[2019参院選] 都市と地方 生活格差の解消を急げ

 経済の成長に軸足を置いた安倍政権の政策は、都市と地方に生じた「格差」を置き去りにしたままだ。立ち遅れた地方の暮らしと経済をどう立て直すか。参議院選挙の大きな争点である。

 2040年までに全国で900近い市区町村が「消滅」の危機に直面するという「日本創成会議」の試算を踏まえ、自公の安倍政権は「まち・ひと・しごと創生本部」を14年9月に立ち上げ、年間1000億円を超える地方創生推進交付金などをつぎ込んできた。

 しかし、地方は人口減少・少子高齢化の直撃を受け、「創生」効果は見えにくい。逆に14年から18年までの間に東京圏への生産年齢人口の集中が進み、地方は243万人も減った。「20年に東京圏と地方の転出入を均衡させる」とした目標は断念せざるを得ない状況だ。

 株と輸出に支えられた大企業の活況が続く東京圏とは裏腹に、地方経済は力強さに欠け、ばらつきが目立つ。賃金格差も出た。東京圏とその他の地域との間には、1人当たり県民所得で95万円(15年)の格差があり、最低賃金でも、鹿児島は東京に時給200円超も及ばない。

 若い労働力は好条件を求めて東京圏に出て、地方の大多数を占める中小企業では人手不足感が高まっている。医療施設や学校数などでも都会と農山漁村の差は残ったままだ。

 都市と地方の間に横たわる格差の原因の一つに地域産業の不振が指摘される。とりわけ農業は、官邸主導の貿易自由化と規模拡大への誘導策で集落崩壊と農業人口の減少が加速し、深刻な担い手不足に陥っている。中山間地帯では、せっかく農地をまとめた集落営農組織でさえ維持が困難な状況が続く。本紙アンケートでも、安倍政権の農業政策を評価しない人の中で、地方創生への不評が多かった。期待外れということだろう。

 地方振興に詳しい福島大学の石井秀樹准教授は「都市からの投資や交流人口の確保も重要だが、一過的・消費的な取り組みではなく、地方に暮らす人々と地域資源の豊かさを生かし、維持・増大する取り組みでなければ、地方は疲弊するばかりだ」と指摘。画一化したミニ都市をつくるのでなく、地方の特徴を積極的に引き出す地方創生を促す。

 地方がなければ都市も成り立たない。生態系の維持や国土の保全機能を踏まえた地に足の着いた地方振興を急ぐ必要がある。それは、都市のためでもある。なのに日本記者クラブでの党首討論会では、年金や防衛、消費税増税に議論が集中し、人口減少下での地方振興は触れられずじまいだった。

 農山漁村は国土を支える礎である。そこで生活する人々の生活基盤が弱体化したままでは、安定した国土とは言えない。地方振興に真剣に取り組む政党はどこか。見極める「眼力」が問われる。 
 

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