豚コレラ拡大 農家の安心 早期確保を

 豚コレラの拡大に危機感が高まっている。初発から10カ月となるが、発生農場では経営再開のめども立たず、不安だけが膨らむ。政府は対策に窮迫する養豚農家や業界の声に耳を傾け、地域限定の豚ワクチンの使用など、早期に安心を確保する施策を進めるべきだ。

 10日時点で発生は31例。殺処分は関連農場を含め、65農場で12万頭に上る。各農場の経営や従業員に加え、関係企業への影響は事態の長期化で深刻さを増している。

 喫緊の課題は、ウイルスの存在範囲が広がっていることだ。養豚場では直近の1カ月だけでも、これまでに発生がなかった

愛知県西尾市や長久手市、岐阜県七宗町の3市町で発生が相次いだ。長久手市は養豚場から半径3キロ圏内に、県が長年改良を続けてきた系統豚の種豚を維持している県試験場の農場がある。岐阜県では畜産研究所の種豚が感染し、殺処分になっているため、最警戒が続く。種豚は再建に欠かせない。何としても守る必要がある。

 長久手市の関連農場として、殺処分になった瀬戸市の農場は、農水省が豚舎の防疫対策と経営の早期再開に対応した、早期出荷対象だった。だが、同市の農場は早期出荷を始める前に殺処分となってしまった。

 ウイルス陽性の野生イノシシは三重、福井、長野の3県でも見つかる事態となってきた。同省は経口ワクチンの設置を支援する範囲を岐阜、愛知以外にも拡大。一部で設置が始まった三重の他、富山、石川、福井、長野、静岡、滋賀で調整が進む。

 「切り札」としての養豚場へのワクチンについては6月上旬、農水省が条件について整理している。殺処分と埋却による封じ込めが追い付かないほど同時多発した場合、または、広範囲に感染経路が全く分からない発生が起こった場合とした。

 条件には「野生イノシシ対策が不十分で、飼養豚での発生が続く場合」もある。ただし、岐阜、愛知については、イノシシの経口ワクチンの有効性評価が出る来年3月まで待つ必要があるというのが、一つの見解だ。現状、飼養豚へのワクチンは使う状況にないとする。

 同省は飼養豚へのワクチンを使うと国際獣疫事務局(OIE)の清浄国ではなくなり、輸出入への影響が大きいことなどを使わない理由に挙げる。ただ、豚コレラ清浄国認定について日本は現在、「一時停止中」という状況だ。発生から2年が過ぎても養豚場での発生が止まらなければ、清浄国ではなくなる。

 最も望ましいのは豚コレラの発生が止まることだ。だが拡大が続く現状では、残念ながら明るい見通しを立てられない。国には、消費者への国産の安定供給のためにも養豚農家と業界を守る責務がある。今、最善の対策は何か。拡大が止まらない事態を前に、改めて示すことが求められる。

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