通商交渉 対米協議 大きな脅威に

 参院選の焦点の一つは、日米貿易協定交渉の行方だ。自由化拡大は国内生産基盤に打撃を与える。再生産を確保した持続可能な国内農業へ、食料安全保障の根幹を守る交渉姿勢を堅持すべきだ。

 「アベノミクス」の3本目の矢、成長戦略の両輪は規制緩和と貿易自由化だ。実際、「安倍農政」6年半でかつてない市場開放が行われた。環太平洋連携協定(TPP)をはじめとした大型の自由貿易協定(FTA)をてこに、ここまでの貿易自由化を進めた政権はない。

 日米貿易交渉は、決着次第で国内農業にとって大きな脅威となる。安倍政権は「TPP以上」の譲歩は認めない方針だが、トランプ政権の強硬姿勢の前に先行きは不透明だ。例えば日米交渉では、日欧経済連携協定(EPA)でのソフトチーズなど、TPPよりも自由化水準が高い品目も議論の対象になってきている。毅然(きぜん)とした交渉を貫かないと、“TPP超え”になりかねない。日本農業新聞のインタビューで川村和夫Jミルク会長(明治HD社長)は、乳製品では「チーズが最も脅威だ」とも指摘する。

 日本農業を維持・発展する一番の手法は、食料主権を取り戻して輸入物に奪われた野菜など業務用需要を国産に置き換えることだ。それが食料自給率の引き上げにもつながる。農畜産物の自由化路線を続けて、持続可能な国内農業、食料安保を確立できるのか。立ち止まって再考することが必要だ。

 安倍晋三首相は、生産農業所得の増大などを挙げ、農政改革の成果と繰り返す。だが、これでは問題の本質を見失いかねず、「木を見て森を見ない」との批判も多い。所得増大の背景には、生産基盤の弱体化による供給力低下と、それに伴う価格上昇がある。基盤の実態を直視し、年次計画に基づき着実に回復していく施策こそ急ぐべきだ。現場視点の農業再生計画こそが問われる。

 本紙農政モニター意識調査で、「安倍農政」に否定的な理由の筆頭は「TPPなど貿易自由化」が5割を超え、最も多い。さらに、「農協改革」「米の生産調整見直し」と続く。政府・与党は、TPP等関連政策大綱に基づく国内対策を進めるが、生産現場の不安は消えていない。「安倍農政」は強い・攻め・輸出の“3点セット”ばかり強調するが、別の道はないのか。5年に1度の食料・農業・農村基本計画見直し時期だけに、「安倍農政」の検証と、国連の持続可能な開発目標「SDGs」にも沿った農業路線の議論を深めてはどうか。そこには家族農業、中山間地もしっかり位置付け直さねばならない。

 農業者の大半を占める家族農業をどう位置付けるのか。地域政策にとどまらず、産業政策の面からも家族農業を中軸に据えることが重要だ。輸入農産物が増える中で、経営安定対策の拡充も急ぐべきだ。

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