豚コレラ防疫 手尽くせども 疑心暗鬼 夜も眠れず 発生農家「経営再開、自力では・・・」

車両の消毒だけでなく、石灰をまいて防疫を徹底する吉野ジーピーファーム(岐阜県中津川市で)

 石灰で真っ白になった養豚施設の出入り口。岐阜県高山市と中津川市で母豚530頭を飼育し一貫経営する(有)吉野ジーピーファームでは、至る所に立ち入り禁止の看板を掲げ、車の出入り口には網を張り、豚舎の周りをフェンスで囲う。さらに養豚場の周辺は、イノシシだけでなく鳥や虫を少しでも寄せ付けないよう、きれいに草刈りをし、見渡せるように整備する。消毒槽は小まめに液を交換し、水の供給施設などにはイノシシを警戒する防犯カメラを設置する。仲間の同業者とはほとんど会わず、定期的に行っていた販売促進のイベントも自粛。春からは電気牧柵を二重に強化する予定だ。

 同社は抗生物質、合成抗菌剤を一切使用せず、JAや流通業者などとの協力でつくり上げた独自の徹底した衛生対策に早くから取り組んできた。社員は専用の農作業着や長靴を身に着け、豚舎にはシャワーを浴び、消毒してから入る。さらに資材は農場外での受け渡しを徹底し、水の滅菌装置など最新鋭の衛生設備も導入する。

 それでも同社代表の吉野毅さん(58)は「ヒューマンエラーが起きる可能性はある。どこに落とし穴があるか分からず、全てに疑心暗鬼になる。ものすごい恐怖だ」と疲れ切った表情を見せる。豚コレラが県内で発生してから5カ月。うなされて夜は眠れず、睡眠不足が続く。2農場で15人が働く同社。渡辺健次さん(63)は「常にこれで安全か自問自答している。かなりの緊張感の中で日々飼養している」と明かす。

 県養豚協会会長を務める吉野さん。県内には11のブランド豚がある。どれも地元と連携し各養豚農家が育ててきたかけがえのないブランドだ。複数のブランド豚を豚コレラが直撃した。

 6日に感染が発覚した恵那市の農場も含め、県内では飼育頭数の16%に当たる豚がこれまでに殺処分されている。ブランド豚の再建や県内全体の防疫体制確立には中長期的な時間を要する見通しだ。農家の衛生管理には温度差があることから、吉野さんは「安全な体制を確立するにはコストも人も要る。どうか生産者に寄り添った支援をしてほしい」と強調する。

 感染は5府県に拡大し、連日感染が発覚している。発生した当該農場の家族は、殺処分を手伝った関係者への感謝を口にした上で「今、とても苦しい。迷惑を掛けて申し訳ないが、これまで養豚に設備投資をしてきた。生きていくために経営を再開したい。ただ、自力では前を向けない」と息の長い支えを求める。

 豚コレラの感染拡大を受けて、愛知県は15日、田原市の養豚団地で豚の殺処分の作業を始めた。西尾市で母豚400頭を飼育する「アクティブピッグ」の山本孝徳さん(50)は「(豚を殺処分している)田原市の農家たちは、ずっと共に勉強し、励まし合ってきた仲間だ。気の毒過ぎて言葉がない。非常につらい。今、政府に求めることは、必ず再建できるよう殺処分を余儀なくされた農家に万全の補償をしてもらうことだ」と主張する。

 岐阜県養豚協会はワクチン使用に言及する。「現場の状況を踏まえてほしい。祈るような気持ちで一刻も早い判断を待っている」。日本養豚協会も自民党や農水省にワクチンの要望をしている。

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 豚コレラ報道に当たり、本紙記者は消毒をした上で特別に許可を得て取材・撮影しました。 
 
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