ストップ死亡事故 家族と地域の未来守れ

 農作業中の悲劇が後を絶たない。熱中症で亡くなる高齢者、草刈り中に命を落とした青年。酷暑や暴風雨で危険度はさらに増す。1人の死の背後には、無数の悲しみがある。負の連鎖を断ち切るには事故を検証し、原因を取り除くしかない。あなたの命を守ることは、家族と地域の未来を守ることだ。

 先月、JA秋田県青協の元委員長が、草刈り中の事故で亡くなった。左胸から血を流して倒れているのを仲間が見つけ、病院に搬送したが帰らぬ人となった。まだ42歳。人望の厚い地域のリーダーだったと聞く。

 農水省が、2017年の農作業死亡事故(304人)を「人」に着目し分析した。事故死の8割は65歳以上の高齢者が占めるが、経営を担う若手・中堅農業者の死傷も見逃せない。トラクターで圃場(ほじょう)に向かう途中に転落し、下敷きになって死亡した26歳の男性。ロータリーで耕うん作業中に用水路に転落し重症を負った36歳の男性ら。

 死亡者の4割は経営所得安定対策に加入していた。20ヘクタールの米麦を栽培する認定農業者をはじめ、大半は経営の主力であり、地域農業の担い手だったことが分かる。

 地域の生き字引である高齢者、農業をけん引する若者。有為な人材の死傷を減らし、農業が最も危険な職業という不名誉な冠を返上しなければならない。そのためには一人一人の死に向き合い、苦い教訓をくみ取るしかない。

 農水省が、原因の7割を占める農業機械作業中の事故死211人の状況を追跡すると、意外な事実が分かった。作業中は6割で、残る4割は圃場への移動中や準備中の事故だった。この事実から、自宅での乗り降り、点検や収納作業、積み込み・積み下ろし、移動経路、圃場出入り口などの危険ポイントを洗い出すことができる。

 事故予防は、作業環境や動作手順に潜む危険を抜き出し、共有化し、取り除くことに尽きる。こうしたリスク評価・管理の徹底には、農業生産工程管理(GAP)の手法が極めて有効だ。命を守るため、「GAPで農作業安全」を自らの経営に落とし込んでほしい。

 個人の取り組みに加え、農機の安全性向上、除草ロボットなどスマート農業の活用、事故情報の一元化、基盤整備による作業環境の改善も必須だ。特に、草刈りの労力軽減と安全性向上のための排水路の暗きょ化、農道の拡幅、田んぼののり面を緩やかにすることなどの有効性は実証済みだ。

 農水省は、農作業事故死を23年までに15%減らす(18年比)ことを政策目標に掲げる。9月からは、秋の農作業安全確認運動が始まる。引き続き「ワンチェック、ワンアクション」を合言葉に、「気をつけよう」から「具体的な行動」を呼び掛ける。GAP促進と合わせ、農機の整備や点検に力を入れる。

 安全に勝る農業経営はない。

 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは