促進運動の土台になったのも直売所だ。JA事業を利用すると付与される「甲賀のゆめ丸ポイント」。ポイント会員を中心に、組合員になる利点もアピールしながらJA正職員全員で訪問活動を展開した。組合員は運動期間中に約250人増え、組合員総数は4年ぶりに増加に転じた。
同部の山城昭樹部長は「組織を挙げた活動を企画できるのも(専任部署の)強み」と協調。今後、新しい組合員にJA事業への理解を促すため、JA関連施設を見学できるツアーなどを企画する。
くらし・地域活性化戦略 協同活動と総合事業を通じた組合員の願いの実現・課題解決により、組合員のくらしへの貢献、地域社会の活性化・地域コミュニティーの維持による地域社会の持続的発展に貢献する。