新天地で夢の酪農 第三者継承 北海道・帯広市→枝幸町 廣山辰徳さん、智尋さん夫妻

激励に訪れたJA帯広かわにしの有塚組合長(中)に、新牧場を紹介する廣山さん夫妻(北海道枝幸町で)

牛、草地、設備従業員まで…


 北海道のJA帯広かわにし管内で酪農を営んでいた廣山辰徳さん(31)と智尋さん(28)夫妻は7月1日から、300キロ離れたJA宗谷南管内で新たに酪農経営をスタートさせた。牛舎の更新に伴い飼養頭数を増やしても、遊休地がほとんどない上、土地代が高く飼養規模に見合った草地を確保できなかったのが理由だ。両JAが連携して、第三者継承による新天地での規模拡大が実現した。酪農家の離農に歯止めがかからない中、新たな規模拡大の形式を両JAが応援する。(川崎勇)
 

遠隔2JA連携規模拡大を実現


 辰徳さんの実家で乳牛55頭を飼っていた廣山さん夫妻は、祖父の代から使っていたつなぎ牛舎が老朽化したことから更新を計画。しかし近年、資材費や建設費が高騰しており、更新と同時に頭数を増やして収益性を高める必要があった。

 廣山さんは牧草などの自給飼料を主体に長命連産の経営を目指しており、頭数増に見合う農地の確保を検討した。だが、全国屈指の畑作地帯であるJA帯広かわにし管内では、農地を確保できる見込みが立たなかった上、市街地に近く土地代が高いため、農地を購入すると多額の費用がかかる現実を目の当たりにした。

 そうした中、JAを通じ、同市から北に300キロ以上離れたJA宗谷南管内の枝幸町にある大規模法人が離農する話を聞いた。帯広市で規模拡大に挑戦することと、枝幸町で牧場を購入し新たに経営を始めることを、費用面などを比較し検討。2017年に智尋さんが現地を視察するなどして決めた。実家での就農前には、道内や海外の牧場で修業を重ねた辰徳さんは「飼い方も頭数も人も全て変わるが、何とかなると思った」と振り返る。「理想を実現できる環境へ導いてもらい、受け入れてもらえてありがたい」と感謝する。今、実家では辰徳さんの父が飼料生産に励んでいる。

 18年12月から研修を兼ねて新牧場へ移り、半年ほどで引き継いだ。新牧場の「枝幸ヒロヤマファーム」では規模を拡大し、フリーストール牛舎で乳牛約250頭(経産牛150頭)を飼い、従業員を3人雇用する。年間乳量は1300トンで、草地は120ヘクタール。牛も草地も設備も従業員も、全てそのまま引き継いだ。廣山さん夫妻は「まずは経営基盤を安定させ、将来はJA管内でトップの乳量を目指す」と目標への足並みをそろえる。

 JA北海道中央会によると、別の地域のJA同士が連携して、就農を取り次ぐケースは珍しいという。

 JA帯広かわにしの有塚利宣組合長は、8日に廣山さん夫妻の新牧場を訪問。「同じ悩みを持つ人は他にもいる。北海道は一つとの考えで、理想を追い求めてほしい」と激励した。

 廣山さん夫妻は、枝幸町の就農制度を活用する。同町では新規就農に限らず、酪農経営を始める人を幅広く受け入れている。JA宗谷南の向井地信之組合長は「経営者が別の地域に移動して営農するケースは、今後も出てくるだろう。行政と連携し、就農後のサポートも充実させていく」と歓迎する。 



 

おすすめ記事

地域の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは