熊本地震後の豪雨被害 山都町822件手つかず 中山間地に重機入れず 全国入札も業者敬遠

平野さんの自慢だった棚田。草木が生い茂り、見る影もない(熊本県山都町で)

 2016年の熊本地震発生の2カ月後に熊本県山都町を襲った豪雨被害で、農地の復旧が難航していることが分かった。農地と農業用施設を合わせて被害の半分以上の822件がまだ工事の契約できていない。被災農地の件数が多かった上、中山間地では道が狭く、重機を入れにくいなどを理由に業者が工事を引き受けないことが影響している。農家は「工事の見通しすら立たず、農業再開どころではない」とこぼす。(金子祥也)
 

「工事受けて」 農家訴え


 豪雨は16年6月に発生。激しい雨で水田のあぜやのり面が崩れる被害が多発した。熊本地震の揺れで地盤が緩んでいたことが、被害に拍車を掛けた。

 1時間に126・5ミリの雨が降った同町は、約1600件もの農地や農業用施設が被害を受けた。だがこのうち、19年5月までに工事が終わったのが、376件。工事中が407件。半分以上が手つかずのままだ。

 同町で水稲60アールを手掛けていた平野慶治さん(76)は、雨で山が崩れ、棚田に土砂が流入。美しい棚田の光景は自慢だった。だが今は、草木が生い茂る。背の高い草に隠れているが、足元には大きな石が散乱。石に弾かれた草刈り機の刃で危うく足を切りそうになり、やむなく放置した。

 この水田も復旧対象だが、手を上げる業者はいない。「きついよ」。待ち続ける平野さんは、短い言葉で心情を口にする。

 被災地の復興で最優先されるのはライフラインの整備だ。その後、国道、県道、町道、農道の工事をしてから、農地の工事が始まる。さらに局地的な被害の出た農地の工事は後回しにされる傾向にある。

 豪雨や地震など大規模災害の場合、一般的には複数の農地をまとめて施工する。移動に時間や手間がかかる重機を効率的に運用するためだ。だが、局地的な被害は、その運用ができない。特に中山間地は道幅が狭く、重機を入れづらいことなどから、業者が工事を受け付けないケースも多い。

 同町は復旧に向け、対策を強化する。工事業者が見つからないため、通常は町内や県内の業者を対象に発注する一般競争入札で全国の業者に対象を広げた。それでも、手を上げる業者がおらず、再入札になることが多い。水田の崩れた部分を囲うように段差を作る応急処置で稲作を続ける農家もいる。ただ、強い雨が降ればまた崩れてしまうため、農家は工事を望んでいる。

 町の担当者は「熊本地震の影に隠れているが、豪雨被災地も苦しんでいる。どうか工事を受けてほしい」と訴える。

 17年の九州北部豪雨でも、平たん地の水田は1年で大幅に復旧が進んだが、樹園地はほぼ手つかずだった。全国の農業復旧で、共通の課題となっている。工事が進まず、被災した農家の焦りが募っている。

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