選挙後の政権運営 地方の多様な声 反映を

 安倍政権の政策運営を問うた参院選で、与党は改選過半数を確保した。だが、注目すべきは地方の根強い不満だ。「安倍農政」への不信と言ってもいい。今後、日米貿易協定交渉も重大局面を迎える。農業者の多様な声に謙虚に耳を傾け、慎重な農政運営に徹すべきだ。

 強調したいのは、今回の与党勝利が安倍政権への「白紙委任」ではないという点だ。投票率が5割に届かず戦後2番目に低い。これで果たして民意を反映した結果と言えるのか。

 地方で官邸主導の「安倍農政」への不満はくすぶり続ける。日本農業新聞が行った参院選の出口調査でも裏付けられた。自民党に投票した割合は選挙区、比例区とも40%台後半だが、「安倍内閣を支持するか」との問いには6割が「支持しない」と答えた。実際の投票行動は自民党に入れたものの、現行政権を支持していない割合が多い。逆に言えば、野党が政権批判の受け皿になり切れていない実態も浮き彫りとなった。

 立憲民主党をはじめ主要野党は、戸別所得補償制度復活を柱に家族経営など多様な農業の展開を主張した。ただ、財源はどう確保し、ばらまき施策との批判にどう応じるのか。「安倍農政」との対抗軸を具体的政策として深化させるべきだ。

 選挙結果を、焦点となった「63」「11」「85」という三つの数字との関連で見たい。

 「63」は自公政権の改選過半数ライン。結果は自民57、公明14の合計71で、与党が掲げた過半数を超えた。その意味では、一定の政権信任とも言えよう。「11」は全国32にある「一人区」の野党系議席の勝敗ライン。前回3年前は自民党の21勝11敗だった。結果は前回とほぼ同じ自民の22勝10敗に。野党共闘がある程度機能を発揮したと言えよう。東北、信越は自民党が2勝6敗と大きく負け越した。農業地帯であり米主産地でもある。東日本大震災など被災地も多い。地方、農村の「安倍農政」への不満が底流にある。三つ目の「85」は改憲勢力「3分の2」で、それには届かなかった。

 選挙後の政権運営はいくつもの難局が待つ。秋には日米交渉が重大局面を迎える。9月下旬の国連総会を前後して日米首脳会談も想定される。さらに、規制改革推進会議の今後の在り方、出来秋の米需給問題、食料・農業・農村基本計画の見直し本格論議など農政課題はめじろ押しだ。自民党で全国農業者農政運動組織連盟推薦の山田俊男氏(比例代表)は22万票近くを集め当選した。選挙期間中、農業者の声を反映した規制改革論議やJA准組合員への事業利用規制導入反対を強く訴えてきた。農業者を代弁した声を、今後の政策に反映させるべきだ。

 数の力で押し切るのではなく謙虚さを持ち、どれだけ多くの農業者の納得と共感を得るのか。選挙結果はそのことを問うているはずだ。

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