異業種の農業参入 地域発展へ共生探ろう

 異業種から農業に参入するケースが急速に増えている。採算重視の一時的な参入ではなく、農業の多様な担い手として、地域社会との共生を目指すべきだ。担い手の高齢化や耕作放棄地の増加など困難な課題を抱える中、地域と共に解決策を模索していく必要がある。

 農水省の調べでは、農地を利用して農業経営を行う一般法人は2017年12月末現在で3030法人。09年の農地法改正で農地リース方式による企業の参入が自由化され、改正前(08年12月末)の10倍近くに増えた。

 改正前の旧リース方式では、農村部を中心に地元の建設業者が雇用を維持するために参入することが多かった。企業を担い手と位置付け、参入エリアの制限をなくした法改正後は大手企業の農業参入が相次いだ。業種も食品関連産業を筆頭に建設、製造、不動産分野など多彩だ。

 特に大消費地に近い都市近郊に農地を借りる事例が目立つ。例えば埼玉県は法改正前の参入は4法人だったが、17年末には124法人と急増した。

 日本農業新聞は今春、農業に参入した大手企業10社にアンケートを実施し、農業参入の狙いと現状、将来展望などを聞いた。分かったことは、各企業が農業経営で採算を合わせるのは容易ではないものの、農業を成長産業と捉えていることだ。

 参入直後から経営が黒字の企業は皆無で、4社は「現在も赤字」が続く。課題として全社が「販路の確保」を挙げた他、過半数の企業が人材確保や優良農地の確保、生産コストの低減、技術管理などを指摘した。赤字が続く食品企業からは「農地が細分化され過ぎ、効率的な経営が難しい」と不満の声も上がった。気象異変など自然相手の農業は、収益が予定通りに伸びないこともあっただろう。

 一方、農業の可能性は、全社が「伸びしろがある」と回答。「輸出などの販路が多様化する」(金融業)、「世界的な食料不足で日本産への期待が高まる」(農薬メーカー)といった期待や、「新鮮な青果物を全国の店舗網で販売できる」(コンビニ)、「耕作放棄地の受け皿になる」(スーパー)と地域農業の未来を考えた意見もあった。「産業として農業には、まだ打つ手が多い」(化学メーカー)との意見が全体を代表する声と言えそうだ。

 一般企業の農業参入は、今後も増えそうだ。だが、採算が見込めない場合はすぐに撤退するというのではなく、企業側には地域農業の振興、耕作放棄地の防止という長期的な視点を持つことが求められる。

 品目や販路で競合する懸念もあるが、相互の事情を勘案しながら共生の道を探るべきだ。企業による人材調達や人工知能(AI)を駆使した省力生産体系の提案、販路の開拓など農業にビジネスチャンスを求める動きも強まるだろう。地域農業の発展に有効な提案は、積極的に受け入れたい。

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