[2019参院選] 自由化と国産相場 中長期的な検証が必要

 環太平洋連携協定(TPP)発効後、初の国政選挙となるが、かつてない農畜産物自由化を巡る論戦が深まっていない。

懸念された食肉の輸入急増や国産相場への影響はどうなのか。関税は徐々に下がる。中長期的な視野で検証することが必要で、各党は農家の不安に向き合った対応策を示すべきだ。

 TPPは、民主党政権が交渉参加の検討に言及した9年前から、大きな農政問題として農家の反発を招いてきた。前回の参院選は、TPP大筋合意の半年後だったが、国会での承認や発効時期が不透明だったこともあり、論戦は盛り上がらなかった。東日本大震災で冷え込んだ食肉相場が低迷から脱出し、和牛を中心に高値相場だったことも危機意識を持った議論にならなかった要因だ。

 TPP発効後、影響が最も注視されるのが食肉。昨年12月から今年5月までの半年間で、牛肉は前年同期より4%増えたが、3年前から続く牛肉輸入急増のペースと比べると、半分の水準だった。とはいえ、牛肉の輸入急増時に発動するセーフガード(緊急輸入制限措置)は米国を含む水準のままで、事実上機能しない状態だ。輸入拡大時の対策として、参加国との基準数量見直しの協議も宙に浮いたままで、将来の大きな不安要因となっている。

 豚肉も、TPP加盟国のカナダは増加したものの、全体ではほぼ前年並みだった。2月に経済連携協定(EPA)が発効した欧州連合(EU)からの輸入数量は、予想とは逆に減少に転じたほどだ。

 TPPの脅威が去ったわけではない。牛肉は段階的に関税が下がるため、影響は急激に出ない。豚肉も5年間は従量税が据え置かれるため大きな変化はないが、1キロ70円にまで低下する5年後には、低価格の輸入豚肉が一挙に流れ込む不安は消えない。

 その不安の兆候が、早くも出始めている。125円の従量税を払ってでも、豚肉を輸入する動きで、毎月、少しずつ増え、カナダ、メキシコ、オランダなど6カ国から5月までに累計1700トンが輸入された。輸入価格は平均274円で、従量税を加えて1キロ400円の豚肉が国内に出回り始めた。5年後には340円にまで低下する計算で、不安は高まる。

 TPPでは、オーストラリア向けに売買同時契約(SBS)による米の輸入枠も設けられた。国産米の需給に影響が出ているわけではないが、主食用米の需要量は毎年10万トン程度減っている。18年産は4年連続で相場が上がり堅調に推移しているが、国が目標配分をやめた生産調整2年目を迎える19年産の価格がどうなるかは不透明だ。「参院選後に米価は下がる」というジンクスは、前回の参院選時の16年産では幸いにも外れたが、不安定要因となっている。

 TPPも米も腰を据えた議論が不可欠だ。
 

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