ダム人気に続け! 農業インフラ カードで発信 栃木の取水堰や排水機場

栃木県下都賀農業振興事務所が発行した農業水利施設カード(栃木県栃木市で)

 取水堰(ぜき)や排水機場などのインフラ施設を紹介するカードが相次いで発行され、人気を集めている。管理者が農業に欠かせない水や、災害時の洪水調整機能など、生活に不可欠な施設の重要性を市民に伝えたいとの思いから発行。栃木県では、配布開始から短期間に想定以上の枚数を配る人気ぶりに、関係者は今後もカードの発行を続けたい考えだ。
 

水田への供給地、洪水調整機能をPR


 栃木県下都賀農業振興事務所が3月に初めて発行したのは、栃木市大光寺町にある美田東部頭首工と、同市西方町の小倉堰の2施設だ。

 

 同事務所が管理する農業水施設の重要性を市民にPRする手段として、人気を集めるダムカードから着想した。2施設とも農繁期には水をせき止めて田に水を引き入れる取水堰として農業には欠かせない機能をもち、受益面積はいずれも600ヘクタールを超すなど、県内最大級を誇る。

 カードは同事務所がドローン(小型無人飛行機)などで撮影した写真で作成。カードはA4判の台紙に張り付いていて、台紙には施設の説明や近くの農産物直売所などを紹介している。またカード裏面の2次元コード(QRコード)を読み取ると位置情報を入手できる。

 同事務所が土地改良区や道の駅、市役所などで3月下旬に配布したところ、「2週間余りで用意した各300枚のそれぞれ半分を配った」(同事務所)という。さらに事務所にカードの有無を尋ねる電話などもあるという。

 想定以上の反応から同事務所ではカードの増刷を検討。今年度も他の堰や排水機場のカード化を行う予定だ。

 栃木県小山市も土地改良施設のカードを発行し、2月下旬に配布を始めた。市内の土地改良区が管理する与良川第2排水機場や唐釜排水路、大沼など10カ所分を作製した。1カ所につき500枚を用意。土地改良区などで配るが、市は「既に平均50枚配っており、上々の反応だ」と手応えを感じている。

 カードの基になったのが2007年に発行が始まったダムカードだ。国土交通省と水資源機構の管理するダム685カ所(19年4月1日時点)で配布されているもので、ダムの重要性を訴えている。

 ダムカードの生みの親とされるのが、ダムなどのインフラに詳しいダムライターの萩原雅紀さん(44)。ダムカードを契機にさまざまなインフラのカードが発行される現状について「(施設)管理者が積極的に施設をPRすることを始めたことがインフラファンとしてうれしく思う」と喜ぶ。

 一方で「ダムカードの踏襲でなく、(各施設の)オリジナリティーを出してほしい。一定枚数で配布終了ではなく、細々と継続していくことで意味を持つ」と課題を挙げる。
 

全国各地で作製 食育の教材にも


 インフラカードの発行は全国に広がる。愛知県では農業用水を利用した小水力発電の取り組みが進んでおり、同県農業用水小水力等発電推進協議会は、発電施設のPRを目的とした「小水力発電カード」を2015年度に発行した。現在、15種類あるカードの管理は各施設が行い、施設の見学者に配布している。

 山形県では長井ダム水源地域ビジョン推進会議が長井市の川や滝、昔の水路などをメインに紹介する「ながい水カード」を年6回発行。ナンバー33までを同市、野川まなび館で配布しており、カードを入手しに県外から訪れる人もいる。

 九州全県では、インフラ観光や地域活性化の一助とするため、「九州インフラカード」を18年に配布。河川系や道路系、公園系施設など、6区分を6色で色分けし、計78種類(19年2月現在)を発行している。

 全国16道県74カ所(2019年3月時点)で展開する「水の恵みカード」は、県やJA、土地改良区などが発行する。53種類あり、表面で地域の農産物の由来や特徴を紹介し、裏面で地域の農業水利用施設の基本情報や事業内容を記載している。

 「水の恵みカード」の作り方や発行について助言した農水省は「各地域から、食育の教材として利用したり、子どもを通じて親の学びにつながったりしているなどの報告を受ける」(水資源課)とカードでのPRに効果を実感する。
 

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