「得意」生かして月数万円 小さく稼ぐ 地域も自分も幸せに

自作の「しょうゆの実スコーン」をアピールする秋田さん(東京都千代田区で)

自作の裂き織りのバックを抱える渡邉さん(8日・東京都千代田区で)

スコーン、バッグ製造、料理教室…


 自分の好きなことや特技を生かした仕事で、月数万円の稼ぎを得て地域活性化も目指す“小さな起業家”たちがネットワーク「わたしごとJAPAN」を設立した。畑を農業体験の場にしたり、地場産原料の菓子・スコーンを作って地元の農業高校に指導に行ったりする女性が集い、地域や事業の枠を超えた情報共有や発信をする。稼ぐだけでなく、自分も地域も幸せにする新しい働き方を提案していく。
 

“起業家” 団結全国に発信へ


 「わたしごとJAPAN」は、お金だけを目的にしない起業や自分らしさを求めた働き方を実践したいと考える山形、岐阜、新潟、岩手、埼玉などの女性とその応援団で発足。「私の仕事」と、地域の出来事を「私のこと」に感じるという二つの意味を込めた。

 共同代表は、山形県鶴岡市の「鶴岡ナリワイプロジェクト」代表の井東敬子さん(52)と、埼玉県杉戸町の「choinaca」代表の矢口真紀さん(43)。2人とも起業に関する女性向けの講座を開くなどして、得意なことを生かした月数万円の仕事につなげる動きを応援している。

 井東さんのナリワイプロジェクトは59人が卒業するなど、活動が反響を呼んでいる。

 秋田皆子さん(42)は山形県庄内町で「shonai scone」を立ち上げ、2016年からオリジナルのスコーンを製造、販売する。子育て中に社会から取り残された気持ちになっていたが、井東さんの影響を受けて一歩を踏み出せた。現在は県立庄内農業高校にスコーン作りの指導にも出向く。週1回の製造で10万円程度を売り上げる人気スコーンになった。秋田さんは「作ったものがお金になり、誰かに喜ばれることは幸せ」と考える。同校の叶野哲実習教諭は「大企業ではなく、小さな起業によるもの作りや地域への姿勢で農高生が学ぶことは多い」と話す。

 岩手県花巻市の渡邉紀子さん(70)は傷んだり古くなったりした布を細かく裂いて再利用する「裂き織り」のバッグを販売する。7年前、夫が亡くなり夫婦で営んでいたそば店をやめた。昨年、地元の起業講座に参加。若い人からターバンやポシェット作りをお願いされるようになるなど、参加者との交流を通じて少しずつ自信を取り戻したという。

 「夫が亡くなってからしばらくは世界が白黒に感じた。でも起業は生きる力と自立するきっかけになった。世代を超えた関わり合いも刺激になり、世界がカラフルになった」と渡邉さん。現在は、企業からパソコンケースの製作を依頼されるなど販路が広がってきた。今後はそば店だった店舗をギャラリーにして、交流の拠点にしたいという。

 この他、子育て中の女性が開く料理教室、草花のアレンジなど農業にも関連のある多様な仕事が生まれている。井東さんは「小さな起業は暮らす地域を好きになり、元気にしていく働き方で、生き方」と考える。
 

■立教大学21世紀社会デザイン研究科の萩原なつ子教授の話


 自分らしく、好きなことで仕事をして仲間とつながる。わたしごとJAPANは、日本の女性の新しい働き方プロジェクトで、時代を先取りしている考え方。小さな起業家や女性の意見を地域社会に反映することは、地方創生そのものだ。終身雇用制が崩壊する中で人生の標準モデルはない。小さな起業家やその価値感は農山村でさらに広がっていくだろう。 
 

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