「なつぞら」 北の酪農ヒストリー 第18回「搾乳技術の変遷」~手搾りからロボットへ

NHK連続テレビ小説「なつぞら」場面写真 (C)NHK

 専用の機械のない時代、酪農経営において大切な作業である搾乳は手搾りでした。「なつぞら」に登場する柴田牧場は、当初から手搾りです。

 乳牛の2つの乳頭の根元に両手の親指を当てて、向こう側の人差し指、中指、薬指、小指を順次握り込んで、左右交互に根元から牛乳を搾り出すのが手搾りの実際です。これを立ったりしゃがんだりしながら頭数分行うわけですから、大変な作業であることが想像できます。

 やがて飼養頭数が増えてきた経営では手搾りでは間に合わなくなり、搾乳機械(ミルカー)が導入されます。最初は、搾った牛乳を持ち運ぶ方式のバケットミルカーでした。輸入品でしたが、なつが上京2年目の1957(昭和32)年には国産の搾乳機が開発されます。

 さらに多頭化が進むと、牛舎にガラス管を設置して自動で送乳するパイプラインミルカーが登場します。経産牛30頭以上に多頭化した経営では1970年以降、補助事業などの支援もあり全国に拡大し定着しました。

 1963(昭和38)年をピークに、酪農家戸数は減少をたどる一方で飼養規模の拡大はさらに進みました。100頭を超えてくると乳牛管理の考え方が個体から群管理に変化し、これに伴い搾乳方法も変化します。

 
0809写真3
ロータリー式ミルキングパーラーによる搾乳風景(北海道)
 牛舎は乳牛が自由に歩き回ることができるフリーストール施設となり、搾乳も牛が自ら搾乳場に移動するミルキングパーラー方式になります。一度に搾乳できる頭数は、小規模なものから大型のロータリー式のものまで、その形式により様々ですが、効率が大きく向上しました。  

 個体管理を重視する従来からのつなぎ牛舎でも技術革新が進みます。牛舎内に敷設されたレールを搾乳ユニットが自動で移動するキャリロボと呼ばれるシステムが開発され、懸案であった作業者の肉体的負担を大きく軽減しています。

 技術革新はとどまることを知らず、平成時代前半にはついに、重労働である搾乳作業を自動化した搾乳ロボットが開発されます。その後改良を積み重ねて完成度を高め、今日全国でおよそ700台もの搾乳ロボットが導入されています。これらのロボットも、やがてAI技術などとも融合し、さらに高度なシステムに発展することになるでしょう。

 このように搾乳機器は進化を重ね作業は軽減されましたが、一方で搾乳ロボットの価格は1台2500~3000万円と高価であり、機械コストは著しく上がっています。特に若い人が新規で酪農に就農する場合に、膨大となる初期費用への対応は現実的ではありません。新規就農においては、パイプラインなど、従来システムも上手に活用してゆくことが必要です。      
(東北森永乳業常務取締役・百木薫)
 
★農業高校生 応援プロジェクト『なつぞら』特設ページはこちら★

おすすめ記事

検索

e農サーチ e農サーチとは