「震災後」生き抜く糧に―「母の味」出版 記憶次代へ 帰れぬ古里思い 千葉の伊藤政彦さん

出版した本を見ながら双葉町での暮らしを振り返る伊藤さん(千葉県印西市で)

 千葉県印西市でクッキングスタジオなどを開く伊藤政彦さん(66)は、帰還困難区域に指定されている福島県双葉町で過ごした幼少期の思い出や母の味を一冊の本にまとめ、『伊藤さん家の母の味』として出版した。東京電力福島第1原子力発電所事故のため帰ることができない古里だが、食の記憶を書き記すことによって次世代に残したいと願う。

 3~18歳の間、同町で育った伊藤さん。2011年3月の原発事故で、両親は着の身着のまま伊藤さんが暮らす千葉に避難してきた。その後、病気で父が5年前に、母が3年前に亡くなった。

 「もう二度と母の料理が食べられない。故郷にも帰れない。自分が育った双葉町は、地図から消えてしまうのではないか」。そんな絶望感が頭を巡った。

 懐かしい母の味を再現しながら料理をするうちに、古里で暮らした記憶や郷土料理、町ならではの食材が思い出された。伊藤さんは「原発事故後、避難で各地に散ってしまった双葉町民の皆さんと、自然の恵みにあふれた素晴らしい古里の記憶を共有したい」と、1年半かけて本にまとめた。季節の料理80品の紹介やレシピ、1955~65年(昭和30、40年代)当時の双葉町商店街のにぎわいや昔話、エッセーも盛り込んだ。

 伊藤さんは「食は記憶とダイレクトにつながっている。古里を失っても食を通じて、双葉町で暮らした記憶は生き続ける」と思いを話す。

 問い合わせは歴史春秋社、(電)0242(26)6567。
 

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