共有経済の新視点 農の未来構築に不可欠

 人口減少が加速する中、持続可能な農業・農村の構築は国家の責務である。秋以降、検討が始まる食料・農業・農村新基本計画で最重要のテーマになる。農の未来像を描く際、共有経済(シェアリングエコノミー)の視点を取り入れるべきだ。

 この考え方は、モノやサービスを個人所有・利用にとどめず、必要な時に必要な人が利用し合うのを仲介して、経済的価値を生み出すという概念だ。インターネットの発達を背景に誕生し、米国のシリコンバレーを起点に世界各地で広まる。

 自動車や部屋のシェアリング(共有)はよく知られるが、他にも家事代行、民泊、洋服やアクセサリーのレンタル、投資分野ではクラウドファンディングという資金集め、さらには体験農園や農泊もこの部類に入る。広い意味でモノ、サービス、カネにおける相互扶助と考えられる。この分野の世界の市場規模は、2013年の約150億ドル(1ドル108円)から25年には約3350億ドルに拡大するという英国企業の試算もある。

 政府の政策検討にもこの視点が入り始めている。国土交通省の「ライフスタイルの多様化等に関する懇談会」(座長・小田切徳美明治大学教授)は、近年注目される「関係人口」を本格的に分析する切り口の一つに設定した。関係人口とは田園回帰を含めて、さまざまな形で地域と関わる人々の総体を指す。その背後にはライフスタイルや価値観の変化があるが、その今日的な潮流としてシェアリングを重視する。人口減少への対応策を検討した総務省の「自治体戦略2040構想研究会」報告にも、この概念が登場する。

 考えてみれば、農業分野はシェアリングエコノミーと親和性が高い。人手不足を背景に各地に広がる援農や労働力の融通は、人のシェアリングとみることができる。生産面でも集落営農や古くからある農機の共同利用、農地・水保全活動もその仲間に入るだろう。

 人口減少と東京への一極集中に歯止めがかからない中、既に空き家、未登録土地の増加といった所有者不在の問題が地方の経済社会を揺さぶっている。中山間地域ほど深刻だ。持続可能な地域農業の未来像を、自己完結型の農業者層の育成だけで描ける地域は多くあるまい。

 シェアリングエコノミーの視点を農業・農村政策にも取り入れるべきだ。「効率的安定的経営体」の育成も重要だが、食料・農業・農村基本法が目指す「農業の持続的発展」には重層的な構造が必要だ。スマート農業一つを見ても、高額の機器を経営に過度の負荷がかからない形で現場に普及していくのにシェアリングは有効だ。

 田園回帰や関係人口の拡大、また若い世代の農業参入により、農業・農村に対する価値観は一層多様化していくだろう。企業的経営者の育成と農産物輸出だけが持続可能な農業・農村を導く選択肢ではあるまい。 
 

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