選挙戦争点に地域問題 格差是正の視点 注目 明治大学農学部教授 小田切徳美

小田切徳美氏

 参院選の真っ最中である。今回の選挙は12年前の2007年と比較されることが多い。同じ安倍政権であり、また統一地方選挙と参院選が重なる「亥(い)年選挙」でもあることも話題になっている。

 だが、言うまでもなく、争点は異なり、特に、地域格差を巡る状況は大きく違う。12年前は、小泉構造改革による大都市と地方の格差が話題となり、その象徴として、いわゆる限界集落問題が盛んに議論されていた。

 それはマスコミの報道にも反映している。例えば、日本経済新聞のデータベース(朝・夕刊+地方経済面)で、「地域格差」を検索すれば、07年前半(1~6月)には、合計242回登場するのに対して、直近の19年同期には、わずか34回にすぎない。地方創生は議論されても、地域格差問題自体は社会の話題や人々の意識から後退している。
 

隔絶した経済圏


 本当に地域間格差に問題はないのだろうか。また、急進するグローバル化とどのような関係にあるのだろうか。興味深いのは、経済のグローバリゼーションの当事者がその点の問題提起をしている点である。著名な経営者・コンサルタントである冨山和彦氏は、国内ではグローバル経済圏とローカル経済圏が分断され、かつてのように前者の大企業が潤えば、後者に位置する下請け企業に富が流れるトリクルダウンは容易に起こらないとしている。二つの経済圏が、国内に隔絶して併存するのがこの時代の特徴であるという。

 こうした構造は、逆にグローバリゼーションを批判する論者により、早くから指摘されている。つまり、ローカル経済圏と重なる地方部とグローバル経済圏の格差とその固定化は、異なる立場の論者間でも共有化されている。
 

二兎追う政策を


 このような状況で、地域格差の是正は、選挙戦の争点となるべきだろう。地方圏でトリクルダウンに頼らず新しい地域や産業をどのように構築していくのか。そこに農業や食品産業をどう位置付けるのか。読者の関心事でもあろう。そして、それを補助金・交付金や地方交付税等の財政により実現するのか。あるいは、人材育成をはじめとする地域の内発的な発展をより促すのかという選択肢がある。

 現在、政府が取り組む地方創生は、この選択肢の後者を担うが、そこには格差是正の視点はほとんど見られない。そのため、格差が固定化された地方圏での取り組みの苦戦は続く。他方で、財政により格差を埋めるにしても、地域の内発的発展力を引き出すことがなければ持続可能性はない。

 筆者は、以前より「財政的格差是正と内発的発展の二兎(にと)を追う」と表現しているが、それが、まさに今求められている。争点は、この両者をどのように両立的に運営するかにある。候補者や政党の公約は、この「二兎を追う格差是正」という視点からどのように位置付くのだろうか。残る1週間を見守りたい。

 おだぎり・とくみ 1959年神奈川県生まれ。農学博士。東京大学農学部助教授などを経て2006年より現職。専門は農政学、農村政策論。日本学術会議会員、日本地域政策学会会長。『農山村からの地方創生』(共著)など著書多数。

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