高齢ドライバー 事故防止へ技術開発を

 高齢ドライバーによる事故が社会問題となっている。公共交通機関が限られる農村部では、免許を返納すると、普段の暮らしにもさまざまな支障が生じる。自動車の予防安全装置の普及、自動運転装置の開発加速などを含めて、高齢者が地方に住み続けられる条件を整えることが政府の責務だ。

 交通事故全体に占める高齢ドライバーの割合が増えている。警察庁によると、65歳以上の割合は2018年で18%。5年前より約3ポイント上昇している。75歳以上の死亡事故件数は18年で、前年より42件多い460件だった。

 高齢ドライバーは加齢で股関節が硬くなり、がに股になっている。特に駐車場では、バックで駐車スペースに進むため後ろを向いたり、料金精算のため機械に手を伸ばしたりするなど、上半身を右側にひねると、右足がブレーキからアクセルへとずれる恐れが高まる。ブレーキのつもりが、アクセルを踏み込んで事故につながる。

 加齢で脳の機能も低下。視野が狭くなり、周辺の状況変化に気付かないこともあるという。カーブでセンターラインをはみ出す、信号や標識を見落とすといった危険な事態も現れる。

 このような特性を踏まえて、くらし面では身体機能の低下を認識することの重要性を訴えてきた。とはいえ、高齢化は今後さらに加速し、認知症患者も増加が見込まれる。認知症の人は18年に500万人を超え、65歳以上の7人に1人に当たる。対策を急ぐ必要がある。

 世論は「運転免許返納」「ハンドルを握らせない」ことに傾いている。だが、農村部は都市部より高齢者の割合が高く、公共交通機関も少ない。免許を返納すると、通院や買い物などが困難になる。高齢ドライバーによる事故対策は、そこで暮らしていける条件を整えることとセットで進めないと、過疎化を加速させることになる。

 政府は6月、成長戦略を閣議決定した。昨今の交通事故を踏まえた安全・安心な道路交通の実現を、今後の取り組みに掲げた。具体的な手法の一つとして、自動走行技術の進展を目指すことも盛り込んだ。自動運転は、地方や農村こそ運用適性が高いのではないか。福岡県みやま市では、中山間地を自動運転の電動カートが特産のミカンをJAの選果場まで運ぶ実験が行われた。

 第2次安倍内閣発足後、安倍晋三首相は「景気回復を全国津々浦々で実感できるようにする」と、地方創生を強調してきた。だが、少子高齢化、人口減は地方を直撃し、地方から都市部に人口が流入する動きに歯止めがかかっていない。東京一極集中が続く。

 地方創生は安倍政権の約束であり、高齢ドライバーの事故対策はその大前提となるものだ。自動運転装置の開発加速へアクセルを踏み、事故のない社会実現に全力で取り組むべきだ。

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは