地方創生基本方針 多様な主体で将来描け

 政府は、2020年度からの地方創生に向けた「まち・ひと・しごと創生基本方針」を決めた。国の方針を踏まえ、今後は各自治体が次期5年間の地方版総合戦略の策定を進める。総合戦略はいわば地域の将来計画である。多様な住民や組織が話し合いを重ねて決めることが肝心だ。JAの参画も欠かせない。

 新たな地方創生の基本方針のキーワードは「人口」から「人材」への転換だ。基本方針は、高校を核にした人材育成や多様な形で地域と関わる「関係人口」の創出、副業や兼業の推進、多世代の交流などを重点を据えた。

 ポイントは、数を増やすことが、地域づくりの目的ではないということだ。イベントの参加者を増やすことに躍起になるより、農山村に思いを寄せ、共感し、関わる一人一人を大切にしたい。数値や手段に目を奪われ、地方創生の本質を見失ってはならない。

 第1期(15~19年度)の地方創生は政府主導で進み、多くの自治体は交付金獲得を目的に総合戦略を策定した。地方自治総合研究所が18年に公表した調査によると、回答した1342市町村のうち77%がコンサルタントなど外部に策定を委託。外注先は東京都内に本社を置く企業に集中し、把握できた598市町村の外部委託料は40億円を超えた。これでは、地方創生ならぬコンサル創生だ。総合戦略は地域の将来設計を描くものなのに、“策定のための策定”になり、地域をどう創生していくかを考え、話し合う住民主体の策定には程遠かった。

 そうした反省と教訓を踏まえ、次期の総合戦略策定過程では住民主体の話し合いが問われる。この5年で若者を中心とした田園回帰の活発化や地域運営組織の台頭など、元気な地域を目指す住民主体の流れも起きている。こうした機運を高めるためにも、次期の策定を多様な住民や組織が参画する話し合いの契機としたい。

 まず行政は、多様な主体が話し合う場づくりを仕掛けるべきだ。国の基本方針を踏まえ、住民やよそ者、若者、高齢者ら多世代から知恵や意見を寄せ合い、自分たちの地域の未来を考えていく必要がある。

 住民が当事者意識を持つには、時間をかけて丁寧に話し合うことが欠かせない。国も自治体も話し合いのプロセスを軽視してはならない。現状の地方創生政策は国が時間を区切り策定を上から評価する流れになっている。政府が地方創生を本気で目指すなら、住民の内発的な動きにこそ着目すべきだ。

 次期基本方針は、小さな拠点や人材育成などJAの参画を明確に位置付けた。若者の起業への投資など、JAは地域密着の金融機関としての役割もある。実践中のJA自己改革にも沿う。次期の総合戦略策定はJAも含めた多様な主体による、丁寧で時間をかけた話し合いが出発点だ。 
 

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